常田大希が語る「祈り」の真意

J-POPの枠を押し広げ続けているKing Gnuの首謀者でありソングライターである、常田大希によるプロジェクト・millennium paradeの1stアルバムがリリースされた。タイトルは「これがmillennium paradeだ!」と堂々と主張するかのような、『THE MILLENNIUM PARADE』。

本作は、常田にとって大切なものが何層にも重なっているアルバムだと言っていい。常田が目指し続けている、すでにある音楽やアートを壊して再構築し、まだ誰も聴いたことのない音、誰も見たことのないサウンドスケープを生み出すことを、今作でさらにやり抜いている。その上で、自身に起きた身近な人の死を偲び、弔い、葬り、自分と周囲の人生を肯定するかのようなストーリーがアルバムを通して描かれており、常田自身の人生観をひとつの芸術として昇華させているのだ。ただし彼の人生観やエゴをそのまま生々しく吐き出しているのではなく、芸術という尊い世界の中に溶け込ませて、自身にも受け取る人にも希望を見せようとしているのだから、実に美しくて、そしてオリジナリティに満ち溢れている。膨大な音楽の知識量と圧倒的な創造力を蓄えてクリエイトし続けている常田は世間から「鬼才」と呼ばれているが、彼の芸術の根底にあるものは、生命に対する誠実さと、聴いた人に対しても「生き抜け」と愛を持って語りかける姿勢であることを、改めて感じさせられる。

常田大希が2~3年前に友人を立て続けに亡くしたこと。それが彼の人間性においても芸術の創作源においてもとても重要な出来事になっているのではないか。彼が友人の死を告白した「白日」のリリースタイミング以降、彼の歌詞やライブでの姿に触れるたびにずっとそう感じていたが、決して取材で簡単に聞き出せる話ではないだろう。話したくないかもしれないし、音楽を純粋に受け取る上では知らないほうがいいのかもしれない。今回の取材で質問を投げてみても、もしかしたら話を逸らされるかもしれない。でも、『THE MILLENNIUM PARADE』について取材をする役目を担った身としては、このテーマを避けるわけにもいかない。そんなふうに思いながら、取材現場へ向かった。

少し遅れて取材場所に到着した常田は、普段よりリラックスしているように見えるラフな格好で現れ、ときに姿勢を崩しながらソファに腰掛けて、数は少なくてもその一言一言に密度が凝縮されているかのような言葉選びで、ゆっくりと話してくれた。

これまでの6回のインタビューでは触れてこなかった部分にいざ踏み込むために、あえていつもとはちょっと角度を変えて、その場で目についた彼の私物アイテムのことから話に入ってみた。

音楽を作って伝えることで「友達」を増やしてきた

―いつも吸ってるタバコは、LUCKY STRIKE?

常田:LUCKY STRIKEかハイライトですね。

―制作や活動の中だと、どういうときに吸いたくなるんですか?

常田:「行くぞ!」っていうときも吸ってますし、「終わったー!」ってときも吸ってますね。切り替えるときに吸いがちですね。いい区切りになるというか。昔から火が好きっていうのもある気がします。だから落ち着くんだと思うんですよね、タバコの燃えてる様子が。俺ら、火が好きなやつが集まってると思う、MVとかで車も爆破したがるし(笑)。



―『THE MILLENNIUM PARADE』のジャケットも火ですし(笑)。

常田:ペリメト(PERIMETRON。常田が主宰するクリエイティブ集団。millennium paradeやKing Gnuのアートワーク全般を制作)、全員タバコ吸いますからね。今時、俺らくらい吸う人たちも珍しいんじゃないですかね。



―millennium parade(以下、ミレパ)のチームや仲間の強度は、アルバムからもハッキリと感じました。ミレパのローンチパーティー(2018年5月)を終えた直後にインタビューさせてもらったときは「俺が素直に繋がれる仲間が欲しい、というか、友達が欲しい」「自分と違うな、わかり合えないな、って感じることが昔より増えた」「音楽を伝えるということは、自分と似た人を探す、友達を作るということと似ている」という心の内を話してくれましたけど、今回のアルバムを聴くと、友達はちゃんと見つかった手応えというか。

常田:うんうん。

―幸福感はすごくあるんじゃないかなという気がしたんですけど、いかがですか。

常田:年々、開いてきてる感覚はあります。社会とのコミュニケーション能力が上がってきた実感はありますね。それは、音楽力の成長でもあり、引き出しの多さでもあるとは思うんですけど。『THE MILLENNIUM PARADE』も、すごくポップな仕上がりを意識しました。



「人に光をちゃんと提示しないといけないという想いが強くなりました」

―アルバムのテーマとして「祭り」や「弔い」というキーワードが出てきたのは、どのタイミングだったんですか?

常田:今までも「祭り」というものが漠然と好きで。だからKing Gnuのライブの客入れで夏祭りのSEをかけたりもしてたし。祭りの雰囲気がずっと好きだったんですけど、今回はもう一個掘り下げて、本来の祭りの意味から考えてアルバムを作っていきました。

―本来のお祭りの意味、というのを、常田さんはどう捉えているんですか?

常田:死者を祀るというか。本来お祭りというのは、死者を偲ぶ意味合いもあるので。生と死、死の世界みたいなものですかね。

―死者を祀る、偲ぶ曲を書きたいと思ったのは、どういうきっかけからなのでしょう。

常田:最近の情勢とかもそうですけど、俺の個人的な経験としても生と死というものがわりと身近だったので。鮮明に刻まれていること、というか。だから自然とそういうものがテーマになっていきました。

―「白日」を作ったときにおっしゃっていた、地元の友達を亡くした経験というのが、常田さんの中で大きな出来事になっていますか?

”白日” MV公開しました.https://t.co/Wt5c7NAgUw

去年は地元の友人が2人も立て続けに亡くなったりして生と死を強く意識した年になりました.最近の自分の作詞作曲にはその出来事の影響が強くあります. ずっと避けていた墓参りに行こうと思えたのはこの曲のお陰かもしれませんhttps://t.co/aLBgJRE0Rm pic.twitter.com/wymT3xH5Xy — 常田大希 - Daiki Tsuneta (@DaikiTsuneta) March 1, 2019
常田:そうですね。その時期あたりから――出来事自体はもう少し前なんですけど――そういうものが作品のテーマになってきていたと思います。アルバム全体をそうしたのは初めてですけど。

―その経験が、この2、3年間、ずっと常田さんの表現の片隅にある、というよりむしろ通底しているものなんじゃないかって、King Gnuの作品からもライブで放たれるものからも感じていたことで。

常田:そうですね、うん。

―地元の友人というのは、どういう関係の子だったんですか?

常田:小中の幼馴染。相次いで、連鎖反応みたいに、3人なんですけど。それこそ去年も、著名な方のそういうニュースも目につきましたし。自分自身の境遇があるから、なおさら目につくのかもしれないですけど。

―多かったですね。実際、2020年の自殺者数は前年より増えたということがニュースになっていましたし。その経験の中で、常田さん自身はどういう感情と戦ってきたんですか。

常田:それこそ……なんていうのかな……なにかできることはなかったのか、という想いもありますし。こっち(東京)に出てきてから、そんなに頻繁に会えてたメンバーじゃなかったので、どういう心の動きでそうなっていったのか正確にはわからないんですけど。それと、残された人の視点もあるし。死というものが遠い話じゃなくなった中で、「生」をどう生きるのか、自分自身の生き方を見直すような、そういう心の動きもありました。作るものもそうだし、自分の人生もそうだけど、やっぱり変わりますよね。

―おばあさんが亡くなったのも、時期は近い?

常田:ああ、そうですね。近いですね。


長野から上京したとき、常田はおばあさんの家で一緒に暮らしていた。このMVは当時その家で撮影されたもの

―自身の生き方や作るものが、どう変わりました?

常田:人に光をちゃんと提示しないといけないという想いが、以後はやっぱり強くなりました。人生をポジティブなほうに持っていくようなものを作りたいというのは、ここ数年思っていることですね。

―それは、音楽を作ることで自分に対しても光や希望を見出したいという感覚もある?

常田:音楽に、うん、そうですね。音楽を何十年もやり続けてきた人間なので、音楽に救われてきたとは思ってます。

―「千両役者」には<死から眺めた生の躍動>という歌詞もありますけど、死の捉え方も変わったところがありますか?

常田:よりリアリティが出てきますね。でもだからといって、悲観的になるーーもちろんその時期はなりますけどーー死の切り取り方をそういう視点だけではなくて、子どもの頃にワクワクしたお祭りの感じと言いますか、心が躍る感じをしっかり散りばめようとはしました。あんまり暗いものを作ってもしょうがないので。

―そうですね。まさに、死者を弔い、葬り、自身の人生をちゃんと肯定して、「FAMILIA」というレクイエムで終わる、とても美しい流れのアルバムになっていると思いました。このアルバムと「FAMILIA」という曲を作って、常田さんの気持ちや経験にひとつ区切りをつけられた、という感覚はありますか?

常田:特にそういう位置付けまではいってないんですけど。でも「FAMILIA」は、King Gnuをやってきて今ここにいる歩みの集大成という感じはします。


アルバムのストーリー、ermhoiと言葉を編んでいく方法、常田が込める祈り

―実際、『THE MILLENNIUM PARADE』の曲順はどういうストーリーや意図で決めましたか?……という質問は野暮ですよね(笑)。

常田:……本当に、聴いてて気持ちいいなっていう(笑)。

―あははは(笑)。この芸術性を言葉で説明しろというのは野暮でした。

常田:キーになる曲ができていって、去年の年末くらいから全体を整えだして、それらの曲の接続を作っていく作業をして前後を固めていった感じですね。

―「FAMILIA」の歌詞は常田さんによるものですが、多くの曲はヴォーカルをとってるermhoiさんが書かれていますよね。ermhoiさんは、常田さんの経験や死生観をすごく汲んでいるというか。

常田:そうだね。リンクしてるところもあると思います。

―ermhoiさんとはどういう話をされて、なにを共有して、歌詞を書いてもらっているんですか?

常田:「こういうことを訴えたい」とか、そういうのは基本的にそんなに言わないですね。作り方は曲ごとに違いますけど、おおよそのテーマとか、タイアップの曲だとキーワードとかがあって、そこからホイちゃん(ermhoi)が作ってきたのを二人で修正していく感じ。たとえば「Bon Dance」だと、タイトル通りですけど「新しい盆踊りを作る」みたいなところから始まって、「盆」というものの起源とかを共有しつつ、こうなっていった感じですね。曲によって第3、4、5稿までいくとか、そういうこともありますけど、年々自然とトーンが揃ってきてる気はします。一緒に作り始めた最初の頃は、もっと大きな違いを擦り合わせないといけなかったんですけど。ただ、このプロジェクトにおいては、普段彼女が自分の作品で歌ってることよりももっと直接的な表現を心がけてもらってはいますね。

―ermhoiさんに限らず他のメンバーもそうだと思いますけど、クリエーションの部分だけでなくて、そういった命とか社会に対する眼差しも重なるものが多いと感じていますか?

常田:そうですね。やっぱり、近いところにいるということは、そういうことだと思います。

―「Plankton」は、単曲で聴いてたときはそう思わなかったけど、アルバムの流れで「Deadbody」のあとに聴くと死体を焼く前の描写にも聴こえて。

常田:あ、そうそう。着想していったのは、死体が海の中に沈んでいって、「Plankton」が始まる、というような。アルバムの展開、ストーリー軸としてはそういう感じ。というのは、まあ、こじつけですけど(笑)。

―「Plankton」を書き始めたときから、アルバムのテーマや流れを考えていたわけではない?

常田:もちろん自分の人生に沿って作品を作っているので、自然と曲ごとのトーンや流れは揃ってきます。プランクトンって海のイメージがあるし、生命のおおもとみたいな意味合いが海にはあると思うので。大きな意味で「生と死」を表してるというか。

―死者へ語りかけ、偲び、葬る様を描いたあとに、「2992」があって。この曲は1992年生まれの自分が1000年後に生きている人に今のことを伝えるなら、といったテーマがあったそうですが、これはリリックを書き始める前にermhoiさんとなにか話されました?

常田:「2992」は、まずベースに番組(NHKスペシャル「2030 未来への分岐点」)の意図やテーマがあって。彼女自身が環境問題だとかそういう方向へのアンテナがしっかりとあるアーティストなので、本当に自然と近しいポイントを書いてきましたね。



―そのあと、DTMP(millennium paradeの前身プロジェクト)時代のピースを繋ぎ合わせたインタールード「TOKYO CHAOTIC!!!」があって、Srv.Vinci時代の楽曲をリアレンジした「Philip」「Fireworks and Flying Sparks」と続きます。「Philip」リリース時に「過去にやってたアンダーグラウンドな活動をしっかり肯定していきたいし、当時の延長線上に今の俺たちがいるのを再確認するようなことをやりかった」と話してくれましたけど、自身の歩みや人生を肯定しようとする意味合いをさらに強固なものにしているなと。今作で、Srv.Vinci「Diving To You」のリアレンジとして「Fireworks and Flying Sparks」を入れようと思ったのは、なぜ?

常田:流れ的にというかね。チャーチ(教会)感、祈り感というものをすごく意識してアレンジしていったので、今回のアルバムのテーマにはぴったりかなと思って入れました。「FAMILIA」のMVでも、祈りの象徴みたいなものとして「煙」がキーになっているので。

―常田さんがこのアルバムを語る上で「祈り」という言葉を使うとき、なにを祈りたいのでしょう?

常田:本当に、ささやかな光だったり希望みたいなもの。少しでも、人が人生に希望を見出してくれるように。そういう祈りですかね。





「ここ数年、あんまり音楽を聴かなかった」

―サウンドメイクに関しては、今作を作る中でなにか考えるきっかけやアイデアの種となるような音楽やアーティストってありました?

常田:いや。ここ数年、あんまり音楽を聴かなかったです。なので外からの影響はあまりなかったですね。それよりは、今までの来た道の精度を高めるみたいな方向でした。

―なるほど。最初に「ポップな仕上がりを意識した」とおっしゃってましたけど、それはなぜ?

常田:やっぱり、自分はポップアートなアーティストだなっていう認識があるからですかね。J-POPのアーティストだという認識は自分ではないんですけど。でもやっぱり、もともと持ってる資質としては、アートの区分でいうとポップなものが好きなので。自分はポップアートをやってるんだっていう認識は、年々しっかり持ってきていますね。

―ポップアートって、たとえば、その代名詞的存在であるアンディ・ウォーホルだって、評価する人ももちろんいるけど否定をする人もいるわけで。ポップアートってそういう価値のものでもあると思うんですけど、常田さんがポップアートを目指すのはどうしてでしょう。

常田:やっぱり、音楽やアートにまったく縁がないような人にもサプライズを起こしたいという想いがあります。そういうものってやっぱり、いくら過激なものでもポップの性質を孕んでくるので。自分の中でそういう物差しはありますね。

―King Gnuは大衆に届くもの、millennium paradeはアートの追究、というイメージがあったけれど、それで言うと、King Gnuでやろうとしてることとミレパでやろうとしてることって、近づいてきてる?

常田:近づいてきてますね。ただ、King GnuのほうはJ-POPというものが一個大きな軸、キーになってますかね。ミレパはもっと広い意味でのポップアートというものと向き合ってる感じがする。

―「三文小説」は、J-POPだけど、J-POPじゃないですけど(笑)。

常田:ちょっとズレていっちゃってますかね、年々(笑)。最近渋すぎるというか、硬派すぎる感じが……もうちょっとチャラくいきたいです、King Gnuは(笑)。

―あははは(笑)。いや、「三文小説」は素晴らしいラブソングだと思ってますよ。



―『THE MILLENNIUM PARADE』の話に戻すと、今回、文武さんの功績、進化がすごいんじゃないかという気がしたんですけど、いかがですか?

常田:いやあ、本当に助けられてますね、文武には。

―どう助けられてますか?

常田:彼の音楽家としてのバランス感覚もそうだけど。関係もすごく長いので、俺が今回どういう音像にしていきたいのかとか、どういう曲にしたいのかを、汲んだ上で彼が自分のアプローチで応えてくれる。本当に重要人物ですね。

―このアルバムがリリースされるといろんな人が語りたがると思うんですけど、語りきらせないアルバムだなという気もして……。

常田:ジャンル分けがしにくいというか。

―そうそう。4つや5つのジャンルの言葉を並べても説明しきれないというか。

常田:ルーツがピンポイントに見えない、見えにくいとは思いますね。

―まさに。常田さんの膨大なルーツもあるし、文武さん、石若駿さん、お兄さんである俊太郎さんなど関わっているミュージシャン全員が膨大なルーツを持っていて、それらが1枚のアルバムになってるから、アーティストの固有名詞を5、6個挙げただけで語りきらせるようなアルバムではまったくないなと思って。

常田:そうですね、それは結構特徴かもしれないですね。俺の作品全般に言えることですけど。ピンポイントなルーツが見えにくい構造に、結果的になっているというか。

―そうした結果、唯一無二な音楽ができあがる。

常田:そう、そこを作るためにやってるので。自分の作品ですけど、本当にいろんな角度から捉えたいので。手法も、本当に1曲ずつ違うし。ひとつの方法論で上手くいったら、次やる曲ではその方法論を取らない。そういうような、自分への裏切りは毎回トライしようとしていますね。


映画「ヤクザと家族」と「FAMILIA」、クリエイティブファーストを根付かせないといけない

―「FAMILIA」が主題歌になってる、映画『ヤクザと家族』についても少し聞かせてください。私も試写で拝見したのですが、すごく素晴らしくて。

常田:そうだね。素晴らしい映画で。

―常田さんから見て、あの映画のどういうところが素晴らしいと感じましたか?

常田:「ヤクザ」という名前が出てくると、ドンパチものをイメージする人も多いと思うんですけど、そうじゃなくて広い意味での家族の映画だなってすごく感じて。そっちに着地させたんだっていうのが、いいサプライズでしたね。

―登場人物はみんなヤクザに関わる人たちだけど、それぞれが抱えている複雑さって、人間にとって普遍的なものでしたよね。

常田:そうそう。結局、人は(立場などでは)変わらないというか。ヤクザを肯定するわけではないですけど。しっかり「人」を描ききれているなと感じましたね。監督の藤井(道人)さんも若いですし(現在34歳)、こんな映画チームがいるんだとも思ったし、そこに絡ませてもらえるのは本当に幸せなことだなと最初から思ってました。撮影クルーも全員若いんですよ。だから本当に、邦画の未来を背負ってる人たちだと思います。

―撮影の今村圭佑さんはKing Gnu「The hole」のMVの撮影も務められていますけど、本当に素晴らしい画を撮られる方ですね。

常田:キーマンですよね。映画カメラマンの美学がしっかり根付いてる感じがする。



―「FAMILIA」のミュージックビデオは藤井道人監督によるもので俳優陣も出演していて、映画の続編のようになっていますよね。

常田:そう、一応そういう構成にはなってます。

―しかも映画の映像を切り出して使うのではなく、撮り下ろしたのがすごいなと。

常田:そういう意味でもちゃんとこだわり尽くせきれたのは、本当にいい経験になりました。本来、結構ありえないことで。しかもそれに本編の役者陣たちが出てくれるっていうのがね。いかにいい映画、チームかということですよね。

―本来映画の中でストーリーを描ききっているはずだから、その続編をミュージックビデオで描くのを許してくれるというのも、なかなかないですよね。

常田:綾野剛や藤井道人を筆頭に、先輩方がしっかりと作品にとってなにがベストかということに本気で向き合い続けてくれた結果だと思います。


Photo by Masato Moriyama

―「SWITCH」(Vol.39/スイッチ・パブリッシング)に掲載されている綾野剛さんとの対談も拝見しましたが、映画に関わる全員が「主」である集団だったという話が印象的で。常田さんが「すべての登場人物を主人公にした物語を新たに作ることもできるんじゃないかと感じた」とおっしゃってましたけど、本当に、登場人物全員が立っていて、しかもそれぞれの背景を細かく説明してるわけではないのに少ないセリフや表情と存在感でそれを描ききっていることに驚いて。きっとすべての人が最高のパフォーマンスをする、自分の意見を言い合う、というその現場の空気や映画の作り方が作品にも表れていたんだろうなって。

常田:そうですよね。映画チームの映画をひとつ作り上げることに向かう姿勢が、すごくいい「バンド」でしたね。俺たちは当たり前のようにクリエイティブファーストでやってきたけど、他の業界でもしっかりとそうやってる仲間たちがちゃんといて、こうやって出会えたのは奇跡的なことだと思う。こういう作り方をもっと根付かせていかないといけないって認識させることが、この映画が勝ち取らないといけないことなんだとも思います。タイアップという形は今までたくさんやってきましたけど、一緒にモノを作るということはこうじゃなきゃなっていうようなひとつの基準になりました。(主演の綾野剛と)深い繋がりがあるというところから始まったからこそ成り立つ座組みではあるんですけど、こういう経験は初めてだったのですごくいい機会になりましたね。


「まだ磨き続けなきゃいけないんだなって思うとうんざりする」

―『THE MILLENNIUM PARADE』のジャケットも、King Gnu『三文小説 / 千両役者』のジャケットも和のテイストで、「千両役者」の歌詞には歌舞伎(「楼門五三桐」)のセリフをオマージュしたフレーズもありますが、そういった「和」のモチーフを最近特に取り入れてるのはどうしてですか?

常田:トレンドになってますね、自分たちの中で。ミレパを構想するときに、日本の昔のワードだったり、妖怪、浮世絵とかいろんな文化に触れる時間がすごく長くて。King Gnuには今までそういうエッセンスはなかったけど、自然と全体のアートワークになっていきました。自分たちの最近のトレンドだと思います。



―ご両親はアートにも関心があって一緒に美術館にも行ってたと以前おっしゃってましたけど、幼少の頃から日本の文化にも結構触れられてたんですか?

常田:いや。ここ数年で急激に、そこを自然な形で掘り起こすような作業をみんなでしてました。

―今回のジャケットのアートワークは、浮世絵を2021年で表現するなら、というイメージですか?

常田:漫画タッチでもあるので、浮世絵というか……ゴッホが、日本のことを全然知らないからこそすごく憧れて、浮世絵と西洋のコラボレーション的な作品を作ったような、そういうバランス感は目指しました。

―ああ、それはミレパ全体に通ずるものでもありますよね。海外のクリエイターが音楽やアート、映画で描く「世界から見た日本」に目を向けながら、そこにアンチテーゼを掲げたり、もしくはオマージュしてみたりして、今現在日本で生きている自分たちがどう日本を描くのか、という。

常田:そうですね。結構コンセプトに近いと思います。

―今作は、音源からアートワークまで、一切の妥協なく作り上げられた達成感はありますか?

常田:うーん、どうだろう。現時点でのベストは出せたかなという想いはありますけど。それこそ、さっきの文武の話じゃないけど、各セクションの人間たちが年々かなりプロフェッショナルになっていて。ペリメトのアートワークのチームもそう。それがようやく仕上がったなっていうような認識は、最近あります。もう、どこへ出ていっても恥ずかしくないし勝負できるように、ようやくなったなって。「やりきったな」というよりかは、どっちかというとそっちですね。やりきってはいるんですけど、「スタート地点に立った」という体感です。

―外から見てると、もうだいぶ前にそのラインに立っていると思いますけど。

常田:ここ数年ちゃんとやってきたこととか真面目に取り組んできたことがようやく整ったから――それは社会的な立場も環境もそうですけど――これからどうしようかな、みたいな。こんな精度の高いアートワークも、俺らの中ではかなりやりきった感じだと思うから(目の前にあった完全生産限定盤の色校段階のものを見ながら)。そういうところまで伝わってるかわからないんだけど。

―いや、絶対伝わってると思います。

常田:まあそうね。伝わる人が年々増えてきてはいるという実感があるからこそ、クリエイター陣もやりがいがあると思います。

―「スタート地点」に立った先で、どういったことをやっていきたいと思っていますか?

常田:これを完成させるまでは、楽しいばかりじゃなかった。クリエイティブを徹底しきることの喜びと辛さを、本当に、俺個人的にもだし、周りのクリエイター勢も、しみじみと感じた1年だったので。まだ磨き続けなきゃいけないんだなって思うと、ちょっとうんざりしてますね。これから先が長すぎて。まあでも、やっていくだけというか。

―「天才」「鬼才」と言われている常田さんがクリエイションは苦しいというのは、すごく重みがありますね。

常田:宮崎駿さんが「映画の奴隷だ」って言ってたのは、誇張でもなんでもないと思うんです。なにに強制されてるわけでもないのに、本当に奴隷みたいな生活なので。でも俺に限らず、周りみんなそんな感じなので、かわいそうだなって。みんな幸せになってほしい(笑)。

―そう、常田さんの話聞きながらまさに、宮崎駿さんが絵を描きながら「めんどくさい、めんどくさい」って言ってた映像が思い浮かんでました(笑)。

常田:今回のアルバム制作で俺も10歳ほど老け込んだんじゃないかって思ってます(笑)。

―でも、その苦しみと、『CEREMONY』の制作時のようにベルトコンベアみたいに曲を作らなきゃいけなかったことの苦しみを比べると、今回の苦しみのほうが幸せなんじゃないですか?

常田:そうね、喜びも多かった気がしますね。とはいえ、大変なことを始めてしまったなという想いは相変わらずあります。

<INFORMATION>


『THE MILLENNIUM PARADE』
millennium parade
アリオラジャパン
発売中

【完全生産限定盤】
12inchスペシャルBOX仕様、初回限定盤(CD+Blu-ray)
オリジナル小鬼フィギア3体、構想盤(カセットテープ)
価格:10000円(税抜)

【初回限定盤(CD+Blu-ray)】
価格:4500円(税抜)

【通常盤】CDのみ
価格:3000円(税抜)
=CD収録内容=
1. Hyakki Yagyō
2. Fly with me (Netflix Original『攻殻機動隊 SAC_2045』主題歌)
3. Bon Dance
4. Trepanation
5. Deadbody
6. Plankton
7. lost and found(『DIOR and RIMOWA』コレクションムービーテーマ音楽)
8. matsuri no ato
9. 2992 (NHK スペシャル『2030 未来への分岐点』テーマ音楽)
10. TOKYO CHAOTIC!!!
11. Philip (『adidas CASUAL Collection 2020 Fall/Winter』)
12. Fireworks and Flying Sparks
13. The Coffin
14. FAMILIA (綾野剛主演映画『ヤクザと家族 The Family』主題歌)

=Blu-ray収録内容=
※(完全生産限定盤・初回生産限定盤のみ)
millennium parade Live 2019@新木場 Studio Coastより、4曲(Fly with me, Slumberland, Plankton, lost and found)&MVを収録。

https://millenniumparade.com/