静岡県沖駿河湾の水深2000メートルを超える深海で見つかった巨大魚が新種であることが分かった、と海洋研究開発機構(JAMSTEC)が25日発表した。この新種は深海に生息するセキトリイワシ科の魚の中でも全長1メートルを超え、重さは最大約25キロに及ぶ“横綱級”であることから「ヨコヅナイワシ」と命名された。駿河湾深海における食物連鎖の頂点に立っている可能性が高いという。

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    深海に設置されたカメラが捉えた遊泳するヨコヅナイワシ(JAMSTEC提供)

JAMSTEC地球環境部門海洋生物環境影響研究センターの藤原義弘・上席研究員、河戸勝・准研究副主任らのチームは、2016年の2月と11月に神奈川県立海洋科学高等学校の実習船「湘南丸」を使って静岡県沖の駿河湾口で深海底調査を実施した。

その結果、水深2171~2572メートルの深海の調査で巨大な魚4匹を見つけ捕獲した。深海に生息するセキトリイワシ科の魚は大きくても全長35センチ程度だが、4匹はこれよりもはるかに大きく、全長122~138センチ、体重は14.8~24.9キロもあった。

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    赤い丸の地点でヨコヅナイワシが見つかった(JAMSTEC提供)

JAMSTECの研究チームは、これらの巨大魚を捕獲後、詳細な形態観察や遺伝子解析を行った。従来のセキトリイワシ科の魚と比べると、背びれと臀部(でんぶ)のひれの位置関係や青いうろこの並び方が異なるほか、体の大きさの割には目が小さいものの口は大きく、上下のあごに発達した歯が並んでいる、といった多くの外見的特徴があることが明らかになった。

また、セキトリイワシ科の魚はゼラチン質のプランクトンを主食とするが、見つかった巨大魚の胃からは魚を食べた痕跡が見つかり魚食性であることが分かった。さらに遺伝子解析結果から、これまでのセキトリイワシ科の魚と遺伝的に差があることも判明したという。研究チームはこれらの調査結果から、この巨大魚はセキトリイワシ科として最大種となる新種と断定。ヨコヅナイワシと命名し、学名は調査船の名前をもらって「ナルセテス・ショウナンマルアエ」(Narcetes・shonanmaruae)とした。

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    ヨコヅナイワシの側面写真(上)と全身骨格のCT画像(JAMSTEC提供)

藤原上席研究員らはヨコヅナイワシの体の組成や深海での生態も調べた。体内のアミノ酸に含まれる窒素を分析すると食物連鎖の上位にいるか下位にいるかが分かる。窒素分析の結果、ヨコヅナイワシは駿河湾で泳ぐ魚を食べる食物連鎖の最上位に立っている可能性が高いことを突き止めた。水深約2600メートルの深海に設置したカメラは、この巨大魚が海底付近を活発に泳ぐ姿を捉えたという。

研究チームは「駿河湾のような近海で1メートルを超える魚がそれまで未発見のまま生息していたことを考えると、海洋生物の多様性に関する知見はまだまだ不十分なことが分かる」などと指摘。今後も地球環境変動が深海生態系に及ぼす影響などの調査研究を続けるという。研究結果の論文は、25日付の英科学誌「サイエンティフィック・リポーツ」に掲載された。 

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