池脇千鶴主演『その女、ジルバ』品川徹に聞く「人生一度でいいから、夢中になれることに出会えるといいのかな」

放送初回に「オトナの土ドラ」シリーズ最高視聴率を獲得、連ドラ9年ぶり主演の池脇千鶴の等身大の演技が共感を呼んでいる『その女、ジルバ』。40歳の主人公・笛吹新(池脇)をはじめ、年を重ねても女性たちがそれぞれの幸せを模索しながら生きるリアルな姿が「泣ける」「元気をもらえる」と、回を重ねるごとに視聴者の共感の輪が広がっている。

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いよいよ残すところ、あと2話。第8話では、BAR「OLD JACK&ROSE」で石動(水澤紳吾)とスミレ(江口のりこ)の結婚パーティーが行われ、新(池脇)を始め、登場人物は皆、2人を祝福して幸せな雰囲気に包まれた。しかし、くじらママ(草笛光子)が倒れてしまい、祝福ムードは一転、波乱のエンディングを迎え…。

そんな『その女、ジルバ』において、じわじわと人気が出ているのが、BAR「OLD JACK&ROSE」のマスター・蛇ノ目幸吉役の品川徹。SNSでも「存在感がある」「味があってかっこいい」と話題になっている。その佇まいは、年配者としての風格を保ちながらも、御年85歳とは思えない若々しさを兼ね備えており、自身よりも若い俳優が多い現場に溶け込んでいる。今回は、品川にドラマの感想と共に、マスター役に対する思いや印象的なシーン、趣味やライフスタイルを聞いた。


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――大変好評の「その女、ジルバ」ですが、このドラマの面白さはどんなところにあると思いますか?

品川 まず、飾り気のない作業着を着て、倉庫で働く冴えない女性役の池脇千鶴さんをテレビで観られると思っていた人は少なかったのではないでしょうか?でも、そういう役を厭わなかった(池脇)千鶴さんは、潔くて素敵だと思いました。また、新がBAR「OLD JACK&ROSE」で仕事をしながら、自分らしく生きていこうとする姿は、視聴者の共感を得ていると思います。

もちろん、新だけではなく、『その女、ジルバ』では、各々の登場人物の生き様を余すところなく描いています。そして、それをどこかで誰かが語っている。例えば、くじらママ(草笛光子)や、ジルバ(池脇千鶴・二役)の人生が他の登場人物の口から語られています。考えるとBAR「OLD JACK&ROSE」にいる人たちはみんなユニークな人たちばかり、とても珍しい空間ですよね(笑)。

――池脇さんが演じる新はもちろんのこと、キャストの皆さんそれぞれに存在感があります。

品川 どこかバラエティの感覚がありますよね、このドラマは。漫画みたいだと思うこともある。それが観ている方にとっても肩が凝らなくて良かったのではと思います。例えばホステスの一人エリー(中田喜子)が新の家に行って、昔一波乱あった結婚詐欺師の男のことを泣きながら話したシーンがありましたが(第3話)、ああいうところはとてもリアルですね。でもその後、ぎっくり腰になってしまうのが漫画みたいで良かった。その一連の芝居をさらりとやられた中田さんは素晴らしいなと思いましたよ。

――「シブい」、「ダンディ」とSNSでも評判のマスター・幸吉さんを、どう演じようと考えられていましたか?

品川 できるだけ若さを感じさせる老人を意識して演じています。同時に、男の悲しみのようなものも滲み出せたら良いと思っていますが、これがとても難しいです。多くを語らずして、すっと立っていることが、幸吉の格好良さかもしれないですね。

――とてもスリムでスタイルが良いですが、普段から意識はされていますか?

品川 普段から、「背筋がピンとしていて、姿勢がいいね」と友人に言われます。体のことを意識するようになったのは、ジムに行くようになってから。ジムに行くといろんなマシンがあるので、鍛えるのが楽しくなりました。でも今は少しお休みしていて、家でダンベルやスクワットをする程度です。コロナが収まったらまた始めたいですね。


――ジムはいつぐらいから始められましたか?

品川 ジムに行き出したのは70歳になってから。仕方がないこととはいえ、老化していくことが嫌だと思ったのがきっかけです。でも、大道具の仕事をしていたこともあり、体を動かすのはわりと好きでした。劇団『転形劇場』にいた40代の頃はずっとヨガをやっていました。

――食生活なども、体のために気を付けられていらっしゃいますか?

品川 僕は一応自分で料理をしますが、才能はないみたいで美味しいと思う物が作れない(苦笑)。スーパーのお惣菜に頼ってしまうこともあります。

――趣味などお聞きしてもよろしいでしょうか。

品川 昔から映画を観るのが大好きです。好きな監督はたくさんいますが、一番はアンドレイ・タルコフスキーです。すべての作品が好きですが、『僕の村は戦場だった』がお勧めかな。あとは日曜大工が趣味です。

――『その女、ジルバ』に出演して良かったと思うことは?

品川 バーのマスターという、格好のいい役は久しぶりでした。最近は病院のベッドにずっと寝ているとか、そのような老人役が多くてね(笑)。しかも僕のイメージなのか、真面目で頑固という、どちらかといえば硬い感じの役が多いので、白い巨塔の大河内教授に代表されるような。幸吉のような朗らかでユーモアのある役はとても珍しくて楽しかった。新にダンスを教えてあげるシーン(第2話)は、ユーモアもあって印象に残っています。

――ダンスといえば、今回のダンス指導の先生から、「大変熱心に稽古されていた」と伺いました。

品川 実は30代の頃に、映画『Shall we ダンス?』ではないですが、街のダンス教室に通っていたことがあり、女性の先生に社交ダンスを教えてもらっていました。上手な方と踊ると不思議と体が軽くなる感覚があり、自分も上手になった気がして一時期ハマりましたよ。今回、ダンスのシーンが何度か出てきて、昔を思い出して踊ったつもりでしたが、ちゃんとできていたかと少し不安です。でも、とても楽しかったです。

――俳優人生も60年を超える大ベテランでいらっしゃいますが、生涯現役でいる秘訣があれば、教えてください。

品川 何事も興味を持ったら試してみる気持ちが大事なのかな。僕は昔、太田省吾さん(劇作家・演出家・劇団「転形劇場」主宰)に出会い、一緒に劇団「転形劇場」で16年舞台をやってきました。太田は“沈黙劇”という独特な表現で劇団が海外で評価を受けるようになり、ロンドンやパリ、ニューヨークなど、海外の演劇祭に招待されていろんな都市に行きました。海外のお客さんの反応が興味深く、公演に出演するのは毎回楽しかったです。そんな体験を経て、気付くとこの仕事をずっと続けていました。自分の俳優のベースは舞台で培ったものですね。生涯現役のような目標を僕自身は掲げていませんが、人生一度でいいから何か夢中になれることに出会えるといいのかな。でも、俳優業で生活できるようになるまで、ずいぶん時間がかかりましたけれどもね(笑)

――最終回まであと2話を残すのみとなりました。視聴者の皆さまにメッセージをお願いいたします。

品川 新のように前向きに生きていれば、願いは必ず叶えられると思います。夢を諦めないでください。そのようなメッセージが、このドラマにも詰まっていると思います。最後まで楽しんでご覧ください。

◆第9話あらすじ(3月6日放送)
スミレ(江口のりこ)の結婚パーティーの夜、突然くじらママ(草笛光子)が倒れ、「OLD JACK&ROSE」は騒然。検査の結果ただの飲みすぎだとわかり、胸をなでおろす新(池脇千鶴)だったが、きら子は腰を強く打っていたため、念のため店の一室で新が看病することに。すると連鎖するように、エリー(中田喜子)やナマコ(久本雅美)ら店のメンバーが相次いで調子を崩してしまう。そんなピンチの中、颯爽と現れたのはあの人物だった…。

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