メーカー純正品よりも小さく軽く、しかもコストパフォーマンスの高い交換レンズで定評のあるタムロン。昨年秋に発売した望遠ズームレンズ「70-300mm F/4.5-6.3 Di III RXD」(Model A047)を、ソニーのフルサイズミラーレス「α7C」に装着して改めて試しました。軽量コンパクトなα7Cマッチする、取り回しがしやすく使い勝手のある望遠ズームレンズだと感じました。

  • タムロンが2020年10月末に発売したEマウントの望遠ズームレンズ「70-300mm F/4.5-6.3 Di III RXD」(Model A047)。実売価格は税込み58,000円前後とリーズナブル。在庫は潤沢です

70-300mm F/4.5-6.3 Di III RXDを手にすると、とてもスリムで軽いレンズに仕上がっていることを実感できます。重さはなんと545gで、サイズは長さ148mm、最大径φ77mmと実にコンパクト。α7Cに装着してもレンズがヘビーに感じることもなく、バランスがバッチリです。

  • このクラスでは世界最小最軽量に仕上げたというだけあり、とてもスリムな外観。最近のタムロンレンズの例に漏れず、フィルター径は67mmを維持しています

このレンズ1本あれば、中望遠域の70mmを使ってのポートレート撮影から、300mmという望遠域での圧縮効果を活かした迫力のある風景撮影まで、幅広いシーンで存分に撮影を楽しめます。最短撮影距離はワイド端で0.8m、テレ端で1.5mと、このクラスの望遠ズームレンズでは使い勝手のよさが光ります。

レンズ構成は10群15枚。軽さを重視したレンズ構成でライトウェイトと画質を両立し、画面全体で高い解像力を発揮するように設計しています。フレアやゴーストの発生を抑えるコーティングも施されているので、逆光時の撮影でも安心です。

  • レンズ構成。レンズ内手ブレ補正機構は省略しています

肝心の写りも、スッキリとヌケのいい描写を見せてくれました。オートフォーカスも高速で、独自開発のステッピングモーターユニットにより、精度と速さを実感できました。動作音が静かなので、動画撮影にも向くと感じます。

ズーミングもトルクが軽く、思った通りの画角に調整しやすかったです。ただ、持ち歩き時にレンズが自然に繰り出してしまうので、その点は注意が必要だと感じました。

小型軽量の設計で、日常的に使える望遠ズームレンズだと感じる本レンズ、カメラ側の設定でクロップモードにすれば450mm相当の超望遠撮影にも対応します。手ごろな価格に抑えており、手持ちの標準レンズのプラス1としてうってつけの1本だといえます。

  • 300mmという望遠域は、写真の世界を一歩広げてくれます。200mm前後のレンジとはまた異なる迫力で、遠い被写体を引き寄せる魅力があるのです。その味わいを500gを切る軽さで実現できます。洋上のウィンドサーファーもクッキリと捉えてくれました

  • ワイド端の70mmでモーターボートのコクピットを写しました。やや曇り空でしたが、実際の環境そのままの自然な色合いがイイ感じです

  • 今度は、同じ場所からテレ端の300mmで撮影してみました。コクピットのガラス越しですが、メタル製ステアリングの光沢感やメーター周りの質感が伝わっていきます。このレンズはズーミングがとても軽く、指先1本で瞬時に狙った画角に調整が可能です

  • どんと焼きを狙いました。盛大に燃え上がる炎は、離れていても熱さが伝わってくるほどです。そんな時に望遠ズームレンズは活躍します。離れた場所から画角を自在にコントロールできるからです。安全な場所から意図した構図で撮影できました。メラメラとした空気感までよく写っています

  • 河川敷をブラブラと撮影中に、プロペラ機の音が聞こえてきました。ふと見上げると、鉄道の高架橋越しに伊豆七島に向かう機影を発見。とっさにカメラを向けましたが、見事に合焦してその姿を撮ることができました。αの高速で正確なオートフォーカスにしっかり対応している点は魅力ですね

  • 近ごろ話題の圧縮効果も、このレンズを使えばカンタンに撮影できます。川にかかる水門を斜め方向からテレ端300mmで撮ると、こんな感じにデフォルメされて写ります。写っている階段同士は数十mは離れているのですが、まるで隣り合っているかのように写し出されます。この効果を使えば、見た目とは異なる迫力のあるシーンを演出できるでしょう

  • α7Cにを装着してブラブラと長時間撮り歩きましたが、軽さとスリムさのおかげで疲れ知らずでした。一昔前の製品の印象で「望遠ズームレンズって重いんでしょ?」と思っている人は、実際に手に取って試すといいでしょう。ちょっとした休日にスルリとカメラバッグに入れて、気軽にスナップ撮影を楽しめる1本になっていると思います

  • 300mmというテレ端だと「手ブレが心配」という人がいるかもしれませんが、α7Cのボディ内手ブレ補正機構のおかげで、散歩中に知り合ったイヌもシャープに写し止めることができました。スナップからポートレート、運動会などのスポーツでも、この70mmから300mmという画角は大いに活躍します。このレンズがあれば、ひと味違った望遠写真を楽しむことができることでしょう