ブラインドサッカー(5人制サッカー)と、ゴールボール男子日本代表。新型コロナウイルス流行の影響で1年延期された東京パラリンピックは両競技ともに悲願の初出場になる。今回は、ブラインドサッカー日本代表キャプテンの川村怜とゴールボール男子代表チーム・東京パラリンピック内定選手で最古参の信澤用秀による、競技の枠を超えたオンライン対談が実現! それぞれの競技やチーム自慢、そして特別な舞台にかける思いを語り合った。

・川村 怜(31歳)
20016年からブラインドサッカー日本代表キャプテンを務める攻撃の中心選手
・信澤 用秀(34歳)
2020年2月までゴールボール男子日本代表のキャプテンを務めた精神的支柱

――ブラインドサッカーとゴールボールは、同じ視覚障がい者の球技。お互いの競技の見どころといえば?

信澤用秀(以下、信澤)  目隠しをしてプレーする点はゴールボールと共通ですが、ブラインドサッカーのトップ選手は音や声を聴き分けることで“ピッチの中のどこに自分が立っているか”、“どの方向を向いているか”をほぼ正確に認知できると聞きます。ゴールボールよりも、空間認知能力や情報処理能力が研ぎ澄まされるのかもしれません。

川村怜(以下、川村)  さすがの目のつけどころですね、うれしいです。僕らは(屋内のゴールボールと異なり)屋外でプレーするので、どうしても雨降ったり風が吹いたりといった環境の変化にさらされるし、会場によって音の聞こえ方やボールの鳴り方が違ったり、芝の長さによってドリブルやパスのしやすさが変わったりという不確定要素がたくさんある。その中で、状況に適応してプレーしていくことが求められるんです。

ドリブル突破からのシュートのバリエーションを増やしているという川村(写真は、ブラインドサッカーワールドグランプリ2019)

信澤 僕らは体育館で行うので、環境による音の聞こえ方にそんなに大きな変化はないと感じています。ただ、ゴールボールも、“相手チームがどんな動きをしているか”、“こちらがボールを投げて相手のどこに当たった”とか、「音」だけでなく「人の気配」で情報を得ています。そういった感覚的なところは、2つの競技の似ているところですよね。

川村 たしかに。見えない選手たちは「声」や「ボールの音」以外の情報も得ています。例えば、ブラインドサッカーでは“インサイドキックなのか、トーキックなのか”、“右足で蹴ったのか、左足で蹴ったのか” 音だけでなく、ボールの動きとコースをイメージすることでわかるんです。おそらくゴールボールの選手も、“相手がボールを受けるときに頭をどっちに倒したか”とか、足音に加えて気配で感じているのではないでしょうか。敏感なところを感じる力は共通して養われているんだと思いますね!

信澤 相手が右足で蹴ったか左足で蹴ったかわかるんですか……。本当にびっくりしています、今。
ちなみに、ゴールボールで、ボールが相手に当たったときに聞き分けるのは、たいてい“てのひらに当たる”、“足に当たる”、“おなかに当たる”の3つですね。

川村 ボールの鳴りの特性が違うのかもしれないですね。事前情報が役立つときもあります。相手が右手で投げたか、左手で投げたかわかるものですか?

信澤 情報があれば多少はわかると思うんですけど。たんに投げ合っても、相手が右利きなのか左利きなのかはわからないですね。

川村 そうなんですね。僕は体験程度にしかゴールボールに触れたことはないのですが、一度ゲーム形式でやってみたい気もします。まあ、受けられないし、投げられないと思うんですけど(笑)

信澤 僕もアイマスクをつけて走るなんて怖くて絶対できませんね(笑)

攻撃における的確なコントロールが持ち味の信澤(写真は、2019 Goalball Japan Men's Open)

――2人ともチームをけん引する存在ですが、東京パラリンピックに向けた現在の代表チームの特徴は?

川村 イレギュラーな場面も多い中で、あらゆることに対応できる選手が多いチームだなと思っています。“日本のエース”と呼ばれて世界でも得点をしてきたストライカーもいれば、バランスを見ながら攻守に関わってチームをまとめてくれる選手もいます。ブラジルから帰化した選手は、日本人にはないファイティングスピリットを持ってピッチで体を張る姿を見せてくれます。

10代の選手もいますが、40代の選手が多く、年齢層は高めといえます。世界的に見てもとにかく熟練度がパフォーマンスに影響する競技なので、単純に年齢が若ければ強いというわけでもないのですが……。

信澤 ゴールボールは11人の強化指定選手の中で30代は僕含め2人だけ。若い選手が多く成長してきて、これまで国際大会に出場していたメンバーを押しのけて代表チームに入ってきています。今が一番乗りに乗っている時期という選手もいるので、やはり勢いがあると強いと思いますし、東京パラリンピックに向かっていくうえでチームとして常に明るい状態を保てるんじゃないかな思いますね。

ブラインドサッカーはいろんな経験をされたベテラン選手が多いということですが、ベテランの選手がいると、いざというときにチームが落ち着くし、もし勢い余って悪い方向に流れていきそうになっても冷静さを取り戻せる。そういう意味では、チームのバランスを見て若手をうまく落ち着かせたりするのが、僕や年齢が上の選手の役割かなと思います。

――それぞれ自国開催の東京大会がパラリンピック初出場になりますが、2人はこれまであと一歩というところで出場を逃した悔しさを知っています。

世界選手権でパラリンピック行きを逃し、涙を流した ©JGBA

信澤 僕は代表生活が長く、パラリンピックの予選としては北京とロンドンとリオの3回経験しています。中でもとくに印象的だったのがリオ行きを逃した2015年です。

アジア枠を取るためのアジアパシフィック選手権と、世界全体で出場枠を争う世界選手権とチャンスは2回ありました。まずは世界選手権。“勝てばパラリンピック”というイラン戦で1点差で敗れてしまって。僕自身のミスも響き、失点したことが敗因でした。
続くアジアパシフィック選手権では、現地に行ったにもかかわらず予選の1試合目でケガをしてしまって結局、その後の試合に出られませんでした。

リオ大会は開催国枠で出場できる東京大会の前だったので、なにがなんでも自力でパラリンピックに出場したかった。それに、当時キャプテンだったこともあり、チームに迷惑をかけてしまってすごく情けなかったです。すべてが終わってアジアパシフィック選手権のあった中国から帰ってくるときは「自分は何しに行ったんだろう」という気持ちばかりで、すぐには「東京大会に向けてがんばろう」と切り替えることなんてできませんでした。

川村 ブラインドサッカーもまだ一度もパラリンピックに出場できていません。まず思い出されるのは、2015年のリオ予選ですね。僕自身、まだ若かったですし、悔しい思いが残っています。

ただ、本当に苦しかったのは、ホスト国として出場する東京パラリンピック予選を兼ねたアジア選手権でしょうか。2019年のアジア選手権はタイで行われ、日本は3位だったのですが、準決勝で強力なライバルである中国と当たって、結果(2-2 PK 2-3)以上の差を感じました。

振り返ると、暑さと停電やスコールによる試合時間の遅れなど、難しい環境下の中で結果を出さないといけない状況で、すごくタフな大会でしたね。もちろん、アジアもかなりレベルが上がってきていて、簡単な試合はひとつもありません。“アジアチャンピオンとして東京パラリンピックを迎えたい”という気持ちで挑んだので、全力を出し切ったうえでの3位は本当に悔しいものでした。

2015年のリオ予選で敗退し、雨の中立ち尽くす川村

――東京パラリンピックの目標は?

信澤 ゴールボールの場合、女子はロンドンパラリンピックの金メダルなど輝かしい結果を残しています。そんな中で共に強化をしている自分たち男子が結果を出せていないのは悔しい思いが強いです。東京パラリンピックではなんとしても結果を出して、少しでも女子に追いつきたいし、いい位置から今後のパラリンピック出場につなげていきたいです。

パラリンピックに出場し、メダルを獲得することによって、これまで応援してくれた人、練習を手伝ってくれた人、自分をゴールボールに導いてくれた人……多くの人に恩返しをしたいと願っています。

川村 ブラインドサッカー日本代表の目標は、金メダル獲得です。今は東京パラリンピック開催を信じて、世界一になるための準備をして本番に挑みたいなと思います。僕たちは、高温多湿の中でいかにベストパフォーマンスを発揮して強度の高い戦いを勝ち切れるかを想定したシュミレーションキャンプもしていますし、連係プレーの精度を左右するコミュニケーションの強化にも時間をかけて取り組んできました。ぜひ僕たちのプレーに注目していただけたらと思います。

信澤 初出場で金メダルって一番かっこいいですよね。それを実現できるよう最後まで諦めずに、お互いがんばりましょう!

川村 はい、金メダルを目指して戦う姿勢を多くの方に見てもらえるようにがんばりましょう!

text by Asuka Senaga
photo by Parasapo