メルシャンは1月18日、オンラインにて事業方針の記者説明会を実施した。コロナ禍により『家飲み需要』が拡大した影響で、ワインの販売数量が拡大しているという。また、カジュアルスパークリングが若年層に受けている現状についても説明した。

家飲み需要で前年増に

  • メルシャン 代表取締役社長の長林道生氏

このコロナ禍におけるワイン市場について、メルシャン 代表取締役社長の長林道生氏は「20代の若年層にも間口が広がり始めている。800円未満の手軽なスパークリングワインが(前年比)117%増となり、環境に配慮したオーガニックワインも(前年比)112%増になった」と説明する。ちなみに日本ワインのワイナリー数も331となり3年連続で増加中。ただ、こちらは「コロナ禍で経営状況が厳しいところも多々ある。私たちとしても、シャトー・メルシャンのブランドを通じて経営改善に少しでも貢献していきたい」とした。

  • 事業の軸はCSV×付加価値の相乗効果

「メルシャンの事業の軸はCSV×付加価値の相乗効果にあります。先行き不透明な時代になりましたが、もう一度原点に立ち返って、ワインの持つ魅力を丁寧に伝えていきたい。それは人と人をつなげること、人と社会をつなげることであり、人生の様々な瞬間を豊かに彩っていく潤滑油になるということでもあります。また地域社会・コミュニティに貢献し、環境に配慮し、酒類メーカーの責任も果たしていく。そうした強い想いを、今年も継続していきます」と長林氏。昨年も、オンライン上での消費者との交流や、近隣ワイナリーと一体となって「勝沼ワイナリーフェスティバル」を開催したことなど、日本ワイン市場全体の盛り上げを行ったことを報告した。

なお、昨年のメルシャンにおけるワインの業績は、合計643万箱・前年比97%という結果だった。国内製造ワインは358万箱で前年比107%、輸入ワインは285万箱で前年比91%に。長林氏は「昨年も市場を牽引できた」と評価する。

2021年の事業方針については「ワインファン、メルシャンファンを増やし、果敢なチャレンジでワインの魅力を伝達すること。これを加速していく。ひとりでも多くのお客様の笑顔に貢献していけたら」と説明。そして「コロナで疲弊している現代だからこそ、メルシャンのDNAでワイン市場を牽引し、世の中を元気にしていきます」と言葉に力を込める。

そのうえで、2021年の販売目標は前年比95%に定めた。「2021年も間口拡大を進めながら、ブランドの認知と信頼、共感を広げていきます。市場全体の先行きについては流動的な部分が多く、着地を推定することは困難ですが、マイナス5%くらいで推移するのではないか。メルシャンではそれより良い数字を残しながら、業界の活性化に貢献していきたい」と説明した。

カジュアルスパークリングで市場拡大

続いてメルシャン マーケティング部長の前田宏和氏が、2021年のマーケティング方針について説明した。

  • メルシャン マーケティング部長の前田宏和氏

昨年(2020年)は、飲みやすく・買いやすく・使いやすい、気軽に多様なシーンで楽しめる「カジュアルスパークリング」の販売量が拡大したという。特に、メルシャンとキリングループの技術をコラボさせたクラフトスパークリングワイン「メーカーズレシピ スパークリング ウィズ ホップ」(2020年6月発売)は、20~30代の若年層を中心に受け入れられた、と振り返る。「ホップとワインを組み合わせた、新感覚の美味しさが好評でした。ビール、発泡酒などを好む方、こだわりのレモンサワーを飲む方などに支持されたと分析しています。新たな間口拡大の起点ができました」と前田氏。このほか「おいしい酸化防止無添加ワイン シードル」「メスタ・オーガニック」の販売数量も伸長している。

これを受けて、第二弾となる「メーカーズレシピ スパークリング ウィズ ピール」を3月2日より全国で発売する。メルシャンのワイン醸造技術・梅酒の浸漬技術と、キリングループの飲料開発におけるピール活用技術を組み合わせた。ワインに柑橘のピール(果皮)を浸漬させて「ほろ苦さ」を引き出したのが特徴。生の果皮をワインに浸漬するのは、メルシャン初の試みだという。実勢価格は700円前後(税別、以下同)。

  • 爽やかで飲みやすい中にも贅沢感のある味わいの「メーカーズレシピ スパークリング ウィズ ピール」(白8%、500ml)

3月30日からは、カジュアルスパークリング「グレープフルーツシードル」を全国で発売する。多くの消費者が手に取れるよう、コンビニの冷蔵ケースで展開できるボトル缶で提供される。実勢価格は330円前後。

  • 「おいしい酸化防止無添加ワイン シードル / グレープフルーツシードル」(4%、290ml)

このほか、メルシャンでは『日本を世界の銘醸地に』という目標を掲げた「シャトー・メルシャン アンバサダークラブ」を2021年1月21日より始動する。会員の対象となるのは飲食店・小売店・ワイン業界関係者など。これらワインのプロフェッショナルを通じて、日本ワインの魅力を国内外に発信したい考えだ。なお会員向けには、シャトー・メルシャンの醸造家らが「日本ワインに関する栽培・醸造・研究」「日本ワインの未来に繋がる世界のマーケット」などの情報を配信し、「シャトー・メルシャン アンバサダークラブ」会員向けのセミナーなども行っていくとしている。

  • 日本ワインの情報発信強化を目的とした会員制クラブ「シャトー・メルシャン アンバサダークラブ」が2021年1月21日に始動。国内外で、日本ワインの飲用機会を創出していく

外食産業を盛り上げる取り組みは?

質疑応答には、引き続き長林氏、前田氏が対応した。今後、ボトル缶タイプの商品の発売が増える可能性について聞かれた前田氏は「3月にシードルのボトル缶を発売します。その状況を見ながら、他のブランドに波及させるか検討していきたい」と回答。

外食産業を盛り上げる取り組みについて聞かれると、長林氏は「飲食店を経営されている方のことを思うと、本当に心が痛いです。私たちとしては、ワインの魅力を通じてできることをやる、ということに尽きると思います。昨年もSNSを通じた取り組みなどを行いましたが、まだ他の視点からも盛り上げられると思うので、業界をあげて何ができるか考えたい。食は日本の文化です。こういう時代だからこそ、絆、人と人のつながりが求められています。外食産業の人たちと一緒になって、取り組みを具現化していきたい」と答えた。

昨年、最も売れた製品(あるいは価格帯)について聞かれると、前田氏は「牽引したのは、ローエンドの『クオリティシリーズ』でした。コロナ禍において業務用ワインが壊滅的だった影響から、量販店頭での販売に目を向け、一部のコンビニで『クオリティシリーズ』の500mlや250mlのサイズを展開するなど、タッチポイントを大きく増やしました。また、スーパーマーケットの店頭でワインの勉強会を行うなど、流通の皆様とタッグを組んで施策を展開していった結果がこの数字にも現れた次第です」と説明した。