SpaceBDは11月30日、記者会見を開催し、固体燃料ロケット「イプシロン」への衛星インテグレーション業務の受注と新たな経営体制を発表した。

SpaceBDは2017年設立のベンチャー企業で、「宇宙に夢と商いを」とのスローガンを掲げ、人工衛星打ち上げサービスを含む、ローンチサービス事業と宇宙機器調達販売事業、教育事業を展開してきた。

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    宇宙への輸送手段とSpaceBDの立ち位置

取り扱いロケットの種類を増やすことでサービスを拡充

2020年度(8月期末)の同社の売り上げは2.9憶円。このうちの8~9割が人工衛星打ち上げサービスからの売り上げとなっている。同サービスは、人工衛星の打ち上げを希望する企業に対して、時期や条件の合う打ち上げを行うロケットとのマッチングや、打ち上げる機器に関する審査の部分でのサポートを行うとしている。

同社は、宇宙航空研究開発機構(JAXA)より認められた公式な打ち上げサービスプロバイダー事業者としてこれまで、国際宇宙ステーション(ISS)の日本実験棟「きぼう」からの衛星放出サービス、きぼう曝露部プラットフォーム利用サービス、H-IIA/H3ロケットを活用した衛星相乗り打ち上げサービス、新型宇宙ステーション補給船「HTV-X」初号機を活用した衛星打ち上げサービスを提供してきており、2020年7月に同社が発表した北海道大学・東北大学・ミャンマー航空宇宙技術大学による共同プロジェクトの委託など、これまでに計52機の衛星打上げプロジェクトを受注し、うち3機の打ち上げを完了している。また、今回発表した「イプシロン」へのサービス提供により、日本が現有する衛星打ち上げ手段すべてに参画する唯一の民間事業者になるという。

こうした直接宇宙を舞台にするサービスのほか、同社は前身で教育事業を手掛けていた事もあり、宇宙飛行士の能力定義に着目し、JAXAとZ会と協業する形で全年齢を対象にした教育プログラムの開発も進めている。

目指すは宇宙に関わるすべてを扱う総合商社

同社は今回のイプシロン向けサービスの発表に併せて、これまで人工衛星打ち上げサービスを管轄するローンチサービス事業本部で副本部長を務めていた金澤誠氏がCOOに、デジタルアーツの取締役兼管理部長を務めていた赤澤栄信氏がCFOにそれぞれ新たに就任する新人事も発表した。

代表取締役社長の永崎将利氏は「宇宙の総合商社として、技術力を強みに、人工衛星打ち上げサービスだけでなく他の事業の拡大を目指し邁進していくことを目指した体制」と、今回の人事の狙いを説明。イプシロンへの衛星搭載という新サービスに、新たな経営体制を加えることで、事業の拡大を加速していきたいという意気込みを見せた。

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    左から、新COO兼事業開発部長の金澤誠氏、代表取締役社長の永崎将利氏、新CFO兼コーポレート部長の赤沢栄信氏