村上春樹“人生のモットー”は「一に足腰、二に文体」自身のラジオ番組「村上RADIO」セルフカバー特集で語る
作家・村上春樹さんがディスクジョッキーをつとめるTOKYO FMの特別番組「村上RADIO」。2月28日(日)の放送は「村上RADIO~怒濤のセルフカバー~」と題して、村上さんが以前から“やってみたかった”というセルフカバー特集をオンエア。原曲とセルフカバーバージョンを、村上さんが思い出を語りながら選曲しました。この記事では、前半2曲についてお話された概要を紹介します。


こんばんは。村上春樹です。「村上RADIO」、今年もよろしく……なんて言っている暇もなく、もう2月の末になってしまいました。お元気ですか? 今年もなんとか健康に乗り切りましょうね。いろいろあるとは思いますが、やはり健康がいちばんです。「一に足腰、二に文体」というのが僕の人生のモットーです。
「一に足腰、二に文体」――。

<オープニング曲>
Donald Fagen with Jeff Young & the Youngsters「Madison Time」

さて、今日は「怒濤のセルフカバー」特集です。じつは「怒濤の」というほどすごくはないんですが、いちおう看板のキャッチフレーズですので、景気よくいってみました。
「セルフカバー」って、実は日本の造語なんですね。英語にはそういう言葉は存在しません。辞書を引いても出てきません。でもなかなか使い勝手の良い言葉です。

僕の考える「セルフカバー」の定義は、まずライブ録音ではないこと。スタジオ録音であること。ローリングストーンズがライブで「サティスファクション」を演奏しても、それは「セルフカバー」とは言えません。

それから名義が同一であること。たとえばビートルズのヒットソングを、あとになってポール・マッカートニーが歌っても、それは「セルフカバー」とは呼びません。
もうひとつ、オリジナルとは趣向が違っていることです。まったく同じにやっていれば、それは「セルフ・コピー」であって「セルフカバー」とは呼べません。という風に、ひとくちに「セルフカバー」と言っても、考え出すとけっこうむずかしいんです。今日はそういう定義に当てはまりそうなものを僕のコレクションのなかから集めてみました。

◆Mary Wells「My Guy」/『The Motown Collection』
◆Mary Wells「My Guy」/『20 Best Hits Of The 60s』
「怒涛のセルフカバー」特集、手順としては最初にオリジナルを1分くらいかけて、そこに重ねるようにして、カバーバージョンに移ります。

まずはメアリー・ウェルズの1964年のモータウンヒットソング「マイ・ガイ」、オリジナルはイントロに使われた「カナダの夕陽」が有名ですが、カバー版はディスコ調のイントロで、このギターがポール・ジャクソン・ジュニアっぽくて、なかなかかっこいいです。

◆Sergio Mendes「Mas Que Nada」/『Sergio Mendes & BRASIL'66』
◆Sergio Mendes「Mas Que Nada (Featuring Black Eyed Peas)」/『Timeless』
それからセルジオ・メンデス、通称セルメンの演奏する「マシュ・ケ・ナダ」。オリジナルのブラジル'66の演奏、それからブラック・アイド・ピーズをフィーチャーしたラップ風のアレンジにがらりと変わります。僕の通っていた神戸の高校は、東灘(ヒガシナダ)というところにあったんですが、「マシュ・ケ・ナダ」とはとくに関係ないですね。「マシュ・ケ・ナダ」というのはブラジルのスラングで「なんてこった」という意味なんだそうです。

<番組概要>
番組名:村上RADIO~怒濤のセルフカバー~
放送エリア:TOKYO FMをはじめとする、JFN全国38局ネット
放送日時:2月28日(日)19:00~19:55
パーソナリティ:村上春樹
番組Webサイト:https://www.tfm.co.jp/murakamiradio/