「嘯く」は「うそぶく」と読みます。ただ音を聞いただけでは、「うそ」という響きから「嘘をつく」という意味だと誤解されがちですが、本来はそういった意味ではありません。

本記事では、この「嘯く」という言葉について、意味や例文と使い方、語源に古語での意味も解説します。空嘯くとの違いや、類語、英語表現もまとめました。

嘯くの意味や読み方とは

早速、嘯くの基本的な意味を見ていきましょう。

嘯くの意味は「知らないふりをする」や「大きなことを言う」

嘯くは「とぼけて知らないふりをする」「豪語する、偉そうに大きなことを言う」といった意味で使われる言葉です。

前者の意味では、本当は知っているにもかかわらず「そんなこと知らなかったな」ととぼけて知らないふりをすることを指して「そのトラブルについて、部下は平然と知らなかったと嘯いた」などと表現します。

後者の意味では、大きなことを言う人を指して「彼女は『このプロジェクトがいつか伝説になる』と嘯いた」「『俺はいつかこの国を動かす男になる』と彼は嘯いた」などと表現します。

虎などの猛獣が吠える、鳥などが鳴くという意味も

その他、「(猛獣などが)吠える、うなる」「鳥などが鳴き声をあげる」という意味も持ちます。そこから海鳴りのことを、「海嘯(かいしょう)」と言ったりもします。

また「虎嘯(こしょう)」は虎が吠えることの他、英雄が世に出てきて活躍することの比喩表現でもあります。

古語での嘯くの意味

古語では「口をすぼめて息をつく、息を切らす」「口笛を吹く」「口ずさむ」の他に、現在の意味と同じく「そらとぼける」という意味で使われていました。平安時代中頃に書かれた『更級日記』でも「知っているのに知らないふりをする」という意味で「嘯く」と使われています。

嘯くの読み方は「うそぶく」

嘯くは前述のように「うそぶく」と読みます。「嘯」という漢字はその他に「ショウ」「シツ」などと読みます。

  • フードをかぶった人の後ろ姿

    「嘯く」には「とぼけて知らないふりをする」「偉そうに大きなことを言う」という意味があります

「嘘をつく」の意味で使うのは誤用

「嘯く」をその読み方から連想して、「嘘をつく」と言い換えるのは誤りです。「嘯く」は、あくまで「とぼけて知らないふりをする」ことを意味します。そのため、嘘をつくこととは異なるのです。

嘯くの語源・原義は「口笛を吹く」

「嘯く」の語源は、古語の意味でも少し触れましたが「口笛を吹く」という言葉にあります。

鳥の声に似せて口笛を吹いて、嘘の鳴き声で鳥を呼び寄せることが“とぼけている様”と捉えられ、「嘯く」に「とぼける」という意味がついたと言われています。

その後、「口をすぼめて強く声を出す」の意味も付随することで、転じて「豪語する」といった意味も持つようになりました。

  • 二羽の鳩

    「嘯く」の語源は「口笛を吹く」

嘯くと空嘯くとの違い

「空嘯く(そらうそぶく)」という言葉には、嘯くと同様に「知っているのに知らないふりをする」という意味が含まれます。しかし「空嘯く」には、相手をバカにした態度を取る、生意気な態度を示す」という意味が含まれる点に違いがあります。

  • 草原と夕日

    空嘯くにはバカにするという意味が含まれます

嘯くの使い方と例文

嘯くは誤用が多い単語です。会話の中で誤用表現をしてしまうと、恥ずかしい思いをしてしまう可能性があります。そのため、きちんと意味を把握してから使いましょう。

以下、嘯くという言葉を用いた例文を紹介しますので、具体的な使い方を学びましょう。

とぼける状況で使われるとき

知っているのに知らないふりをしている場面などで使えます。

<例文>

  • 件(くだん)の事件について、彼は「そんなことがあったのか」と平気な顔で嘯いた

豪語する状況で使われるとき

大げさに言うこと、できそうにないにもかかわらず威勢の良いことを言ったときなどに使います。

<例文>

  • 彼は自分のことを「世界に名をとどろかせる男だ」と嘯く
  • 壁に貼られた紙を見ている人

    使い方をきちんと把握しましょう

嘯くの類語・言い換え表現

嘯くの類語表現を紹介します。

同じような意味で使われる言葉をいくつか覚えておくと、語彙が増えて相手にさまざまな表現で意見を伝えやすくなるものです。これを機に、さまざまな言葉を使いこなせるようにしましょう。

白を切る

白(しら)を切るとは、知っているのに知らないふりをすることです。とぼけるときにも使えるため、嘯くの類語と言えるでしょう。

白を切るの「白」は「知らぬ」の略や、白々しいの「白」と言われています。例文としては、「買い物を頼まれていたのをすっかり忘れていて、そんなことは聞いていないと白を切る」「何も知らないと白を切った」などがあります。

大言壮語

大言壮語は大げさに言うこと、できそうもないことを言うなどの意味があります。口では大きなことを言っても、実行が伴わないことも意味するため、豪語するという意味を持つ嘯くの類語と言えるでしょう。

例文としては、「俺は世界に名をとどろかせる男だと大言壮語を吐いた」「絶対に勝つと大言壮語な発言をした」などがあります。大言壮語は「吹く」のではなく「吐く」になるため、注意しましょう。

  • 英字新聞を持っている人

    類語は語彙を増やすことにもつながります

嘯くの英語表現

嘯くの英語表現は「Play dump」で表せるでしょう。

Play dumpは「バカなふりをする」と言う意味です。そこから、しらばくれる、とぼけるという意味になります。また、pretend not to knowのようにそのまま「知らないふりをする」と英訳する場合もあるため状況によって使い分けましょう。

豪語するもそのまま「Big talk」と訳せます。英語が必要な場面でも使えるように覚えておくと、語彙が広がるでしょう。

  • パソコンを挟んで何かの話をしている人たち

    英語表現を覚えておくとビジネスシーンに役立ちます

嘯くという言葉の意味や使い方を理解しよう

嘯くは、「とぼける」「豪語する」といった意味で使われる言葉です。ビジネスで使う場面は多くはありません。また、文書よりも主に会話で使われることが多い言葉です。

あからさまな嘘をつくときに「嘯く」と使う方もいますが、これは誤用になります。嘯くは「知っていることを知らないと言うこと」で、あからさまな嘘をつくときには使いません。

使い方や意味を理解して、正しく使えるようになりましょう。