女優の上野樹里が主演するフジテレビ系月9ドラマ『監察医 朝顔』(毎週月曜21:00~)。きょう18日に放送される第10話では、法医学者たちがウイルス性の感染症のある遺体に向き合っていく。この台本が作られたのは昨年の夏だが、新型コロナウイルスがますます猛威を振るう中、ドラマの制作サイドではこのテーマを放送すべきか否か、議論になったという。

実は、法医学者は常に感染症のリスクにさらされており、新型コロナウイルスの影響は実際の法医学者たちにも、大きな影響を与えている。今こそ、感染症に立ち向かう法医学者の姿を描くことは、ドラマができることとして少しでも意義があるのではないかという思いから、第10話は内容を変えずに放送することになった。

今作で、主に法歯学分野の監修を務める千葉大学大学院医学研究院法医学教室准教授で歯科医師の斉藤久子氏は「新型コロナウイルス禍の今、感染症の話題をタブー視せずに、あえて放送していただくことは、法医学分野に身を置く者としては大変ありがたい」と感謝の言葉を述べる――。

  • 『監察医 朝顔』に出演する上野樹里(左)と安藤聖 (C)フジテレビ

    『監察医 朝顔』に出演する上野樹里(左)と安藤聖 (C)フジテレビ

■常に感染症リスクにさらされる法医学者

自身も、発生時から今に至るまで、遺体の身元確認などで東日本大震災に関わり続けている斉藤氏。新型コロナウイルスの影響を聞くと、まず「4月の緊急事態宣言発令前後の情報は、新型コロナウイルス感染症の感染経路が不明で、有効な薬もなくワクチンもない状態、死亡すればご家族に会えないまま火葬、というものであり、ご遺体の感染も心配ですが、自分達自身の職業感染リスクも心配でした」と振り返る。

そして、「ご遺体が感染していればすぐに保健所に届け出て、濃厚接触者になるであろうご家族の検査が必要ですし、ご遺体の検視をした警察官、検案した警察医、身元不明であれば警察歯科医、解剖されれば解剖室に入った全ての人がPCR検査対象になると思いました。保健所のPCR検査が、生きている人だけを実施する、もしくはひっ迫することを考えて、千葉大法医でもご遺体のPCR検査を実施できるようにしました。さらに、感染防護対策のための解剖マニュアルを作成し、解剖室をゾーニングしました」と、分からないことばかりの中でも懸命に対応していった。

  • (C)フジテレビ

■物資不足にオンライン授業…様々な影響が

それでも、「コロナ前は全例で、N95マスクをしていましたが、感染防護の物資が足りなくなったため、N95マスクは肺炎が疑われる解剖時のみとなりました。通常使用するサージカルマスクも在庫がわずかとなり、タイベックスーツはもちろんなく、ディスポガウンも在庫僅かとなり、不安でしかなかった」と、これまで経験したことのない事態が。

さらに、「法医学教室は大学の一講座ですので、学生への講義や実習も必要です。対面はなしで、全てオンライン授業になりましたが、死体の写真をスライドに入れることも制限されて、教官も学生もなんの準備もなく、オンラインになりましたので、倫理教育の重要性も痛感しました。第9話の学生と同じです。学生だけでなく、教官も著作権侵害など勉強しなくてはならないと感じました」と、新型コロナウイルスは、さまざまな側面に影響を及ぼしていったそうだ。