帰宅までの6時間のうち2時間を充電に費やす…EVと暮らしてわかった現実|木下隆之の初耳・地獄耳|

突然の呼び出し。走行パターンを計画せよ

先日来、EVの生活を送っている。数台のEVを取っ替え引っ替え乗り継いで過ごしているから、それぞれの特徴を比較できて楽しい。EVビギナーゆえ、学びの日々である。もちろん慣れぬEV生活だからドジなことも度々、電欠寸前で顔が青ざめたことも少なくない。頭の中はほとんど電気の心配事で埋め尽くされている。

先日、搭載するバッテリーの総電力量95kWhのEVで富士スピードウエイにいた。するとそこにレース関係者から電話があり、群馬まで顔を出せという。神奈川の自宅を出るときには満充電だったけれど、富士スピードウエイに着いた時点で走行可能距離は260km。約60%の電気を消費していたのだ。

「さあ、どうする?」

早速グーグルマップで詳細なルート詮索を開始。まるでラリーのレッキのような緻密さで、走行パターンを計画したのである。

まず欠かせないのは目的地までの距離と、目的地から帰宅するまでの距離である。それからおよそ必要な電力量が導き出せる。

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充電速度を考慮せよ!
さらに充電スポットの検索である。無給電では到底走破できないわけで、だとすると、どこで給電するのが最適なのかを計画しなければならない。さらに厄介なのは、給電速度が充電スポットによってまちまちなことだ。高速道路のSAに設定されているものはほとんどが50kWの能力があるから効率的だ。だが、コンピニに設置されているような充電スポットは25kWだから、充電速度が遅い。錆びた蛇口からチョロチョロと電気を流しているようなものなのだ。

ともあれ、どちらも30分で給電を中断し、並んでいる人に譲らなければならない。つまり、その30分で効率的に電力を溜めなければならないわけだ。となれば迷わず高性能充電器のあるSAなのだが、ちょっと待てよ、日産ディーラーの充電器を拝借する方法もある。というのは、ディーラーの充電器は高性能で、場所によっては90kWが設置されている場合もあるし…。というように、まずは充電スポットをどこにするかに頭を悩ませるわけだ。

といっても、そんな都合よくことが運ぶわけもない。充電スポットはたいがい1台か2台分であり、よしんば先客がおり、その先客の充電が始まったばかりだとすると、運が悪ければ30分待たされることもある。それは致命的なタイムロスだから、満車だったらその場所は諦めて次のスポットまで移動するのが得策だが、そこまでの電力が残されているのか…という問題が生じるわけだ。つまり電欠ストップは避けなければならないわけで、ならば安全を優先してコンピニで…とかね。頭の中がグルグルなのである。

勾配だって気になるぞ?

そもそも、電費が読めないのだ。静岡県の御殿場から厚木まではほとんど下りだから、電気はほとんど消費しない。EVは走行パターンによって驚くほど電費が変化する。アクセルオフでダラダラ坂を駆け下りれば電気を消費しないばかりか、回生ブレーキによって走行距離を蓄積することも可能だ。だが一度アクセルペダルを踏み込むと、電費は一気に悪化する。群馬までの高低差も気になるのである。

給電に費やすストップ時間を稼ぐためにアベレージ速度を高めるのは無駄だ。速度を上げれば上げるほど電気は減っていく。かといって、低速でトロトロしていたのでは間に合わない。最適なペースコントロールも考えなければならないのである。ああ…。

といった混乱を経て帰宅するまでに、都合4回の給電をする羽目になった。帰宅までに費やした6時間のうち2時間ほど充電していたことになる。そして帰宅したら電気はほとんど空。残りの走行可能距離10kmというクロスプレーである。

というカラカラのEV生活が楽しいというのだから、僕もどうかしているよね。

〈文=木下隆之〉