●「本当の本心」をさらけ出す

――1月よりアルバムに収録される「ナノ・ハナ」が先行配信されています。改めて、こちらがどのような楽曲に仕上がっているのか教えてください。

すごくキラキラして輝いている夢の中の自分と、頑張りたいのに頑張れない、その気力がない現実の自分、その葛藤を表現した曲になっています。

――歌詞は「諦めたくない」「飛べない」と断定しているところがありつつ、「いいな」というような希望を表現した言葉も使われています。そういったワードチョイスから心の複雑な動きみたいなものを感じました。

ありがとうございます! 詞を書き始めたとき、自分から出てくる言葉が暗すぎて驚きました。自分ってこんなにネガティブだったんだと、そこで初めて気が付いたんです。

――モー娘。などのアイドル曲を聞いてきた堀内さんですが、ご自身で紡ぐ言葉はネガティブなものが多かったんですね。

そうなんですよ! モー娘。さんに憧れて、私も人を元気づけられるようになりたいと思っていたのに、デビューアルバムで最初に手掛けた「ナノ・ハナ」を作るときに出てきたのは、その真逆の言葉ばかり。正直、ショックではありました……。

――なぜ、そういう言葉が思い浮かんできたのでしょうか?

それこそ、その言葉が「本当の本心」だったんだと思います。私は昔から何事にも真面目に取り組みがちで、完璧を求めるタイプだったんです。そうじゃないといけないと思っていました。それが本心だと勝手に決めつけていたんです。自分で殻を作っていたんですよね。でも、それはきっと本心ではなかった。本当は緊張しているとか怖いとか、弱音を吐きたかったのに強がっちゃっていた。そういう気持ちをさらけ出そうとして、結果的にネガティブな言葉が並んだんだと思います。

――以前は虚勢を張っていた。

自分をカッコよく見せたかったんだと思います。アーティストとしても、そういうカッコよく見せていた自分を求められていると思ったので、周りのスタッフさんに「ヤバいっす、暗いです私」と伝えました。そしたら、「その気持ちを出してもいいんじゃない?」と励ましていただけて。その言葉に後押しされて、勇気を出して書いたのがこの曲になります。

――そんな本心をさらけ出した本曲のレコーディングはいかがでしたか?

由衣さんからは「発声の音は出ているけども、突き抜けて聞こえないね」「もっと広がった風に表現したいのにちょっと詰まっているね」という指摘があり、思ったように表現できないことが多くて苦労しましたね……。その分、学びも多かったです。恐らく、ひとりでレコーディングしていたら気づかないことばかりでした。自分だと内にこもり過ぎて、結局は本心をさらけ出すことができなかったと思います。一緒に色々と悩んで、方向性を示してくださった由衣さんがいてくれて、本当によかったです。

●空っぽの私にエールを

――「ナノ・ハナ」に続き、2月12日からは「空っぽの私」の先行配信がスタートしました。こちらの詞にはどのような想いが込められていますか?

この曲はアルバムの4曲目に収録されているのですが、そのひとつ前の「ねぇ星よ」という曲が、絶望に近い表現をしているんです。そこから這い上がるためには、背負っているものを捨てて、何もない自分になるしかない。空っぽになることは怖いですが、それでも「大丈夫だよ」って自分に言い聞かせてあげているようなエール曲になればと思いながら、この曲を書きました。Dメロの「空っぽのメロディーは “ほんとう”」という部分にその想いが詰まっています。この気持ちは今後も忘れないようにしたいですね。

――この曲はご自身へのエールでもあるんですね。

あとは2番の「つよがり詰め込んでた 重たいリュック」という部分。これは、私が普段から物を持ち過ぎているという実体験から生まれた歌詞でもあります。私、絶対に使わないのに重たい本を持っていたり、クリアファイルに紙資料を詰め込み過ぎたりしちゃうんですよね……。

――荷物が多くないと不安なんですかね?

そうなんだと思います。こういう部分にも私らしさが詰まっているので、ぜひ注目してください。

――メロディーはどのようなイメージで作りましたか?

歌詞のなかに「太陽の声」という言葉が出てくるように、イメージとしては晴れ。嫌なことやモヤモヤを振り切って駆け抜けていく疾走感をメロディーで表現しました。

――レコーディングはいかがでしたか?

この曲も苦戦しました。特にサビ。駆け抜けていく表現をしようとしたら力んじゃって。頑張っている感が出てしまったんですよね。由衣さんとも「自分が頑張って絞り出して歌っているみたいな表現は違うよね」という話をしました。この曲のレコーディングでは、いかに音楽や音に頼るか、ということを学んだ気がします。

――音に頼る、でしょうか。

私のなかで、音楽はサビが一番盛り上がるというイメージがあったんです。ただ、この曲では逆に一番力を抜いて歌う部分が、サビなんですよね。音に身を任せて、一体化して歌うことが正解の場合もあるんだと気が付いたレコーディングになりました。

●ライブがしたい

――アルバムには先行配信されている2曲のほかにもさまざまな楽曲が収録されています。なかでも注目して欲しい曲を教えてください。

どれも聞いて欲しいところですが、「Welcome to Nanoland」は、私がずっと好きだったテーマパークの世界や夢見ていた妄想の世界を詰め込んだ曲になっています。途中でピエロさんが出てくるような音が鳴ったり、最後には花火が打ち上がったり……。一日中遊んでいる気持ちになる音楽のテーマパークのような曲になっているので、ぜひ聞いて欲しいです。また、アルバムの最後を飾る「ユメ日記」は、冒険した後にお家に帰って、「私は私なんだ」と気が付く曲になっています。アルバムの曲順に意味があるので、一度は頭から最後まで通しで聞いて欲しいですね。

――アルバムを通じて物語を感じて欲しい。

はい。アルバムを作る前は「虹を渡り切った先に見える景色」の物語にしようと思っていました。ただ作っていくなかで、渡り切った先よりも、最終的に戻ってきた場所が一番落ち着くということに気が付いたんです。本当の自分に出会えたからこそ、こういう気持ちになれたのかなと思います。

――自分を見つめ直すきっかけにもなったデビューアルバム。それを経て、今後はどのようなことをやっていきたいですか?

やっぱり、ライブがやりたいです。照明や映像を使って空間そのものを楽しめるライブができたらいいな。ミュージカルが好きなので、ショーっぽいパフォーマンスを含んだライブもやりたいです。子どもも大好きなので、一緒に遊べるようなライブもやりたい! そして、目標は大きく東京ドームです! あとは、絵本に歌を付けてみたいですね。自分で4コマ漫画を描いてTwitterにアップしているので、絵本のお話やキャラクターを作ることにも興味があります。

――最後に、今後は声優・アーティストとしてどのように活動していきたいのか教えてください。

声優としては、最高のエンターテイナーとして、徹底的に楽しんでもらえるような表現をしていきたいです。いい意味で仮面をかぶって、思い切り役に成り切る。芝居はもちろん、歌やダンスでキャラクターを表現するときは、足のつま先まで成り切りたいです。アーティストとしては……ずっと等身大でいたいですね。音楽は自分の心を解かせる存在だと思っています。アーティスト活動は、ありのままを出せる場所であり続けたいですね。

●堀内まり菜1stデビューアルバム『ナノ・ストーリー』
発売日:3月10日
初回限定盤(フォトブック付き豪華仕様)
価格:5,500円(税込)
通常盤
価格:3,300円(税込)