昨年7月に設立したLazuliは3月4日、本格的に事業を開始するにあたり、商品マスターDBをクラウド上で提供する「NINJA DB」を発表し、サービスの提供を開始した。

商品マスターに特化する理由について、Lazuli代表取締役(CEO/CTO)である萩原静厳氏は、「商品のマスターに起因する課題が、今、様々な企業で顕在化している」と語る。

同氏によると、商品マスターの課題は大きく2つあり、1つはマスターデータの作成・管理に多大なコスト(時間・工数)がかかること。もう1つは、マスターの未整備によって分析、マーケティング、 DXを阻害していることだという。

  • 左から、Lazuli CXO 國貞航氏、Lazuli 代表取締役 CEO/CTO 萩原静厳氏、Lazuli 取締役/COO 池内 優嗣氏

マスターデータ作成・管理の面では、大手卸事業者では、メーカーから商品情報を収集、小売への販売のための商品マスターデータ作成という一連の業務に年間約8億円というな人件費を投入しており、あるECサイトでは、検索に必要な商品情報を手作業で入力し、年5000万円のコストが必要になっているといった事例があるという。

一方、マスターの未整備面では、仕入れた商品の管理コードの採番ルールが販社ごとに異なっているため、全社を横断しての分析が困難で、 その商品がいくつ売れたのかを把握することすら難しかったり、ECサイトで顧客の行動履歴を使った商品のおすすめ機能では、商品の情報を活用することができないため、ニッチな商品、売れる頻度の低い商品においては、蓄積される顧客の購買・行動データ量が少なく、関連性のある商品をおすすめしにくいといった課題があるという。

また、DXの推進のため企業が持つデータを利活用する場面では、データの「量」はあるものの、 利活用が困難な「質」の課題を抱えていることが少なくなく、それは生み出されるデータのもとになるマスターデータに課題の源流があるという。

  • 「商品のマスター」に起因する課題

萩原氏は、「これら商品マスターに関する課題をAIで解決していきたいと考え創業した」と、企業の設立の目的を語った。

「NINJA DB」では、情報流通を促進するコアエンジン「Lazuli Inside」と、その情報を統合して一括管理するプラットフォーム「Lazuli Platform」という2つのソリューションを提供する。これらのソリューションを構成する製品としては、独自キュレーションエンジン「NINJA CR」、商品情報整備AI「NINJA AI」、クラウド型商品マスター「NINJA DB」があり、これらを組み合わせて両ソリューションが構成される。

「NINJA CR」は、情報を集めて構造解析し、「NINJA AI」は商品の情報をAIで整理する役割を担う。CXO 國貞航氏は、「ここがもっともバリューのある部分」と述べた。

「NINJA AI」では、データクレンジングを行い、重複排除、表記のゆれの修正、製品名寄せ、分類(カテゴリ)の見直し、メタタグの付与などを行う。そして、「NINJA DB」は、情報を貯めて提供する役割を担う。

同社は、初期導入におけるコンサルティングなども提供する予定で、費用は初期費用と従量料金からなり、実際の金額は問い合わせ。当面は直販がメインとなる。

  • 「NINJA DB」を構成する3つのプロダクト

  • 提供する2つのソリューション

「Lazuli Inside」は、卸事業者がメーカーから商品情報を収集し、小売向けに販売用の商品マスターデータを作成するという一連の業務をAIで自動化し、「NINJA DB」を介して、各企業の商品マスター整備の効率化と、会社間の情報の連携を実現するという。

  • AIでデータ整備・情報を推定/付与

「Lazuli Platform」は、様々な業界の商品情報に対して、AIを活用して名寄せし、効能や製品の特長からメタタグの付与や関連付けを行う。この商品データが「NINJA DB」に格納され、「Lazuli Platform」として各事業者に提供されるという。2020年11月時点で、約2,700万件の商品数、640万件のJAN コード付き商品数を保管しており、今後も保管する商品数を拡大してい予定。

メタタグなどの追加属性情報を付与することで、オンライン小売での商品検索や、レコメンド機能を実現できるようにするという。

  • メタタグなどの追加属性情報を付与

「Lazuli Platform」は複数の外部データベースに点在していた商品情報を一括して管理し、またデータを活用しやすい形に整理、拡張する。同社は商品数が多く、マスタデータの整備が課題と感じている企業の多い食品や日用品、医薬品業界をはじめとし、様々な領域で商品情報データを活用できるとしている。

そして同社は同日、日本マイクロソフトやトレジャーデータとパートナーシップ契約を締結したことも発表した。

Lazuliは、マイクロソフトが支援するスタートアッププログラム「Microsoft for Startups」で提供されるリソースを活用すると共に、パートナーシップを通じ、小売領域で多く利用されているAzure上に「NINJA DB」を構築し、SaaSとして提供する。

具体的には、日本マイクロソフトのエンジニアとの協業により、SKU情報データの格納、 顧客データベース構築テンプレート、顧客データ構築サービスの実装と、Azure上での「NINJA DB」構築を実施する。これらを踏まえ、6月を目標に、汎用的なNINJA DB SaaSのAzure実装を行うとともに、共同で、販売促進活動を展開するという。

トレジャーデータとの協業では、「NINJA DB」とTreasure Data CDPのAPIを介した連携サービスを提供。企業におけるデータ利活用によるビジネス変革、オペレーション革新を促進するという。

萩原氏は、「まずは国内、そしてグローバルということになるが、国内のベンダーさんも海外から仕入れたり、輸出したりしているので、この領域をやっていると自然と世界的な視点をもってやっていくことになる」と語り、将来は海外展開も計画する。

同氏は「Lazuli Insideは、企業の商品マスタの頭脳になる、Lazuli Platformは商品マスターを拡張するというキーワードでやっていく。Lazuli Insideは小売りの企業間連携の部分をAIで解決する。また、製薬業界の薬剤のマスターを統合してサービス提供していく。Lazuli Platformは、(提携した)トレジャーデータやマイクロソフトのデータ基盤に貯まっている情報(POSデータ、会員情報など)を分析・拡張し、マーケティングをやりやすくしていく活動をやっていく。将来的には、物は動くがデータは動かないという課題に対して、データを同期させていくことをやっていきたい」と戦略を語った。