NHK連続テレビ小説『おちょやん』(総合 毎週月~土曜8:00~ほか ※土曜は1週間の振り返り)で、ヒロインの竹井千代を演じる杉咲花の演技に、共演陣から称賛の声が上がっている。杉咲のヒロイン決定時に、制作統括の櫻井壮一氏が「杉咲さんは演技力という意味では、この年代では突出した方」と賛辞を送っていたが、杉咲は見事、その期待に応えた。加えて杉咲は、周囲を巻き込める“女優力”も持ち合わせているようだ。

  • 『おちょやん』竹井千代役の杉咲花

『おちょやん』は、今なお上方女優の代名詞的存在で“大阪のお母さん”として親しまれてきた喜劇女優・浪花千栄子をモデルにしたフィクションのドラマ。大正から昭和の大阪を舞台に、貧しい家庭に生まれた竹井千代の波乱万丈な人生を描く。

杉咲が若手女優として頭角を現したのは、野田洋次郎の主演映画『トイレのピエタ』(15)だろう。本作でヒロインを演じ、第7回TAMA映画賞最優秀新進女優賞をはじめ、いろいろな新人賞に輝いた。

続いて、宮沢りえ主演映画『湯を沸かすほどの熱い愛』(16)で、第40回日本アカデミー賞の最優秀助演女優賞をはじめ、その年の助演女優賞や新人俳優賞を総なめにする。その後も、木村拓哉と共演した『無限の住人』(17)や、声優を務めた『メアリと魔女の花』(17)などの話題作で注目され、人気と実力を兼ね備えた “若手演技派女優”となっていく。

そして、ついに朝ドラ『おちょやん』のヒロインに抜てきされた。杉咲の朝ドラ出演は、2016年度前期の『とと姉ちゃん』以来となった。現場の声を聞くと、すでに座長としての安定感がハンパない。

喜劇界のプリンス・天海一平役の成田凌は、杉咲について「すばらしいです。誰が見ても文句のつけようがないんじゃないでしょうか。ただただ“杉咲花がすばらしい!”そういうことだと思います。彼女が生き生きとそこに存在していれば、それで十分かなと。きっと、みんなに愛してもらえると思います」と手放しで絶賛している。

また、肝の据わった演技が好評だった芝居茶屋の女将・岡田シズ役の篠原涼子も「杉咲花さんは常にいろいろなことを考えていらっしゃるなと感じます。すごく目力があって、お芝居に対しても真摯に向き合い、本当に千代になりきっていて、現場を引っ張っていってくれて助けてもらっている気がします」と、杉咲の頼もしさを口にする。

喜劇界のアドリブ王・須賀廼家千之助役で存在感を放っている星田英利は、杉咲とは初共演となった。

星田は「キラキラした女優さんっていっぱいいらっしゃるけど、キラキラよりホカホカっていうか、温かみを感じる女優さんのほうが、僕は個人的にすごいと思うんですよね。杉咲花さんは、まさにそんな感じです。芝居で絡んだとき心地良さがあるというか、温度を感じる方ですね。芯の奥底のほうでぶわ~って燃えてて、遠赤外線みたいに熱や、芯の強さみたいなものがすごく伝わってきます」と独自の表現で杉咲を称えている。

さらに「岡安」の先代の女将・岡田ハナ役で懐の深い演技を魅せた宮田圭子は「杉咲花さんは、もう関西ことばが完璧!」と、東京都出身ながらも見事な大阪弁を話す杉咲に驚きを隠せなかった様子。「私は神戸の人間ですが、それでも台本の言葉って大変なんです。方言指導の先生に注意されることもしょっちゅうです。なのに、杉咲さんが完璧なので、頭が下がります」と感嘆していたし、SNSでも、彼女の大阪弁を称賛する声が相次いで上がっていた。

朝ドラのヒロインという重責は相当なものだが、そこを見事にはねのけ、逆境のなかで生きていく千代をたくましく演じている杉咲。そんな彼女の真摯な姿勢が、おそらく共演者やスタッフ陣の士気も上げているに違いない。

篠原も「私自身も、シズとして千代ちゃんがやりづらい状況にならないようにと必死です。千代のまっすぐな感じは、杉咲さん自身と同じですよね。千代に対してはシズとして、そして、杉咲花ちゃんに対して私自身が、『支えてあげたい!』と思っていて、心から応援したい気持ちがあります」と言っていたが、杉咲の人柄を見て、共演者も自然と応援体制に入ってしまうようだ。

新年からは、道頓堀の奉公先を飛び出した千代が、新天地となる京都で、女優の道へ飛び込んでいく。もちろん、山あり谷ありのドラマが用意されているはず。逆境に置かれればより一層、生きるたくましさを発揮していくであろう千代。視聴者としても、奮闘していく千代を心から応援していきたい。

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