間取り好き科学コミュニケーターの高橋明子です。

今年もあとわずか…という現実を受け止めきれていませんが、皆さんはいかがでしょうか?


さて今回の内容は、12月3日に放送したニコニコ生放送の特番「わかんないよね新型コロナ 令和3年をどう迎えよう」の後半のおさらいです。


後半では、この冬に気になる対策や行動の話、ということで、換気・加湿、会食や帰省、家庭内での対策のレベル設定について扱いました。今回の記事の中では、補足も加えつつ、換気・加湿を中心に放送内容を振り返ります。

そもそも対策の目的は?

換気・加湿を含め、新型コロナウイルス感染症のための対策、そもそもどういう目的でやっているんでしたっけ?そこから確認からしていきましょう。

20201227_atakahashi_03.jpg

上の図のように新型コロナウイルスの感染経路は2つあります。全ての対策の目的は、この2つを絶ち(もしくは低減し)、感染を防ぐことです。具体的には、対策によって「他人の飛沫を体内になるべく入れない(手を経由する場合も含め)、自分の飛沫をまき散らさない」ようにする、ということですね。飛沫は新型コロナウイルスを含む可能性があるので、これを体内に入れなければ感染リスクを下げられます。春の第1波のときも今も、この目的は全く変わってはいません。

例えばよくいわれる「3密を避ける」対策も、この目的が達成できるよう具体的でわかりやすい行動に落とし込んだものといえます。

この目的がどれくらい達成できるのか、という視点で対策の効果を見ていきましょう。

換気の効果

まずは換気からですが、これがまた奥が深い…ぐるっと一周して、結局今までの対策とあまり変わらないのでは…というところに帰ってきますが、しばしお付き合いください。


換気とは、外の空気と室内の空気を入れ替え、室内の空気の汚染物質などを排出することです。このとき、ウイルスフリーの外気を取り込み、小さな飛沫が舞う室内の空気を外に出せるので、新型コロナウイルス感染症対策としても推奨されています。ちなみにほとんどのエアコンは空気を循環させるのみで、換気機能はありません。

なぜ飛沫は舞う?

さてこの飛沫ですが、咳やくしゃみ、発話の際に生じます。その大きさは平均数十マイクロメートルですが、0(計測不能)~2000マイクロメートル*と広くばらつきます。飛沫はその重さで落下しますが、「落下速度<上昇速度」のときに舞い続けます。実は室内には様々な方向の気流が存在し、例えば人の体温による上昇気流もあります。小さな飛沫の場合、こういった上昇気流でも上に運ばれ、なかなか落ちてこないことがあります。換気はこのような漂い続ける飛沫を部屋から追い出す効果があるといえます。

*Yang & Marr (2011) Dynamics of Airborne Influenza A Viruses Indoors and Dependence on Humidity. https://journals.plos.org/plosone/article?id=10.1371/journal.pone.0021481

20201227_atakahashi_04.PNG

私たちの体からの上昇気流など、室内の上方向の気流によって小さな飛沫が舞います。

機械換気と自然換気

換気というと窓を開けるイメージが強いですが、他にも換気の仕組みがあります。2003年の建築基準法の改正以降、シックハウス対策のため、機械換気システムが多くの建物で設置されています。機械換気とは、給気口・排気口のいずれか、または両方に設置された換気扇で、強制的に室内の空気を入れ替える仕組みのことです。例えば住居の場合、1人あたり毎時20m3以上の空気を入れ替えるスピードで換気するよう定められています。つまりすでに私たちは換気していた!ということになります(正しく使えていれば…給気・排気口がゴミなどでふさがっていたりしないか確認してみてくださいね)。



またお店やオフィスなどについても同様で、機械換気は常に実施されています。厚生労働省の資料*では、これらの施設では換気の基準を満たしていれば、感染症対策の観点で「換気が悪い空間には当てはまらない」ということになっています(まどろっこしい言い回しですが…)。

*建築物衛生法が適用される規模の大きい建物では、1人当たり毎時30m3(炭酸ガス濃度からの換算値)以上の換気が求められている。同法の適用を受けない建物においても、感染症対策として1人当たり1時間で30m3以上の換気が推奨されている。

【厚生労働省の資料 https://www.mhlw.go.jp/content/10906000/000698849.pdf 】



とはいえ、間取りや給気・排気口の配置・メンテナンス状況、人数などによっては空気のよどみなどが生じ、機械換気だけでは空気の入れ替えが不十分になることもあります。そのような場合には、窓開けなどによる自然換気で換気量をアップできます。もし自然換気をする場合には、機械換気の効果を下げないように、家全体の対角の窓を開けるなどの工夫をしてみてください。窓の開け方によっては、外気が最短経路で外に出ていってしまい、逆に室内の空気が滞留してしまうことがある(排気の換気扇のすぐとなりの窓を開ける場合など)ので、そこはご注意ください。

そもそも換気という対策、いつ活用すべきか?

「じゃあさっそく自然換気を!」の前にひとつ考えておきたいのが、換気のしどころ。やるべきは、他人、特に普段は会わない人の飛沫が舞い続ける環境においてです。

例えば一人暮らしの場合、コロナ対策のためだけなら不要です。同居家族がいる家庭の場合も、基本いつものメンバーなので、何らかの理由で感染対策レベルを引き上げる必要があるとき以外は、あまり重要ではないかもしれません。もちろん家族が濃厚接触者もしくは感染者になった、体調が悪い、といった場合は、他の家庭内での感染対策と併せて換気をしてくださいね!コロナ対策としてやるなら、他のいろいろな対策とまとめて実施、といったところでしょうか(寒さ対策も忘れずに)。

では換気が威力を発揮するのはどんな環境・状況なのでしょうか?それは、いろいろな場所から人が集まってくる、マスクを外す、会話などで飛沫を飛ばす、これらの条件がより多く重なる、会食の環境などがこれに当たります。もし換気が悪い場所で会食をすると、このようになります(ただしこの飲食店は換気以外にもいろいろ別の問題もありそうですが…よく見るとつくねがテーブルに直置きに…)。



20201227_atakahashi_05.PNG

見えますか…空間には小さな飛沫が舞い続けます…(*イメージ図です)。もう換気とか新型コロナの話以前に、大小含めこれまでこんなに飛沫を飛ばして会食をしていたのかもしれないと思うと何だか憂鬱です…。



さて、一番確実な対策は「会食に行かない」なのですが、いろいろな事情で行かないといけない(もしくはどうしても行きたい)というときもあるかもしれません。せっかくなので、もし行くならどういう対策を取り得るのか、という話を進めていきます。

上の絵を見て「どうせ行くなら換気のいい場所がいい」と感じた方が多いと思いますが、換気状況って見てもなかなかわかりませんよね。あからさまに煙いとか、オープンエアとか極端でない限り、判断が難しい…。

そういう場合は、その会食の終わる時間をあらかじめ決めておいて、長居を避けるのもひとつの手かもしれません。仮に換気が悪く飛沫が舞い続ける状況であっても、時間を短くすることで曝露量を減らすことができ、感染リスク低減につなげられるかもしれません。

…なんて理屈の話をしましたが、この「終わる時間を決めておく」という行動、感染対策上大きな効果がもれなくついてくるので、ぜひおすすめします。それはこの図のような状況になるのを避けられる、ということです。

20201227_atakahashi_06.PNG

時刻まで読んでいただき、ありがとうございます。卓上にあるのは唐揚げとシメのお茶漬け、枝豆の殻です。



「ソーシャルディスタンス?何それ?」状態ですね。

みなさん、終了時間を設定したくなりましたか?帰宅も記憶もおぼつかない状態になると、感染対策どころではなくなります。ぜひ、宴が始まる“前”に決めてくださいね。

他にも、換気状況はわからないにせよ、話をするときはマスクやハンカチ、扇子などで口元を覆い、飛ぶ飛沫の量を少しでも減らす、という対策も番組中で紹介しました。

基本的に会話のときにはマスク着用がよいのですが、会食の場合は会話と食事を交互にすることも多いです。着脱が上手にできる方はマスクでもよいでしょうし、面倒・苦手な方はハンカチや扇子などが使いやすいかもしれません。完璧ではないけれど、楽に継続できるのも大事、ということですね。



20201227_atakahashi_07.PNG

会話のときは口元を覆えると飛び散る飛沫を減らせる。そしてたしかに焼き鳥(鶏モモのタレ)を描きました。この画力で同定できるみなさんの観察力がすごい。



会食場面での具体的な対策については、堀さんが監修された港区のリーフレットがわかりやすいので、家庭内感染対策と併せてぜひ覗いてみてください。

【会食や家庭内での感染対策リーフレット
https://www.city.minato.tokyo.jp/kouhou/yobou.html#a01】



というわけで長々と換気(と会食)の話をしましたが、まとめると、機械換気システムをしっかり活用しよう、自宅以外の場所の換気状況は基本わからないので、会食などでマスクを外したりガードが下がる状況では、別の対策も組み合わせよう、ということでした。

加湿の効果

換気にまつわる話の次は加湿です。こちらも感染対策として推奨されていますが、2つの効果が期待できそうです。

まず一つ目、「舞う飛沫を増やさない」効果から見ていきましょう。

地域にもよりますが、冬の乾燥した空気では飛沫の水分がすぐに蒸発し、飛沫サイズが小さくなります。そうすると室内で舞い続ける飛沫の数が増えてしまいます。乾燥した空気を加湿することで、蒸発を抑制し、舞う飛沫を増やさない効果が期待できます。

そして二つ目は「喉などの粘膜を保護する」効果です。喉の粘膜にひっかかったウイルスや細菌などの異物は、粘膜の下の繊毛運動で体外に運ばれて追い出されますが、乾燥で喉の粘膜の層が薄くなるとうまくいかなくなります。一般的に加湿は、粘膜を保護し異物の排除を促す効果があると考えられています。




20201227_atakahashi_08.PNG

湿度が高い方が異物は排除しやすい。



というわけで、飛沫対策として効果はありそうな加湿ですが、いざやるとなると気を付けないといけないことがあります。湿度を上げるのに加湿器がよく使われますが、使う際には必ずメンテナンスをしてください!

タンクの水の交換を忘れてしまって、カビ祭りになってしまうケース、よく見かけませんか?加湿器が原因で、アスペルギルス症(カビが肺などで炎症を起こす感染症)になってしまうこともあるので、メンテナンスをさぼったときのリスクが大きい対策とも言えます。導入の際は、メンテナンスし続けられるかどうかも含めご検討ください。

実は加湿の効果、特に「喉などの粘膜を保護する」効果を狙うなら、比較的手軽な方法があります。部屋全体を加湿しなくても喉さえ加湿できればいいので、マスクを付けたり、こまめに水分補給をする、といった方法です。



対策はその効果だけではなく、コストやリスクも含めてやるかどうか決める必要があります。個々人でコストやリスクの大きさが変わることも多いので、自分にあった対策を選べるとよいですね。

そして一人ひとり選ぶ対策が変わるかもしれないということは、自分と同じ対策を全ての人に要求するのは意味がない、ともいえます。ギスギスしやすい空気はありますが、自分ができることをコツコツと対策して、穏やかに年末年始を過ごせるようにしたいですね。

他にも番組では家庭内での対策のレベルについての話題なども扱いました。今回の放送の前半のおさらいブログの末尾に各内容の放送時刻を載せてありますので、気になる方はぜひニコニコ生放送でご確認ください!どなたでも過去の放送が視聴できます。



そして!次回の放送予告です。2021年1月3日15時から1時間の特番「わかんないよね新型コロナ この冬、家でどう過ごそう」をやります!
https://live2.nicovideo.jp/watch/lv329684418

12月3日の回では扱えなかった、家庭内での具体的な感染対策の話がメインです。ファシリテーターは科学コミュニケーター伊達(おむつマイスター)。皆さんのご視聴お待ちしております!



Author
執筆: 髙橋 明子(日本科学未来館 科学コミュニケーター)
子供のころから生き物が好きで研究に没頭し、色々な場所で色々な対象相手に研究をしていました。前職では宮崎県の幸島でニホンザルを追いかけていましたが、社会の中で研究はどうあるべきなのかを考えるため、未来館で勤務しています。今興味があるのは、科学の使い手である人間の認知や行動。物件の間取り図をながめるのが好きです。