「喫緊」という言葉を所信表明や演説で耳にした人もいることでしょう。この記事では喫緊の意味や使い方、類語・英語表現など細かく解説します。

  • 屋外で話し合う様子

    喫緊という言葉に触れましょう

喫緊の意味とは

喫緊は「目前の差し迫った重要な状況」を意味する言葉です。組織内での課題や問題点に触れて使われ、「今期は、拡販体制の再構築が喫緊の課題です」などのように使います。

読み方は「きっきん」です。古くは「吃緊」と書きましたが、当用漢字表から常用漢字表に切り替わった際、「吃」の字が除外されたため、同じ読み音の「喫」が採用され、現在の喫緊となりました。

喫緊が表す急ぎの度合い

喫緊は急いでいるさまを表現する言葉となりますが、急ぎの度合いはどの程度なのでしょうか。ここでは、急ぎを表現するいくつかの熟語例と喫緊を比較し、それぞれの急ぎの度合いを解説します。

■喫緊

喫緊が表現する急ぎは、正に直面している重要性の高いものを示しています。「今この瞬間」の応急的な措置やとりあえずの対応ではなく、急ぎの対象をしっかり見据えて予断なく取り掛かる最重要事項を示しています。

変にバタバタした急ぎ方ではなく、緊迫感に包まれた「一呼吸」の間(ま)に、事態への重要性と緊急性のすべてを込めた表現が喫緊です。

■緊急

喫緊の「緊迫感」の間の入る余地が一切ない状態が「緊急」です。命運・社運・崩壊の危機など、今この瞬間の応急的な措置や対応が即必要となる状態を指します。喫緊と比べて緊急性はより高く、重要性も質的な違いはありますが、人命を左右するケースもあります。

■近々

「近々」は、差し迫った緊急性や重要性ともに極めて低い「近いうちの予定や予告」を意味する表現です。喫緊が会議の席上や講演、会見の場などで使われるのに対して、近々は日常会話でも頻繁に使われるフランクな言葉遣いとなります。

「近々打ち合わせしましょう」や「近々お会いしたいです」など、緩やかな打ち解けた雰囲気は、喫緊の緊迫感や厳しさとは対照的な表現になります。

■直近

「直近」は、「今時点から、過去・未来において一番近い状態」を指します。喫緊と比べて、取り組むべき対象に緊急性や重要度は含まず、「スケジュール性」が表現される言葉です。「年内の直近の行事は、顧客親睦会です」などのように使われます。

現時点で一番近しい所にある順番としての緊急性・重要性は発生しますが、喫緊の意思や策を伴う差し迫った状態とは全く異質のものになるでしょう。

  • パソコン作業をしている人

    急を要するタイミングと言葉の関係を整理しましょう

ビジネスにおける喫緊を使った例文

喫緊の基本的な意味と表現方法を理解したら、社内外のあらゆるビジネスシーンを利用して、積極的に使うことが大切。ここでは、実際に喫緊を使った例文を紹介します。

喫緊の課題

喫緊の代表的な使い方が、「喫緊の課題」です。このワンフレーズを覚えておくだけでも、あらゆるビジネスシーンで活用できます。

「喫緊の課題」とは「差し迫った状況下での重要な取り組み課題」であり、業界や職種を問わず、ビジネス界共通の表現です。

「ファンド商品導入に備えての当社喫緊の課題は、セキュリティ部門のさらなる強化です」

などのように使えます。

喫緊に必要

「喫緊に必要」とは「差し迫った状況下で早急に必要」との意味合いとなり、「喫緊の課題」との関連で使用されるケースも多くあります。このフレーズも定型句として身につけておき、ビジネスシーンでの喫緊の言葉添えや言い回しに活用しましょう。

「喫緊に必要となる季節商品の売り上げ対策は、競合店の出店月を十分に考慮しなければならない」

などが例文です。

喫緊の対応

「喫緊の対応」とは「喫緊の課題」の延長上の解釈であり、「差し迫った状況下での重要な対応」を指します。

例文は以下の通りです。

「喫緊の対応が必要となるような事態だけはなんとか回避します」

「喫緊の問題は人手不足です」

喫緊の類語

類語とは、同じような意味を持つ言葉を指します。「ある状態に切迫している、差し迫っている」という点で喫緊と共通する類語ですが、正しく使い分けるためには詳細を理解しておく必要があります。

喫緊の持つ「緊急性」と「重要性」の2点と比較しながら、類語の意味と使い方を解説します。

早急

「早急」は「さっきゅう」や「そうきゅう」と読み、「非常に急ぐ状態」や「至急」などを意味します。字の構成通り「早く」「急ぐ」ことを強調した言葉で、喫緊の持つ「重要性」の意味合いは薄く、高い「緊急性」が共通点となる類語です。

使い方は

「早急に手を打たないと、大変なことになってしまう」

「営業成績の低迷に早急な対策を迫られています」

などです。

緊切

「緊切」は「きんせつ」と読み、「差し迫って大切な様子」や「ぴったりとくっつく」などを意味します。喫緊の「緊急性」と「重要性」の両方に共通する類語となりますが、喫緊よりも、より身近に深くかかわるような「切実さ」の色合いが強い言葉となります。

使い方は

「今の教育のあり方は、緊切な問題を抱えています」

「深夜の大雨で、市街地は緊切な事態を招いた」

などです。

緊要

「緊要」は「きんよう」と読み、「非常に重要である状態」や「差し迫って必要である状態」などを意味します。「緊急性」「重要性」共に喫緊と共通する類語ですが、必要性への切迫感が喫緊よりやや強めの表現になるでしょう。

例文としては

「本日皆様にご議論いただきますのは、中期計画において最も緊要なテーマとなります」

「全社をあげての、問題意識の共有が緊要です」

などがあります。

喫緊の英語表現

ここでは「緊急」や「切迫」を意味する「urgently」と「urgent」を使って、喫緊の英語表現を紹介します。

urgently

「urgency」の副詞が「urgently」で、意味は「緊急に」「至急に」などで す。

例文は以下の通りです。

We are required to make efforts in the environmental field urgently.(環境分野での喫緊の取り組みが求められている)

Development of new products is urgently needed for us.(当社にとって新商品の開発は喫緊の課題です)

urgent

「urgency」の形容詞が「urgent」で、意味は「切迫した」「緊急の」などです。前述の「urgently」での例文を形容詞の「urgent」で英語表現にすると以下の通りになります。

We are required to make urgent efforts in the environmental field.(環境分野での喫緊の取り組みが求められている)

Development of new products is an urgent issue for us.(当社にとって新商品の開発は喫緊の課題です)

喫緊の意味を理解し正しく使えるようになろう

喫緊について急ぎの度合い、ビジネスにおける喫緊の例文、類語・英語表現について紹介しました。

喫緊は主に報道関係や政治の場などで使用され、普段はあまり口にしない言葉ですが、意味を十分に理解し、いつでも正しく使えるようにしましょう。