東証の適時開示情報を基に経営権の異動を伴うM&A案件(グループ内再編を除く)について、ストライク(M&A Online)が集計したところ、IT・ソフトウエア業界の2021年2月のM&A発表件数は15件で、2月としては2012年以降の10年間では、2020年(20件)に次ぐ2番目となった。

一方、取引金額は約77億円で、2月としては2012年以降の10年間では4番目にとどまった。 IT・ソフトウエア業界の事業強化の動きを背景に件数は伸びたものの100億円を超える大型の案件がなかったため、金額が膨らまなかった。

  • IT・ソフトウエア業界 M&Aの推移(2月)

金額トップはビーイング44億9300万円

取引金額のトップは土木工事積算システムのビーイングが、MBO(経営陣による買収)で株式を非公開化すると発表した案件。同社会長の津田能成氏が代表取締役を務めるトゥルース(津市)がTOB(株式公開買い付け)を実施し、全株式を取得する。買付代金は約44億9300万円。

土木積算分野依存から脱却し事業多角化を進めるうえで、非公開化による機動的な意思決定が行える経営体制が望ましいと判断した。

取引金額2番目は金融向けシステム開発のCAICAが、持ち分法適用関連会社で暗号資産交換所事業を手がけるZaif Holdings(大阪府岸和田市)を、第三者割当増資引き受けと株式取得を通じて子会社化することを決めた案件。取得価格は約18億5700万円。

デジタル化を加速し、大きく変革する価値観や思想に合致した企業を実現するためには子会社化が不可欠と判断した。

取引金額の3番目は経路検索サービス運営の駅探が、広告配信関連のシステム開発などを手がけるマーベリック(東京都新宿区)からスマートフォン向け広告事業を取得することを決めた案件。マーベリックが同事業を分社して設立予定の新会社サークア(東京都千代田区)の全株式を取得する。取得価格は8億2500万円。

駅探は主力事業である経路検索サービスに加え、経路検索サービスで蓄積されたデータを活用したマーケティングや広告などの新しい事業の拡大に取り組んでおり、今回のM&Aもこの一環。

このほか2月は10億円未満の案件が2件、非公表の案件が10件あった。