法政大学は11月24日、南西諸島(鹿児島県~沖縄県)から新たに2種のルリゴキブリ属のゴキブリ2種を発見したことを発表した。

同成果は、法政大の島野智之教授、竜洋昆虫自然観察公園(静岡県磐田市)の柳澤静磨職員、鹿児島大学の坂巻祥孝准教授、国立科学博物館の蛭田眞平博士、台湾大学のJhih-Rong Liao教授らの国際共同研究チームによるもの。詳細は、「Zoological Science」に掲載された。

もはや単なる害虫を超え、徹底して人々から忌み嫌われるゴキブリは、日本にはなんと57種も生息しているのをご存じだろうか。クロゴキブリなど、家屋内によく出現するのはそのうちの4種類程度で、それ以外のゴキブリは森林や洞窟などに生息し、朽ち木などの有機物を食して生活しており、ヒトとはほぼ関わりのない生活を送っている。

ゴキブリのイメージといえば、家屋内に出現する主な4種のせいで、黒もしくは茶色で、テラテラと光って気持ち悪い、汚いといったイメージしかない。しかし、そんなイメージを覆すゴキブリたちもいる。日本の南西諸島から東南アジアにかけて分布する、瑠璃の名を冠したルリゴキブリ属のゴキブリたちもその一種だ。

ルリゴキブリ属のゴキブリたちは、美しい青色の金属光沢や、鮮やかな橙色の紋などを持ち、美麗種といわれている。ただし、これらは家屋に出入りすることはなく、通常は森林内の朽ち木などで腐植質をエサとして生活しているので、なかなか見られないため、とてもゴキブリとはまったく思えない別の昆虫のようである。

今回発見された2種類もそうしたルリゴキブリに属する。そのうちの1種、「アカボシルリゴキブリ」(Eucorydia tokaraensis:ユーコリディア・トカラエンシス)は、宇治群島家島、トカラ列島悪石島、奄美群島奄美大島、徳之島に分布しており、オスの全長は12~13mm、上翅に黄赤色の3つの紋を持つことが外見上の特徴だ。

もう1種の「ウスオビルリゴキブリ」(Eucorydia donanensis:ユーコリディア・ドナンエンシス)は八重山列島与那国島にのみ生息し、オスの全長が12.5~14.5mm、腹部は紫色で、上翅に不明瞭な黄赤色の帯状紋を持つことが特徴となっている。

今回の研究では、日本産と台湾産のルリゴキブリ属の系統関係を解明するため、6遺伝子座を用いたDNA解析が実施された。その結果、台湾産1種と日本産のルリゴキブリ3種に明瞭に分かれ、国際共同研究チームの形態による分類の結果を支持したという。

また今回の2種はどちらも希少種で、オスメスを同時に採集することが困難だったという。竜洋昆虫自然観察公園の柳澤職員の粘り強い現地調査と飼育によって、幼虫から成虫までを詳細に研究し、詳細な形態計測を実施することができたとしている。また、DNAによる詳細な検討を行うこともできたことから、希少種ながら詳細に報告することができたとしている。

  • ゴキブリ

    (左)アカボシルリゴキブリのオス。(右)ウスオビルリゴキブリのオス (出所:法政大学Webサイト)