こんにちは、科学コミュニケーターの上田羊介です。
今日は日常的に抱く素朴な疑問を地図で見てみませんか?というお誘いです。

例えば新たな町に引っ越したとき、前住んでいた町よりも暑いなぁと思ったこと、ありませんか。そんな疑問も地図で見てみると思いもよらないつながりが見えてくるかもしれません。

地図で見るってどういうこと?

いきなり地図で見てみてくださいと言われても、そもそも地図で見るとはどういうこと?って疑問を与えてしまったかもしれません。ここで私が言う地図で見るというのは、次のようなことです。

「地図に情報を載せる。」

もしかしたら皆さんも日常的に行っているかもしれません。スマフォで現在位置や目的地を調べることありますよね。ピンを自分の今いる位置に立てるのは、自分の位置情報を地図に載せていると言えます。

OpenStreetMapで未来館の位置を示した地図のスクリーンショット

日本科学未来館の位置情報をOpenStreetMap(https://www.openstreetmap.org/)という地図に載せたものが上図です。
地図上に記載のあるライセンスはこちらから https://www.openstreetmap.org/copyright

毎日見る天気予報も晴れマークや雨マークという情報を地図に載せているという見方もできますね。

疑問を地図で見るってどういうこと?

ここでは実際に私が過去地図を使って疑問を解消した例を紹介します。
「新潟市の冬空は関西よりも曇りがちな気がする。なぜだろう?」
これは関西で生まれ育った私が新潟市に住んだ時に感じた疑問です。冬場は太陽が姿を見せず曇りがちな空模様が多かった記憶があります。地図を見ることでこの疑問を解決するには次の手順が必要です。

  1. “新潟市の冬空は関西よりも曇りがち”であることが普遍的事実であるかを地図に可視化して確かめる
  2. (1が事実であるなら)地図を見ながら“新潟市の冬空は関西よりも曇りがち”な理由を探る

自分が疑問に思ったことも、ただの勘違いやたまたま起きた現象だった可能性もあるかと思います(少なくとも上田はたまにあります)。まずは自分の疑問が普遍的な事実かどうかを確かめる必要があります。そしてその次に疑問の理由を考えるという手順になっています。ではこの2つの手順に従って疑問を考えてみましょう。

地図に可視化して事実を確認する

今回利用するのは「Geo-Palette(ジオパレット)」(https://geopalette.jst.go.jp/)という未来館のコンテンツです。これを使えば自分でオリジナルの地図を作ることができます。収録されている様々な情報を地図に載せることで興味のまま可視化することができるんです。またジオパレットはオンラインで利用することや作った地図の共有も可能です。
注意)2020年11月現在、ジオパレットは展示を休止しております。また2020年12月1日をもってオンラインでの地図作成機能を終了致します。詳しくは次のリンクからご確認ください。

Geo-Palette(ジオ・パレット)におけるオンラインでの「つくる」機能終了のお知らせ
https://www.miraikan.jst.go.jp/news/general/202011061637.html

それでは早速日本の冬場の曇りの日について地図で可視化してみましょう。ジオパレットで利用できるデータ一覧の中に「1月に雲に覆われている頻度」というものがありました。この情報を衛星写真の上に載せてみると…。

衛星画像と1月に雲に覆われている頻度のデータを載せた地図(ジオパレットで作成)

一目瞭然ですね…!
赤い色が濃くなるほど雲に覆われている頻度が高くなります。つまり新潟を含む日本海側の地域では、1月の空は雲に覆われている頻度が高いという見方ができます。これで「新潟市の冬空は関西よりも曇りがちな気がする」という私の経験は、気のせいではなく、たまたまでもなく、普遍的な事実であると見なせそうです(きっちりと客観的な事実であると断言するためには統計的な手続きが必要なためこのような遠回しな言い方をしています)。では次はその事実はどうして起こるのか?という理由を考えてみましょう。

新潟市の冬空が曇りがちな理由を考える

皆さんと一緒にこの理由を考えたいところですが、今回は調べてみた結果を報告します。
この疑問を解決する鍵となるのは季節風(モンスーン)の存在です。冬場はユーラシア大陸から日本へ冷たく乾いた季節風がやってきます。この季節風は日本海を通ってきます。日本海の水温の方が季節風よりも温度が高く、その上を通過することによって、水蒸気を含んだ湿った空気になります。海水面に近い空気が暖かく上に行くので、日本海側で雲が発生しやすくなります。
※日本海側で雪が多い原因にも繫がるのですが、本題から離れるため今回は簡単な説明のみとさせてください。

季節風により新潟市などの日本海側の都市が曇りやすくなる理由に関するイメージ図

ジオパレットには1月の地表面温度というデータもありました。こちらの図では赤くなるほど地表面が暖かく、青いほど地表面が寒いです。この図を見ながらユーラシア大陸からやってくる季節風のことを考えてみてください。寒い季節風が温かい日本海を通ることが曇り空の原因ですと言葉だけで言われるよりも、「なるほどね」と思う気持ちが強くなりませんか?

衛星画像と1月の地表面温度のデータを載せた地図(ジオパレットで作成)

地図で見ることで、日本の都市の気候に日本海やユーラシア大陸の環境が影響を与えていることが意識しやすくなりますよね。つまり今回は日本の都市や日本海、ユーラシア大陸のつながりを見つけることができました。雲がどこでどのようにできているかを話題にした科学コミュニケーターブログもあるので、さらに気になった人は合わせてお読みください。

雲が生まれているのはどこらへん? ~宇宙から見た地球と人のつながり~
https://blog.miraikan.jst.go.jp/articles/20200731post-350.html

地図を見ながらだと新潟市の冬空が曇りがちな原因をより深い納得感と共に知ることができたのではないでしょうか。地図を眺めてみると視界が開けるような体験はとてもワクワクしますね。

地図を見てみるとつながりが見えてくる

今回はジオパレットを使って疑問を地図で見てみました。1月で雲が空を覆っている頻度という情報を載せた地図を見ながら、関西と新潟市を比較することで当初の疑問が自分の勘違いでないことを確認できました。そして季節風を起因とする雲の発生過程を考えることで、ユーラシア大陸や日本海などの普段の生活からは遠い場所の状況が原因であることがわかり、徐々につながりが見えてきました。今回のように地図で見てみることで思わぬつながりが見えてくるかもしれません。

他にも最近はWEB上で地図を確認できるサービスがいくつかあります。「Web地図」や「Webマップ」で検索してみてください。

データを載せる前の白地図(ジオパレットで作成)

この図はジオパレットのデータを載せる前の白地図です。この白地図にどんな情報を載せるかはあなた次第です。



Author
執筆: 上田 羊介(日本科学未来館 科学コミュニケーター)
今も昔も動物好き、最近は最新のガジェット体験も好きです。大学では農村に出没するニホンザルと人の関係について研究しておりました。卒業後はシンクタンク企業での業務経験を経て、科学技術の社会実装に関する対話や、科学技術でさまざまな現象を知る楽しさの共有に取り組める人になりたいという思いから未来館へ。現象が地図化されたものをみてワクワクする人間です。