日本ヒューレット・パッカードは12月15日、オンラインで2021年度の事業戦略について記者説明会を開いた。説明会には今年9月1日に同社の代表取締役 社長執行役員に就任した望月弘一氏が出席した。

HPEが目指す“Edge to Cloud Platform as a service”

まず、はじめに同氏は昨年に米HPE CEOのAntonio Neri(アントニオ・ネリ)氏が発表した2022年までにすべてのポートフォリオをas a serviceで提供を可能にしていくことに触れ「キーワードは『Edge Centric』『Data Driven』『Cloud Enabled』の3つとなり、これらの領域にまたがるテクノロジーすべてをas a serviceで提供する。つまり“Edge to Cloud Platform as a service”として提供していく」と述べた。

  • 日本ヒューレット・パッカード 代表取締役 社長執行役員の望月弘一氏

    日本ヒューレット・パッカード 代表取締役 社長執行役員の望月弘一氏

  • Edge to Cloud Platform as a serviceの概要

    Edge to Cloud Platform as a serviceの概要

今後、2025年には550億個のデバイスがネットワークに接続され、リモート環境で働く労働人口は2020年以降に45%に達することから、DXの活用シーンが増えてくることが予測されている。リアルタイムコラボレーションやスマートファクトリー、自動運転、遠隔医療、リモート学習といった新しいデジタルエクスペリエンスに対して、エッジからハイブリッドクラウドにわたるオーケストレーションと、安全で自動化・自立化されたテクノロジーなど、シームレスでセキュアなコネクティビティを必要とする新しいITデマンドが期待されているという。

また、5GやIoTなどテクノロジーの進歩により、データ発生ポイントおよびデータボリュームが飛躍的に拡大することが見込まれ、2025年には2020年比5倍の3.6ZB(ゼタバイト)への増加が予想されているが、現状において企業が保有しているデータのうち、活用しているのは3分の1にとどまっており、残り3分の2のデータから洞察を導く環境整備が重要になるとしている。

さらに、現在ではオンプレミス、プライベートクラウド、パブリッククラウドとハイブリッドクラウドを使用する企業は90%に達しているが、クラウド間の相互の互換性が乏しいことから、顧客が求める最適なインフラを自由に選択できることが肝要だという。

そして、昨今ではオンプレミスの環境でもas a serviceとして従量課金ベースでの利用ニーズが年々高まっている。こうした現状を踏まえ、望月氏は「エッジコンピューティング、データ活用基盤の整備、ハイブリッドクラウド基盤の最適な運用管理、コンサンプションモデルに対するニーズの高まりを受け、as a serviceで提供していくという方針・戦略に至っている」と話す。

日本の事業方針

同氏はIDCの調査結果を引き合いに出し、2020年における国内のIT市場は新型コロナウイルスにより経済影響は甚大なものとなっているが、ITの重要性が再認識され、市場は徐々に回復傾向となっているという。

各産業別ではDXマインドが醸成され、デジタライゼーションを中心に投資のプライオリティに変化が生じ、投資分野としてはエッジ、クラウドへの投資はそれぞれ年間成長率が二桁%で推移し、エッジインフラ市場は2025年に1000億円規模に拡大することが見込まれている。

国内の環境を踏まえたIT投資の動向としては「5G/IoT」「Digital Workplace」「Data Management & AI」「Hybrid Cloud」の4つの領域を挙げており、同社も注力していく方針を示している。

  • IT投資の動向

    IT投資の動向

2020年は多くの企業においてDXが加速しているものの、実態としては部門ごとに分散し、独自のインフラで独自のアプリケーションを稼働させるなど、バラバラの状態だと同氏は指摘しており、いかにシームレスに最適化しつつ連携させていくかが重要になるという。

こうした状況に対する同社の強み・特徴として、望月氏は「エッジからクラウドまで、すべての環境に横断的なポートフォリオを備えるとともに、あらゆる環境をクラウドに変革することが可能だ。そして、エッジコンピューティング、データベースなどを従量課金モデルのオンプレミスで利用可能にする統合型ITソリューションであるHPE GreenLakeにより、他社を含めた製品をコンサンプションベースで提供できることだ」と胸を張る。

  • DXのための統合的なプラットフォームを提供するという

    DXのための統合的なプラットフォームを提供するという

4つの領域に対するアプローチ

5G/IoTではエッジコンピューティング、ローカル5G向けの専用コンピューティングプラットフォーム「HPE Edgeline」、IT/OTネットワークに接続された全デバイスをベンダー問わずに自動的に検出し、認証と可視化を提供する「Arube ClearPass / ClearPass Device Insight」、5G向けソフトウェアスタック「5G Core Stack」、エッジ向けアプリ配信を行う「Edge Orchestrator」を主力製品に据え、5G/IoTを支えるソリューションを提供する。

  • 5G/IoTへのアプローチ

    5G/IoTへのアプローチ

Digital Workplaceに関しては、拠点・在宅からのシームレスなアクセスを提供する「Aruba Unifie Infrastructure/SD-WAN」、Wi-Fi無線環境や有線LAN、WANまでを含めたAIを用いた統合運用、ゼロトラストセキュリティを実現する「Aruba Edge Service Platform(ESP)」、デバイスからクラウドまでの総合テレワークインフラを導入支援する「HPE Digital Worlplace Consulting」により、テレワークインフラの包括的なソリューションを提供。

  • Digital Workplaceへのアプローチ

    Digital Workplaceへのアプローチ

Data Management & AIについては、組織横断でのデータ活用を促進するデータ分析/AIのためのプラットフォーム「HPE Ezmeral」、マルチクラウドで利用可能なクラウドストレージサービス「HPE Cloud Volumes」、AIに必要なデータを高速に処理するエッジやオンプレミス向けのコンピューティング基盤「HPE AI Computing Platform」、データストアの最適化・導入支援サービス「HPE Right Mix Data Store」などの製品で、全社的なDX推進を統合データ基盤の実現で加速させるという。

  • Data Management & AIへのアプローチ

    Data Management & AIへのアプローチ

Hybrid Cloudでは、リソースの可視化とシステム配備、運用サービスをハイブリッドクラウド環境にまたがり提供する「HPE GreenLake Cloud Services」、ハイパーコンバージドインフラ「HPE HCI Solution」、AI活用の自律的なインフラ監視サービス「HPE InfoSight」、ハイブリッドクラウド化の全体計画を立案し、クラウド活用のPoV(価値の検証)を通じて実行計画を提示する「HPE Right Mix Advisor」で、既存インフラをクラウド運用に変革することでハイブリッド化を促進していく。

  • Hybrid Cloudへのアプローチ

    Hybrid Cloudへのアプローチ

同社では、4つの領域にフォーカスするためDX推進をテーマに顧客の業務に即した付加価値の高い提案を行うため、DXプラットフォーム推進チームを新設したほか、サーバセントリックなパートナーシップに加え、ソリューションセントリック、ビジネスセントリックなパートナーシップにより、エコシステムを強化していく。

また、コンサルとサポートを統合したグローバル組織「Pointnext Technology Service」により、アセスメントからプロジェクト管理、運用支援、サポートまでエンドツーエンドのサービスをHPE GreenLakeにより提供していく考えだ。

最後に同氏は「DXプラットフォームを直販することもあれば、パートナーと共同で提供するケースもあり、幅広い顧客に対し提供者として貢献することでDXの加速に貢献していきたい」と強調していた。