はじめまして、2020年4月に未来館にきました、科学コミュニケーターの片岡万柚子です。よろしくお願いします!皆さんはどんなことにワクワクしますか?私は、自然の中で暮らすいろいろな種類の生き物を見つけたときが一番ワクワクします。

いろいろな種類の自然の生き物は、どんなところで見つけることができるでしょう?生き物の宝庫といえば、熱帯雨林がすぐに思い浮かぶかもしれません。実際に、地球上の約半数の生き物が生息しているといわれています。きっと、私たちが見たことも聞いたこともない生き物がたくさんいることでしょう!ですが、日本から遠く離れた熱帯雨林へ行くためには、時間とお金がかかります。多種多様な自然の生き物と出会うことは、なかなか簡単ではありません。

残念・・・

そんな皆さんに朗報です。実は私たちのすぐそばにも生き物の宝庫があります。それは、皆さんの足元・・・土です。「灯台もと暗し」とはまさにこのこと。今回はとても身近に生息する個性豊かな生き物を紹介します。

土壌に暮らす生き物たち

土で暮らす生き物と聞いて、なにを想像しますか?アリ、ダンゴムシ、ミミズ・・・などなど。それらの生き物は、土を掘ってみたり、落ち葉をひっくり返したりすると見つけることができます。では次に、その掘り返した土やひっくり返した落ち葉の表面を、目をこらしてよく見てみてください。とても小さな生き物たちに気が付くと思います。これらの生き物は、いったいどんな姿をしているのでしょうか。その一部の生き物を紹介します。

トビムシ

体長は1~3mm程度。6本の脚(あし)をもつ生き物で、翅(はね)はありません。代わりに、「跳躍器(ちょうやくき)」というバネのような器官がお腹にあります。「飛ぶ(Fly)」ことはできませんが、「跳ぶ(Jump)」ことができるため、「トビムシ」という名前がついています。天敵に食べられそうなとき、お腹の跳躍器を使い、遠くに跳んで逃げることができます。

跳躍器を使って遠くへ逃げることができるトビムシ

カニムシ

体長は2~5mm程度。8本の脚(あし)をもつ生き物で、トビムシと同じく翅(はね)はありません。名前の通り、カニのような2本のハサミをもっています。サソリとも似ていますが、長いしっぽはありません。エサとなる他の生物を大きなハサミで捕まえて、ストローのような口でチュウチュウ吸うように食べます。

大きなハサミでエサを捕まえるカニムシ

トビムシやカニムシは、土の中、落ち葉の裏、枯れて倒れた木の中や樹皮の裏などに生息しています。このように生活の大半を土壌やその周辺で過ごす生き物たちのことを「土壌動物」といいます。先ほど例をあげた、ダンゴムシやミミズも土壌動物です。足元の土壌には、他にもまだまだたくさんユニークな生き物が暮らしています。

木々が生い茂る山林だけではなく、ご自宅の庭、近所の公園や街路樹の根元などの身近な場所でも見つけることができます。また、土壌動物は一年を通して観察することができますが、もっとも良く観察できるのは夏から秋の季節です。寒い時期では生き物の数が少なくなっているため、見つけることが少し難しいかもしれません。冬の時期に生き物を探すときは、落ち葉や石の下、樹皮の裏などの冷たい空気から身を守れそうな場所を探してみてください。暖かくなるのをじっと待っている生き物が見つかるかもしれません。

もし、森に探しに行く場合は準備をしっかり整えましょう。服装は、帽子、長袖、長ズボン、靴(すぐに脱げず、滑りにくいもの)、手袋です。持ち物は、水筒、虫除けです。ですが、初めは気軽に近所の公園にある落ち葉をひっくり返してみてください。その時も、軍手などの手を保護できるものがあると安全です。そして見つけた生き物は、まずその場で観察してみましょう。使い捨ての透明なプラスチックカップに生き物を入れると色んな角度から観察できますし、もしルーペなどがあればより詳しく観察することができます。

たくさん暮らしている土壌動物

土壌にはダンゴムシやミミズのようにすぐに見つけることができる大きさの生き物から、トビムシやカニムシのようになかなか気が付かないほど小さな生き物まで、多種多様な生き物が生息しています。肉眼で見ることができないほど小さなバクテリアや微生物を合わせると、果てしない数の生き物がいるでしょう。では、私たちの眼でも見える大きさの土壌動物は土の中にどれくらい生息していると思いますか?

明治神宮の森で調査されたデータによると、大人の片足の下には、平均するとヤスデが0.5匹、ムカデが1.8匹、ワラジムシが11匹、クマムシが12匹、ウズムシが48匹、ハエやアブの幼虫が103匹、トビムシが479匹、ヒメミミズが1845匹、ダニ3280匹がいるそうです(青木,1983)。

ダニが3000匹と聞くと、少し気持ち悪いと感じる方もいるかもしれませんね・・・
ですが!少しの土の中にもそれだけたくさんの生き物が生息しているんです!

さらに同じトビムシといっても多種多様な仲間が存在します。例えば、昆虫のチョウを想像してみてください。モンシロチョウ、アゲハチョウ、モルフォチョウ・・・など、同じチョウでも色々な姿形のものがいると思います。同じように、それぞれの土壌動物にも様々な種類があります。中でもトビムシは、「本当に同じトビムシなの?」と思うほど姿が大きく違う種類もあり、日本では約400種、世界では3000種以上いるといわれています。

多種多様なトビムシ

自然の仕組みを支える土壌動物

土で暮らす生き物たちは、自然の仕組みを支える重要なはたらきをしています。「生態系」という言葉を聞いたことはありますか。様々なつながりをもった、動物や植物とその周りの環境が集まったものです。生態系の中では、生物が生きていくために必要な物質が繰り返し使われています。

例えば、山に住むネズミは木の実を食べます。そのネズミはヘビに食べられて、ヘビの栄養になります。そしてヘビもいつかは死んでしまい、土の栄養になります。その土の栄養分を樹木が使い、再び木の実を実らせることができます。そして、また他のネズミは木の実を食べることができます。このように、生物のもつ栄養素が常に他の生物に使われ続ける流れのことを「物質循環」といいます。

物質循環のモデル図

そして物質循環の中で土壌動物は、動物の死骸や糞、落ち葉などを分解して土をつくるはたらきをしています。このはたらきが無くなってしまうと、私たちの周りには生き物の糞や枯れた草木であふれかえってしまいます。反対に、分解するはたらきが強すぎてしまうと、土の栄養素が少なくなってしまい植物が生長できなくなってしまいます。土の中に住む生き物たちは、お互いに影響し合いながら物質循環をつなぐ大切な役割をもっています。

私たちの身近な足元にも、気が付いていないだけで様々な生き物が生息しています。そして、その生き物たちは私たちが安定した生活をおくるうえで、重要なはたらきをしています。最近は、新型コロナウイルスの影響により、遠出はなかなか難しいかもしれません。この機会に、身近な生物多様性に触れてみるのはいかがでしょうか。



Author
執筆: 片岡 万柚子(日本科学未来館 科学コミュニケーター)
大学で初めて土を基盤とした生態系のすごさを知り、どっぷり土壌動物の世界にハマりました。研究室では、土の中の生き物たちがどんな関わり合いをもって暮らしているのかを調べていました。「こんな身近に全く知らない世界が広がっていたのか!」という当時の感動を、多くの人々にも伝えたいと思い、未来館へ。みなさんと新発見のワクワクを共有したいと思っています!