【コロナで顕在化した在庫問題!売上を増やし在庫を減らす新手法とは?】第9回「DXは意識改革から。コロナ危機下で売上25%増の手法」

前回の記事(https://netkeizai.com/articles/detail/2476)では、日本の人口動態からみてECを含む小売市場は縮小が確実であり、売上第一から「粗利第一」への経営の転換が必要不可欠であることをご説明しました。

本連載の最終回となる今回は、新型コロナウイルス危機下でもDXを効果的に推進することで客単価と売上の大幅UPや、仕入れが停止する中でも滞留在庫から売上を立てたEC事業者の事例をご紹介します。


ノーコストで客単価8%アップ
通販大手フェリシモグループが運営するファッションECサイト「haco!(ハコ)」では2020年秋、わずか1ヵ月で客単価を約8%向上させることができました。

しかも、何か特別なことをしたというわけではなく、「いま手元にある在庫の中から、客単価向上に貢献する商品を見つける」ということを繰り返した結果なのです。

どうしたのかというと、全体の平均客単価帯を向上させる客単価帯の買い物(注文)をマスと捉え、そのマス層にある注文の中でよく買われている商品の品番を特定します。そして、その品番の商品がどのような組み合わせで注文されているかを確認しました。

その結果、合わせ買いされるケースが多い商品をお客がクリックすると、「よく一緒に買われている商品はこれ」という提案ができるようになったのです。

また、期中に動いているオンシーズンものをサイト上で並べ替える時のやり方も変化したそうです。従来は売れ筋の商品を前面に押し出したうえで見せ方を工夫していました。その結果、売れ行きに鈍化の兆しがある商品や、消化が進んでいない商品の優先度が下がってしまい、放置することで不良在庫化のリスクが目の前にある状態でした。



それが、在庫分析ツールである『FULL KAITEN』を使うことで不良在庫化リスクを回避できるようになりました。なぜかというと、FULL KAITENで「この商品を放置すると不良在庫に落ちてしまうよ」というアラートが見えるようになったため、意識的にアラート商品の販促に注力するようになったからです。

これらの結果、客単価は8%上昇、売上は25%増加し、在庫は20%削減することができました(いずれも前年比)。

また、haco!では従来、わざわざ「データを見る日」を設けて手間と時間をかけてシステムから商品に関するデータを探し出していました。そこから、複雑なエクセルに計算させ、ようやくセールや合わせ買い提案に用いる商品を選ぶことができていました。

それが、FULL KAITEN導入後はクリック1つで済むようになり、アイテム選定に要する時間が大幅に短縮されたそうです。


実は「宝の山」だった滞留在庫
次は、オートバイ用品ECの「JAPEX(ジャペックス)」のケースをご紹介します。

JAPEXはヨーロッパのブランドをメインに、米国などからもバイクギアを輸入し販売しています。扱っている商品は単価が高いものが多く、サイト上で展開するさまざまな「特集」がメインの販促手段です。



しかし2020年9月、新型コロナウイルス危機の影響で、海外からの仕入れの中断を余儀なくなされました。欧州、特にイタリアが多かったのですが、感染拡大によって工場が止まり、当初の予定どおりに納品されなくなったのです。

このため、主力商品として当て込んでいた商品の在庫が底をついてしまいました。そこでJAPEXではFULL KAITENを用いて、既にある手持ち在庫の中から、まだまだ売れる可能性がある”隠れた売れ筋商品”を見つけることに注力しました。その結果、しっかりと売上を立てることができたのです。

その要因は、主力ではない”2番手の商品群”を販売できたからでした。それまでは、よく売れる主力商品(売れ筋商品)の販促にばかり注力していましたが、FULL KAITEN導入後は、売れ筋だけでなく、よく売れる商品とあまり売れずに売れ残る商品(不良在庫)との中間にある「過剰在庫」が可視化されるようになりました。この結果、過剰在庫、すなわち”2番手の商品群”の存在に気付くことができたのです。

インポートマネージャーは「過剰在庫、不良在庫を見ていると、本当に『宝の山』だと思う。この中から商品をピックアップして特集を組めば、売れるんだということが分かった」と変化に驚きを隠せない様子でした。

さらに、作業時間の短縮と業務の属人化からの脱却にも成功しています。データを分析してまとめる作業にかかる時間がFULL KAITEN導入の前後で半分から3分の1になったそうです。さらにFULL KAITENによってデータの正確性が担保されたため、特定の従業員でなくても発注業務をできるようになったうえ、作業にかける人時も削減できています。


DXツールは導入してからが勝負
前章までにみてきたhaco! とJAPEXには共通する点が2つあります。

1. 販促に”伝える”データを有効活用している
2. DXツールを導入して終わりではなく、そのツールを使いこなして課題解決に努めている

1つ目は、在庫がある商品の中から販促対象やセール対象の選定する際、客観的なデータに基づいて判断しているということです。そこには、仕入れ担当、MD、商品担当といった立場の違いによって在庫リスクの解釈が異なるというような問題が介在する余地はありません。つまり、客観データを通じてSKUごとの売れ残りリスクと売上への貢献度を社内横断的に共有できているのです。



2つ目については、ECエバンジェリストの川添隆氏がフルカイテン株式会社主催のオンラインセミナーでお話しされていた内容が分かりやすいので、要約して引用します。

DXが成功するための一番のカギは「意識改革」です。ソリューションやテクノロジーを実装すること自体はお金と時間があれば解決できます。しかし「なぜ新しいツールを使うのか」「そもそもなぜ効率化する必要があるのか」という点について明確な意識を持っていない限り、実装したテクノロジーは力を発揮できませんし、それらが使い手の意思をコントロールしてくれるわけでもありません。

※川添氏の発言を含むセミナーレポートはこちら(https://full-kaiten.com/news/events-discussion/2274)からダウンロードできます

数多あるDXツールは魔法の杖ではありません。ツールが本来の力を発揮できるよう、目的を持って使い倒して初めて、効果が出てくるものなのです。

フルカイテンは、小売企業から受け取ったデータを分析し、全ての在庫の「質」(商品力、売れ残りリスク、売上への貢献度)を可視化できるデータとしてアウトプットするツールFULL KAITENを開発し、クラウドサービス(SaaS)として提供しています。大手アパレルやメーカー、楽天ショップオブザイヤー受賞店舗などEC・実店舗を問わずご利用いただいています。

事業規模がある程度の大きさになってSKU数が多くなると、「在庫の質」をSKU単位で把握するのが困難になりますが、FULL KAITENのようなツールは大きな助けになります。そして、これから縮小していく小売市場において売上第一ではなく「粗利第一」で闘っていくうえで、在庫の質を可視化することが最重要課題になるのです。
ご興味をお持ちの方は是非お問い合わせください。

最後に、9回にわたる当連載を無事に終えることができました。皆さま、ご愛読ありがとうございました。


【著者プロフィール】



フルカイテン株式会社 
代表取締役 瀬川直寛(セガワ・ナオヒロ)

売上増加と在庫削減の両立を実現するシステム「FULL KAITEN」を開発し、クラウドサービスとして大手小売企業や楽天市場のショップ・オブ・ザ・イヤー受賞店舗などに提供。 EC経営者として倒産危機を3度乗り越えた経験を踏まえた理論・考え方は、多くの企業から高く評価されており、「FULL KAITEN」にも多くの問い合わせが寄せられている。