韓国 忠清南道庁は、ダイキン工業と420億ウォン(約40億円)規模の投資協約(MOU)を1月19日に締結したと発表した。

同日に開催された協約式には、ヤン・スンジョ忠清南道知事と工場建設予定自治体のギム・ホンジャン唐津市長、ダイキンコリアの平尾恭久 代表などが参加。忠清南道は、韓国政府の「半導体素材・部品・装備国産化推進政策」に沿って、海外半導体製造装置・材料メーカーの誘致を積極的に行っており、今回の覚書締結は、2021年に入ってはじめての外資企業の誘致案件であるという。

  • ダイキン

    ダイキン工業投資協約締結式の様子 (出所:韓国忠清南道道庁)

今回の協約では、ダイキンは韓国のハイテク用薬品およびガスサプライヤであるC&G HiTECHと合弁会社を設立し、唐津市松山の外国人投資地域3万4070平方メートルの敷地に半導体製造用ガス(エッチングガス)生産工場を新設するという。

これによりダイキンは、これまで日本で生産し、輸出してきた半導体製造用エッチングガスを韓国内で生産・販売へと転換する模様で、工場が竣工する2022年10月よりエッチングガスの現地生産を開始する計画で、生産されたガスは大手顧客であるSamsung ElectronicsやSK Hynixといった韓国内の半導体メーカーに販売される見通しだという。

韓国半導体関係者によると、Samsung C&T(サムスン物産)も設立される合弁会社に資本参加し、Samsungへの優先納入を狙うという。サムスン物産は、東京応化工業の韓国レジスト製造現地法人にも資本参加しており、SamsungグループへのArFおよびEUVレジストの優先確保に努めている。

また、忠清南道と唐津市は、電気、ガス、用水、下水·排水処理などのインフラ設備部門で協力を行い、事業の許認可取得および工場建設過程で発生する困難の解消を支援するとしている。

ヤン・スンジョ忠清南道知事は「新型コロナウィルスの拡大による世界景気の鈍化、グローバル貿易の減少など多くの困難が2020年はあったが、新型コロナに触発されたデジタル文化の活性化でIT関連の輸出は好調に推移している。韓国経済の支えとなる電子部品のすべての製造工程に必要不可欠な要素がまさに半導体用ガスだ」と述べたほか、「韓国半導体製造用ガス市場で28%のシェアを占めているダイキンとの連帯・協力は重要である。唐津市松山の外国人投資地域に新設される工場は韓国製造業の高付加価値を創出する上で心強い力になる」と、ダイキンの韓国進出を歓迎するコメントを述べている。

近年、日本の半導体材料メーカーの多くが韓国や台湾の政府、ならびに現地の大手顧客の要請を受ける形で続々と現地生産へと舵を切っているが、その背景には、大手顧客のすぐ近くで要望をこまめに聞き、それを開発・製造に生かさなければ市場シェアを確保できない、という材料メーカーの危機意識が見えてくる。