「旧車は、その仕様やディテールを仕上げた人の心意気が伝わってくる。それを未来に残したい」|アメリカ発!ニッポン旧車の楽しみ方|3000kmの距離も何のその。クルマとネットが取り持つ縁 Vol.3

【3000kmの距離も何のその。クルマとネットが取り持つ縁 Vol.3】

最後のレストア・プロジェクト  最初のメールからわずか半年で、お互いにとって理想の伴侶を得て、ますます拍車のかかったダットサンファンの2人。現在のコレクションも多様だ。ガレージのリフトには、グレッグさんが「最初の家内と死別したあとにナンパ用に買った」という、ダットサン・ロードスターがあった。

「あのころは、フェイスブックにクルマの写真ばかり載せてさ、オレは『クルマ好きなんだ』って。それで1年ほど再婚相手を探したんだけど、結局はね、オレの趣味を理解してくれない人とはもう、会ってみることすらやめよう、ってそう思ったんだ。出会いのチャンスが減るのはもちろんわかってたさ。でもそのほうが気が楽だからね」

 結局そのロードスターは、再婚相手探しの役には立たなかったのだが、その頃はまだZ一辺倒だったベッキーさんが運転したときのエピソードが面白い。「つまらないクルマね」と運転の感想を述べたベッキーさんに、グレッグさんは最高のアドバイスを言い放った。「壊すつもりで運転してみなよ」。すると、戻ってきたベッキーさんは興奮した表情で、「面白い!」。ベッキーさんがダットサンの新たな一面を発見した瞬間だった。

 こうして2人は互いに切磋琢磨しながらダットサンファンとしてさらに精進している。ただ、ベッキーさんは現在看護師の資格を取るべく勉強中。しばらくはクルマいじりはお預けだ。

 240Z大好きのベッキーさんに対して、グレッグさんのパッションはさらに古いダットサンにある。「最大でおそらくこれが最後になるはず」と、グレッグさんがいうレストアプロジェクトが、間もなく始まる。63年式NL320スポーツピックアップだ。

 このクルマはカリフォルニアの農場で、83年まで登録されないまま使われていた個体だそうだ。アリゾナ州で登録する際には、DMV(陸運局)のデータベースに該当車種がなかったため、グレッグさんは必死になって検査官に事情を説明をした。するとその検査官は「そうだなぁ、古い日本車の専門家にでも証明書を書いてもらわなきゃダメだな」といった。すかさずグレッグさんは「え? でも私がその専門家なんですよ!」と返したが、もちろんすぐには信じてもらえなかったそうだ。

 旧車は個体それぞれが微妙に違っていて、その仕様やディテールを仕上げた人の心意気が伝わってくる。それを将来に残していきたい、というグレッグさん。そしてコレクションの1台1台にはベッキーさんとの思い出もつまっている。日本人の持つモノ作りの心意気を、50年も前のクルマを通して感じてくれている人が世界にはいるのだ。そしてその広い世界のどこかで、ダットサンはこれからも、人と人の仲を、男と女の愛を、取り持っていくことだろう。

これがグレッグさんのレストア魂を刺激してやまない、63年式NL320ダットサン1200スポーツピックアップなど【写真6枚】