村上春樹「これはちょっといかがなものか…」疑問符つきの “微妙な(!?)セルフカバー”を紹介
作家・村上春樹さんがディスクジョッキーをつとめるTOKYO FMの特別番組「村上RADIO」。2月28日(日)の放送は「村上RADIO~怒濤のセルフカバー~」と題して、村上さんが以前から“やってみたかった”というセルフカバー特集をオンエア。原曲とセルフカバーバージョンを、村上さんが思い出を語りながら選曲しました。この記事では、中盤3曲についてお話された概要を紹介します。


◆Neil Sedaka「Breaking Up Is hard to Do/『Neil Sedaka』
◆Neil Sedaka「Breaking Up Is Hard To Do (Slow Version)」/『Let The Good Times In』
次はニール・セダカの「悲しき慕情」、「Breaking Up Is hard To Do」です。オリジナルはドウワップ風の軽快なバックコーラスをつけて大ヒットしましたが、ニールはあとになってそのバラード版を作っています。今日おかけするのは、彼がレニー・ウェルチのために編曲した「悲しき慕情」のデモ盤です。
レニー・ウェルチは名曲「Since I Fell For You」をヒットさせた黒人歌手ですが、そう言われるとスロー版の「悲しき慕情」は「Since I Fell For You」にかなり雰囲気が似てますよね。でも結局レニー・ウェルチは、そのバージョンを採用しなかったみたいで、しょうがなくっていうか、ニールは自分でスロー版を歌ってレコードを出しています。今日はそのデモ盤の方を聴いてみてください。これ、なかなか聴く機会はないと思いますので。じゃあ続けてどうぞ。

◆Astrud Gilberto「イパネマの娘 (U.S. Single Version/MONO)」/『Gilberto: 50th Anniversary Deluxe Edition』
◆Astrud Gilberto「The Girl From Ipanema」/『That Girl From Ipanema』
続けて2つ、これはちょっといかがなものか……という軽い疑問符つきのセルフカバーものをかけます。まずはアストラッド・ジルベルトがディスコ風にアレンジした「イパネマの娘」を歌います。たぶん1970年代後半の吹き込みだと思うんだけど、この頃はなんでもかんでもディスコ風にアレンジしちゃうというのが流行っていました。でも正直言って「イパネマ」にはこういうアレンジはきついですよね。
     
◆The Beach Boys「Surfin'」/『Good Vibrations - Thirty Years Of The Beach Boys』
◆The Beach Boys「Surfin'」/『Summer In Paradise』
それからビーチボーイズ(ビーチ・ボーイズ?)。最も初期のヒットソング「Surfin'」が、軽いヒップホップ調にアレンジされています。1992年にリリースされた『Summer in Paradise』というアルバムに入っているんですが、このアルバムにはブライアン・ウィルソンはまったく関与していません。マイク・ラヴとテリー・メルチャーが中心になって勝手にというか、適当にこしらえたみたいです。しかしブライアンはこの「Surfin'」を聴いて、いったいどういう感想を持ったんでしょうね。ちょっと訊いてみたいですが。
話の種にというか、“いかがなものかセルフカバー”、オリジナルと併せて順に聴いてみてください。これはもう批評家に酷評された、一番評判の悪いビーチ・ボーイズのアルバムかもしれません。 

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◆Astrud Gilberto「イパネマの娘」/『Gilberto Golden Japanese Album』
ちなみにアストラッド・ジルベルトは日本語のセルフカバーもやっていて、これがすごく面白い。彼女が1970年ぐらいに日本に来て、日本語で歌いたいと自分から言い出したんです。ずっと日本語の勉強をしていたようです。ポリドールは困ったんだけど、向こうがそう言うから「じゃあ、お願いします」ということになって、ミュージシャンを連れて日本語で吹き込みました。これは面白い。でも日本語でボサノヴァを歌われるとなんか違和感がありますけど(笑)。

<番組概要>
番組名:村上RADIO~怒濤のセルフカバー~
放送エリア:TOKYO FMをはじめとする、JFN全国38局ネット
放送日時:2月28日(日)19:00~19:55
パーソナリティ:村上春樹
番組Webサイト:https://www.tfm.co.jp/murakamiradio/