人工多能性幹細胞(iPS細胞)の技術を使い、ヒトの心臓組織の機能を高感度に評価するデバイスを開発した、と理化学研究所生命機能科学研究センターのグループが発表した。心臓病に対する再生医療や創薬などへの活用が期待されるという。

iPS細胞由来の心筋細胞を使い、再生医療や創薬を目指す研究が進んでいる。ただ心臓組織は血管細胞や繊維芽細胞などさまざまな細胞が立体的に組み合わさっており、心筋細胞だけでは本物の心臓を再現したことにはならない。研究グループは2017年、ヒトの心臓の多様な細胞をiPS細胞から作り、シート状の人工心臓組織にまとめることに成功。ただ、これを移植や創薬に利用するには、血液を送り出すポンプとしての人工心臓の機能を確かめる仕組みが必要となる。

そこで研究グループは、ヒトiPS細胞から作り培養して150~200マイクロメートル(1マイクロは100万分の1)の厚みを持たせたシート状の心臓組織と、蛍光粒子が流れる血管のような流路を組み合わせ、極小の装置「ハートオンチップ型マイクロデバイス」を開発した。心臓組織が拍動し収縮するとボタンが押し下げられて流路に影響を与え、これに応じて蛍光粒子が動く仕組みだ。このデバイスを使って拍動の速さや強さ、細胞内のカルシウムイオン濃度、薬を投与した時の反応などを調べ、実際の心臓の機能を十分に再現していることを確認した。

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    開発した「ハートオンチップ型マイクロデバイス」の模式図(理化学研究所提供)

デバイスはiPS細胞由来の人工心臓組織の機能評価に利用できる可能性がある。また、抗がん剤などは心臓への副作用に個人差があるため、患者本人の細胞から作ったiPS細胞でこのデバイスを作れば、実際の投与前に薬剤の毒性を調べられる。患者の細胞から作ったiPS細胞でデバイスを作り、さまざまな化合物で反応を調べれば、難病のための創薬にも役立ちそうだ。

会見した理研の升本英利上級研究員は「将来的に高い汎用性が見込まれる手軽なシステムだ」と述べた。成果は5日付の英科学誌「サイエンティフィック・リポーツ」に掲載された。

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    培養してできたiPS細胞由来の立体的な心臓組織。左の画像の赤色が心筋細胞、緑が血管壁細胞。中央の画像の緑色は血管内皮細胞で、血管網が形成されているのが分かる。右画像の茶色は心筋層(理化学研究所提供)

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