新エネルギー・産業技術総合機構(NEDO)の技術戦略研究センター(TSC)は2020年12月17日、「ウェルビーイング社会の実現に貢献するマテリアル技術」と題した近未来社会を目指す材料開発の姿勢とその意味合いを解説する記者会見を開催した。

NEDOが進める研究開発プロジェクトの技術開発の方向性などを議論し指針を出す役目を持つ技術戦略研究センターは、日本政府が目指す科学技術・イノベーション基本計画では「人類のWell-being(ウェルビーイング)の最大化は安全・安心の確保と同時に日本でのSociety5.0を実現する上で重要と指摘している。そして、これを支える基盤技術の1つとしてマテリアル技術が挙げられている」と、今回の材料開発の未来像を示す背景を説明する。

今回、公表した「ウェルビーイング社会の実現に貢献するマテリアル技術」では「ウェルビーイングを促進するためのマテリアル技術とレジリエンス(回復力)を強化するマテリアル技術の2つが今後目指すべき方向性になる」と、TSCのナノテクノロジー・材料ユニットは解説する。

「ウェルビーイングを促進するマテリアル技術」では、現在の新型コロナウイルス感染症(COVID-19)対策を図るwithコロナ・ポストコロナの社会では「さまざまなコミュニケーションを可能にするデジタルテクノロジーが一層重要になり、これを実現するマテリアル技術が期待されるようになる」と指摘する。例えば、テレワークを支えるWeb会議などでは感情や共感などを共有するマテリアル技術が求められるようになると予測する。「人の感性・感覚共有化」を担う協創・協働感や、「人の移動に依存しない」デジタル伝送化・遠隔化や、通信インフラ基盤の拡充を実現する高速・大容量・セキュリティなどを実現するマテリアル技術が求められると指摘する。言い換えると、「人体や感覚情報に関係するマテリアル技術が重要になる」と解説する。

人間の身体の動きをモニタリングしたり、手の指の動きを可視化するなどの技術を実現するマテリアル技術の先駆的な研究開発も現在、進行中だという。そして、人体・感覚情報の活用によって実現が期待される「人体・感覚情報マルチモーダルコミュニケーションを支えるマテリアル技術」が進むと、「ウェルビーイング視点での人体・感覚情報の活用によるサービスなどが実現する」と予測する。

ナノテクノロジー・材料ユニットは「ウェルビーイング将来像を構成するマテリアル・デバイスの基盤技術開発事例集」をまとめ、近未来の将来像を示している。

こうしたウェルビーイング志向の個人や組織に向けてマテリアル製造業(材料メーカー)自身が、ウェルビーイング志向を強めていくと予測している。

  • ウェルビーイング

    マテリアル製造業自身が、ウェルビーイング志向を強めていくと予測 (NEDO技術戦略研究センターの資料から引用)