「その存在自体が血を超えていく…」映画監督・河瀬直美×小説家・辻村深月が「特別養子縁組」について考える
ミュージシャン、デザイナー、作家、俳優、職人など、異なるフィールドを舞台に活躍する“ふたり”が語らうTOKYO FMの番組「三井ホーム presents キュレーターズ~マイスタイル×ユアスタイル~」。11月6日(金)放送ゲストは、映画監督・河瀬直美さんと、小説家・辻村深月さん。現在公開中の映画「朝が来る」は、辻村さんの小説を河瀬監督が実写化した作品です。ここでは、同作のテーマでもある「特別養子縁組」について考えました。


河瀬直美さん、辻村深月さん



今回のゲストは、リアリティを追求するスタイルで世界中の映画祭で高い評価を受けている映画監督・河瀬直美さんと、直木賞・本屋大賞受賞のベストセラー作家・辻村深月さん。辻村さんの29万部を超えるヒューマンミステリー小説「朝が来る」に共鳴した河瀬監督が映画化を実現しました。

実の子を持てなかった夫婦と、実の子を育てることができなかった14歳の少女を繋ぐ「特別養子縁組」によって、新たに芽生える家族の絆と葛藤を描いた本作。「特別養子縁組」とは、生みの親との法的な親子関係を解消し、実の子と同じ親子関係を結ぶ制度。日本では、ヨーロッパなどと比べてまだ成立する件数も少なく、広く知られていないのが現状です。

◆特別養子縁組を知る

河瀬:日本は養子縁組に関して寛容ではないと言うか、“血の繋がりのほうが重要”というようなところがあるけど、特別養子縁組については知っていた?

辻村:小説を書くときには、だいたいが自分のなかから出てきたテーマについて書くんですけど、「朝が来る」だけは、直木賞を受賞した直後ぐらいに編集の方が「辻村さんに書いてほしいテーマがある」と言って持ってきてくれたテーマだったんです。

不妊治療については、メディアでも言われるようになってきた時期でした。ちょうどその頃、卵子の老化についての特集番組が組まれたり、普通の女性誌でも体の特集が増えてきたりしていたので、“自分もいつかは書くかもしれない”と思っていたら、編集者から「夫婦が養子をもらう話を……」と。

河瀬さんがおっしゃったように、日本で暮らしていると養子の話をあまり聞かないと言うか、そのときは考えたことがなかったので「調べてもいいですか」と言って調べ始めました。自分は血の繋がりが絶対だとは思わないし、血の繋がりがあるからこそお互いに甘えてしまったり、相手の承諾を得なくても、親が決めたことに従うことが当たり前だと思ってしまったり、血の悪い部分というか、甘えの部分について、ずっと戦うような気持ちで小説を書いてきたところもあったので抵抗はなく、先入観も特別に持っていないと思って調べ始めました。

でも、調べていくうちに、私が思っていたことと実際はすごく違うことに気づいて。例えば、養子で迎えたことは極力隠すことだと思っていたんです。でも、特別養子縁組を斡旋する団体の方たちは、仲介をするときに「真実告知」といって、子どもが小さいうちに伝えていくことを推奨されていたり。また、その子が養子であることは、ご近所の人や幼稚園の先生など周りもみんな知っていて、子どもにも“もう1人、お腹で育ててくれたお母さんがいるんだよ”と伝えている家庭がすごく多いことを知って驚いたんです。

河瀬:例えば、子どもは「どちらかを選ぶ」って言われると、何かが減る感覚になるけど、「もう1人お母さんがいるんだよ」って言われたら、「僕には・私には母ちゃんが2人いるんだね! ラッキー」みたいになる。たくさんの人に育まれていると思うと、みんなすごく穏やかになる。撮影にあたって(特別養子縁組の家族を)何組も見てきたんですけど、すごく仲が良い。

ビックリしたのが、顔も行動も似てくる感じがある。私が取材して、映画のなかにも登場してもらってる方は、おじいちゃん、おばあちゃんも認めていて(特別養子縁組で迎えた子どもを)“我が太陽”と言っているの。その存在自体が血・血縁を超えていく。きっと血の繋がりだけではない、何かもっと特別な日々の時間があるんだろうなと、あらためて思いました。

映画「朝が来る」は全国ロードショー中です。

▶▶番組Webサイトでは、放送内容をPodcastで聴くことができます。ぜひお聴きください!

次回12月4日(金)放送のゲストは、浜島直子さん(モデル)×大島美幸さん(お笑い芸人)。どうぞお楽しみに!

<番組概要>
番組名:三井ホーム presents キュレーターズ~マイスタイル×ユアスタイル~
放送日時:毎週金曜 17:00~17:25
ナビゲーター:田中麗奈
番組Webサイト:https://www.tfm.co.jp/curators/