クライアントに提案するときのプレゼン資料や、社内で回覧するチラシを作ってみるものの、なんだかダサいし読みにくい……。

それ、デザイナーじゃないから仕方ないと思っていませんか? でも実は、デザインのルールを知るだけでぐっと垢抜けるんです。今回、マンガで読める"意識低い系デザイン書"『デザイナーじゃないのに!』の著者である平本久美子さん、よしだゆうこさんに、実際にプレゼンで使うスライド資料にアドバイスをもらいつつ、「残念なデザイン」を脱するコツを伝授してもらいます。

  • ソシム『デザイナーじゃないのに』(税別1,600円)

デザイナーじゃないのに! 上司のふんわりダメ出しに泣きそう!

上司や先輩から「スライド資料作っておいて」「チラシ作っておいて」なんて頼まれること、ありますよね。『デザイナーじゃないのに!』の主人公・ゆいちゃんもそんな一人です。同書籍の冒頭を、ちょっと見てみましょう。

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アプリがあってもチャチャッと作れるものではありません。慣れないチラシ作成を頑張ってみるゆいちゃんですが……。

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上司からは、抽象的でふわっとした修正の指示を受けてしまい……。

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あまりの理不尽さに「デザイナーじゃないわーい!!」と叫びだすゆいちゃん。彼女が頼まれたのはチラシですが、プレゼン用の資料やちょっとしたポスターなど、日々の業務で「デザイナーじゃないのに、なんでこんなにデザインで悩まなきゃいけないんだ!」「自分はセンスがない!!」と叫びだしたくなることはありませんか?

今回、そんな悩みに対して、『デザイナーじゃないのに』著者の平本久美子さん、漫画担当のよしだゆうこさんに「デザイナーじゃなくても見栄えのするデザイン作成のコツ」を伺います。テーマは、多くの社会人が作るであろう「プレゼン用のスライド資料」。マイナビニュース社員がPowerPointで作ったものの、何だか惜しい一枚をブラッシュアップしてもらいます。

  • 『デザイナーじゃないのに』著者の平本久美子さん、漫画担当のよしだゆうこさん

「デザインを始めるのに、最初はセンスなんていりません!」と言うお二人ですが、本当にセンスなしでも大丈夫なのでしょうか……。

3つの知識でこう変わる! 残念スライドビフォーアフター

――平本さん、よしださん、よろしくお願いします! 今日、改善のアドバイスをもらうのは、こちらのスライドです。

  • 今回アドバイスをもらうスライド。伝えたいことを盛り込んだら、なんだか文字だらけに……

――これはマイナビニュースの広告営業1年生が実際に作ったプレゼン資料です。「デザインのセンスがない!」とかなり悩んでいたようなのですが、どんな印象ですか?

平本さん:伝えたいことが色々あると見せ方に悩みますよね。このスライドをパッと見た感じだと、次の4つのことが気になります。

文字が多い
メリハリがついていない
使っている色の数が多く、きつい色を使っている
矢印や因果関係がわかりにくい

――文字が多いのは、作った本人も気にしていました。ちなみに、こういったスライドでやりがちな「デザインの落とし穴」ってありますか?

平本さん:このスライドもそうですが、「文字が並んでいるだけでメリハリがないこと」「全部文字で説明しようとすること」はありがちですね。

よしださん:文字を図式化するとわかりやすく説明できますが、逆に「図にしすぎてわかりにくくなる」というのも落とし穴ですね。

平本さん:実際にスライドを直しながら見ていってみましょう!

●文字は少なく&タイトルは短くして読みやすさUP!

よしださん:文章が多いと、情報量も多い分伝わりそうな気がしますが、わかりやすいスライドを作るなら、文字の量は少なくしましょう! 長文は読まれません!

  • 『デザイナーじゃないのに』より

平本さん:このスライドも、思い切って文章をダイエットしました。「(1)TVからプロジェクターへ移行する人(買替え層)」は、「(1)TVからプロジェクターへ買替える人」とまとめられますよね。意味が重複しているところや、口頭の説明で補足できそうなところは削ってみましょう。

よしださん:文字数を減らすことで、さらに次のようなメリットもありますよ。

●文字のサイズに差をつけて、メリハリUP!

平本さん:強調したいところは大きな文字に、それ以外は小さめの文字にしてみましょう。先に文字の量を整理しておくと、メリハリも付けやすいですよ。

  • 『デザイナーじゃないのに』より

平本さん:元々のスライドを見ると、文字の大きさにあまり差がないですよね。色や太さで強調を表現しようとするとごちゃつきがちなので、まずは文字の大きさでメリハリをつけてみてください。

平本さん:それから大事な結論の部分「マイナビニュースならば…」以降のところが目立たないように感じます。ここの中でも一番言いたいのは、2行目「嗜好の異なるユーザーに同時展開が可能!」という文章ですよね? ここは文字サイズのメリハリを付けた上で、さらに黄色いアンダーラインを引いてみました。他の部分とは異なる装飾をつけて、さらに目立たせています。

●使う色は3色以内にまとめよう!

平本さん:たくさん色を使うと、ごちゃごちゃしちゃいます。このスライドも、目立たせたい色が黄色なのか赤なのかあいまいなので、色の数を減らしてみました。3色以内にするとスッキリしますよ。

  • 『デザイナーじゃないのに』より

平本さん:「原色」を使わないこともポイントです。実は原色の真っ赤な赤って、プロのデザイナーもあまり使わないんです。ちょっと鮮やかさを抑えた色のほうが、見やすいうえに今っぽく見えます。赤とかは強くて目立ちますが、たくさん使うとチカチカしちゃって見づらいんですよね。彩やかさ(彩度)を抑えれば、色数が多くても全体のトーンがまとまります。

●プラスアルファでさらに見栄えスライド!

よしださん:ユーザーの紹介の部分を見てみましょう。今はユーザー層が1つの枠にまとまっていますが、別々の囲みにすると、パッと見て「2種類のターゲットがいる」とわかりますよね。

平本さん:さらに、図やテキストを整理してみましょう。吹き出しや矢印が多いので、結論の部分だけに使うことにしました。矢印は「時間の流れ」「因果関係」などの説明に役立ちますが、ひとつのスライドで異なる役割を持たせると、読み手が混乱しがちです。また、ファミリー層と若手層のイラストも添えてみました。装飾は印象付けたいところだけに使うと効果的ですよ!

――平本さん、よしださんのアドバイスを反映すると、こんな感じに。パッと見た際に強調したい情報が入ってきて、どのユーザー層に訴求し、どのようなメリットがあるかわかりやすくなっています。

  • ビフォー

  • アフター

小学生も読める! デザイナーじゃない人のための「デザイン書」

――アドバイス、ありがとうございました。『デザイナーじゃないのに!』から抜粋したページを交えつつ教えてもらいましたが、マンガのデザイン書を作ったきっかけを教えてもらえますか?

平本さん:私が以前書いたデザイン書籍を読んでいただいた出版社の編集部から、「マンガでデザインを伝えるものが作れませんか?」と相談があったことがきっかけです。デザインを勉強するにあたり、敷居の低い本が作れそうだなと思ったので引き受けました。私自身はマンガはかけないので、身近でイラストのかけるよしださんと一緒に作ろうと思ったんです。

――突然チラシ作成を無茶振りされて、社会人として「あるある」なシチュエーションも共感できます。

平本さん:デザイナーではない方に読んでもらいたいと思って、ストーリーにもこだわりました。レビューを見てると、ビジネスマンやプログラマー、イラストレーターとか、様々な職業の方に読んでもらっています。

よしださん:デザインに苦手意識があるのにやらされてしまう方ってたくさんいて、ものすごいストレスなんですよね。それから、小学生くらいのお子さんが読んでいるという感想をもらったりしました。マンガを読みながらデザインの基礎を学べれば、将来役立つきっかけになればいいですよね。

――デザインの知識は、専門で学ばない限り学校で詳しく教えてはもらえないですよね。上司や同僚に言われて、ダサいとかダメ出しされたりして(笑)。

平本さん:「上司の説得のしかた」のページも好評ですね。この本の編集者が「上司がわかってくれない!」とモヤモヤしていたそうで、そのアイデアをもとにアレンジしました。

  • 『デザイナーじゃないのに』より

よしださん:上司チェック、必ずぶち当たる壁ですよね。デザインの考え方の本はたくさんあっても、上司の交わし方までは書いてある本はなかなかないです(笑)

――すごくリアルですよね(笑)。今回デザインのコツを教えてもらいましたが、こういった「デザイン力」を磨くにはどうすればいいですか?

平本さん:スライド作成が苦手であれば、上手なスライドをたくさん見て分析するくせを付けてみてください。グラフが苦手だったら、見やすいグラフと見比べてどこが違うのか考えてみたり。

よしださん:見る側の立場になって、本当にわかるか疑ってみてください。作ってるほうは一生懸命なのでつい忘れがちですが、誰に向けたものかを考えると、どんなデザインをすればよいか見えてくるかもしれません。

――デザインに苦手意識があって悩んでいる方に、最後に一言お願いします。

平本さん:「デザインにはセンスが必要」と言う方もいますが、センスのあるなしは置いておいて、まずは今日お伝えしたようなルールを覚えてみてください。センスではなく、「ちょっとしたコツ」を知ればかなり変わります。

  • 『デザイナーじゃないのに』より

平本さん:まずはこの本で基礎の70点くらいを目指して、さらにデザインを勉強したくなったら別の本でステップアップしてほしいですね。

よしださん:デザインはかしこまってやるものでないし、怖くないですよって言いたいですね。派手な色使わなくていいんだなーとか、デザインのルールを知れば変わると思います。

平本さん:「世界一敷居の低いデザイン本」を自負しているので(笑)。

――平本さん、よしださん、ありがとうございました!


仕事をする中で、「デザイナーじゃないのに!」と叫びたくなることは多々あるかもしれませんが、まずはデザインのルールをちょっと覚えるだけで、伝わりやすいスライドやチラシは作れます。苦手意識がある方も、ぜひチャレンジしてみてはいかがでしょうか。