昨今では、幸福の条件に必ずしも結婚が含まれるとは限られなくなっているという。そんな中、結婚相談所は年収や年齢といった条件だけではなく、趣味嗜好などの価値観を重視した新しい婚活を模索している企業がある。

その企業は、結婚相談所事業を展開するパートナーエージェントと、「スマ婚」などのウェディング関連事業を展開するメイションが2020年10月に経営統合した新会社のタメニー。成婚から結婚式、そして結婚後の生活品質向上も視野に入れ、ユーザーによりよい人生を送ってもらうことを目指したサービスを展開。AI婚活や喫煙者の婚活支援など、ユニークな取り組みを行っているという。今回、同社の担当者に話を聞いてきた。

  • タメニーの津村氏(左)と橋爪氏(右)に婚活の今を伺った

「PDCAサイクル」をもとにした婚活を実施する「パートナーエージェント」とは?

結婚相談所サービス「パートナーエージェント」では、新たな価値観を受け入れ、これまでの婚活で挙げられていた"条件"に留まらない、新たなマッチングを提供すべく、さまざまな施策を続けているという。同社の特長について、同社婚活事業本部の津村奈美氏、マーケティング本部の橋爪健氏に伺ってみたい。

同社は2006年に結婚相談所サービスを開始し、15年の歴史を持つ。起業当時、従来型の結婚相談所のイメージは決して良いものではなく、その成婚率も10%程度しかなかったという。この成婚率の向上を追求し、結婚相談所の印象を変えたいという思いからスタートしたのが同社のサービスだ。サービスの核は、"コンシェルジュ"と呼ばれる基本200時間の研修を経た結婚相談のプロフェッショナルだ。そして相手を相談、紹介して終わりではなく、成婚を見据えて最後まで伴走することをミッションとしており、その成婚率は業界平均は約10%に対してなんと27%だという。婚活が短期間というのも特長で、成婚する方の約65%は1年以内に相手を見つけて退会していくそうだ。

同社では、ユーザーを成婚に導くために「PDCAサイクル」に基づいた活動を進めている。「P」は"PLAN"次回へ向けての準備、「D」は"DO"どうお相手にコンタクトするか。そして「C」は"CHECK"コンタクトの結果の検証、そして「A」は"ACTION"活動の見直しだ。

「当社ではとくにCとAの部分に重点を置き、『お相手を変えるのではなく、自分が変わる』ことで成婚を目指していただいています。『なぜ交際が続かなかったのか』『異性からどのように評価されているのか』という点について、しっかり根拠となるチェックシートをお見せして、お客様と二人三脚でPDCAを回しているのです。これが成婚率につながっていると思います」(津村氏)。

  • タメニー 婚活事業本部 PA事業部 部長 津村奈美氏

「お見合いを断った場合、必ずその理由を選択してもらうようにしています。そのデータが貯まっていくと、続かない理由が見えてくるわけです。それをもとにロジカルに改善提案を行っていきます。婚活ではどうしても高望みをしてしまう方もいらっしゃるのですが、コンシェルジュから『こうしなさい』といっても説得力がありません。実際にお会いした方々の意見をデータとして見せることで、客観性を担保しているのです」(橋爪氏)。

  • タメニー マーケティング本部 PAマーケティング部 プロモーショングループ マネージャー 橋爪健氏氏

AIを活用し「価値観の合う相手」を探す

そんなパートナーエージェントが2013年から活用しているのが、「AI婚活サービス」だ。とはいっても、AIに完全に相手探しを任せるのではなく、必要に応じて利用する1ツールという扱いで、使うかどうかはコンシェルジュの判断となる。ユーザーにも「AIを使いました」とは伝えていないそうだ。

AI婚活の狙いは「出会いの幅を広げる」ことにあったという。AI婚活の具体的な中身は「EQアセスメント」(価値観マッチング)だ。婚活は年収や学歴、年齢や容姿といった条件から入りがちだが、「価値観」をベースとしたマッチングができないか、という考えからこのシステムが生み出された。

「価値観が合う人は、条件から多少外れていたとしても居心地の良さを感じるものです。EQを婚活に取り入れたのは当社が初めてかなと思います。EQアセスメントでは、112の設問から潜在意識にある「自分の価値観」と「相手に期待している価値観」を探り、この結果をクロスマッチングしていきます。そして、お相手として「期待している価値観」を持っている人を探してくるのです」(津村氏)。

「実際、AIを利用してからというもの、アンケートなどから『提案されたのは条件に合わない相手だったが、うまくいった』という声も増えています。ご紹介できる幅は確実に広がったと感じます」(橋爪氏)。

喫煙習慣のある方へのサポートも

2020年には、実験的にではあるが、婚活において非常に不利な条件となる「喫煙習慣のある方」へのサポートとして、JTとともに「『PloomTECH+』を活用した婚活支援」をスタート。婚活パーティーサービス「OTOCON」などの会場において、喫煙習慣のある方へ「PloomTECH+」を提供し効果検証を進めている段階だそうだ。

「本気で婚活したい人の応援のための1アイテムとして実験的に導入しました。皆様の認識通り、婚活においては非喫煙者のほうが圧倒的に求められる傾向にあります。ですが、いきなり『やめたほうがいい』といってもなかなかやめられるものではありませんよね。そこで、『婚活の成婚率アップを支援する』という観点から、禁煙以外の選択肢を紹介・提供するという試みです」(橋爪氏)。

  • 相談の中でユーザーに「PloomTECH」を提供することもあるそうだ

低温加熱型の加熱式たばこであるPloomTECHは、紙巻きたばこや高温加熱型の加熱式たばこと比較したとき、においが少ないなどの特長がある。昨今では、「においがしない、煙が出ないたばこなら分煙という形で許容できる」という利用者も多く、こういった価値観の変化から、近年は喫煙OKかNGかだけでなく、どこまで許容できるのかを段階的に調べるようになってきているそうだ。

結婚の多様化に対応を進めるタメニー

パートナーエージェントでは、このほかにも「トータルコーディネートサービス」なども行っている。これは、婚活に精通したスタイリストがファッションカウンセリングと買い物への同行、ヘアスタイリストによるヘアカット・ヘアメイク、そしてプロのフォトグラファーによる写真撮影などを行ってくれるサービスだ。自分だけではチョイスできない服装や髪型で、好印象を与える写真を用意できるとあってこちらも好評だという。

近年の人口動態調査において生涯未婚率は増加の一途をたどっており、もはや結婚は当たり前の行為ではなくなってきている。だが結婚が必ずしも幸福の条件ではなくなっている一方で、結婚で得られる幸せもまた人々の心の中に存在しており、結婚という価値観は多様化が進んでいるといえるだろう。そんな現代の結婚相談に対し、タメニーが今後どのようなサービスを展開していくのか、今後も目が離せない。