日産自動車がミニバン「NV350キャラバン」の特別仕様車「ブラックギア」を発売した。プライベート利用にフォーカスした派生モデルを用意するのは、現行のキャラバンでは初めてとなる。このブラックギア、コロナ禍のお出かけにもぴったりの1台に仕上がっているようだ。

  • 「NV350キャラバン」の特別仕様車「ブラックギア」

    「NV350キャラバン」の上級グレード「プレミアムGX」がベースとなる「NV350キャラバン プレミアムGX ブラックギア」。エンジンと駆動方式の違いで3つのタイプがあり、価格は319.22万円~411.18万円だ

ミニバンを使いたい家族が増加中?

「NV350キャラバン プレミアムGX ブラックギア」の発売に合わせて、日産では車中での楽しみ方を提案する「車中HACK」の公開をスタート。同サイト内で配信する動画コンテンツ「車中HACK BOOT CAMP」の公開収録会場でブラックギアの現物を確認してきた。

同イベントには、「キャラバン」のマーケティングを担当する日産 チーフマーケティングマネージャーの山本聡さんが登場。「ブラックギア」誕生の背景を教えてくれた。

  • 「キャラバン」のマーケティングを担当する日産の山本さん

    長年にわたり「キャラバン」のマーケティングを担当してきた山本さん

山本さんによると、「これまでキャラバンでは、『これぞプロ仕様』というコミュニケーションを通じ、ビジネス用のクルマとして、道具に強いこだわりを持つ職人さんにハードとしての圧倒的な性能をアピールしてきました」とのこと。確かに、キャラバンが働くクルマとして街を走っている姿はよく見かける。

今回の特別仕様車は、現行型キャラバンで初めてプライベート向けに振り切って作ったクルマだ。商用車のキャラバンに、こうしたモデルが必要だった理由とは何か。山本さんはこう説明する。

「キャラバンのようなバンタイプのクルマは、アウトドアレジャー用としても活用されています。中でも、昨今ブームの『車中泊』には、コロナ禍で3密を避けてレジャーを楽しみたいという傾向もあり、お客様の関心が急激に高まっているんです」

つまり、商用のイメージが強いバンタイプのクルマを、レジャーなどに使いたいという個人の顧客からの需要が高まっているのだ。

そんな状況を受けて誕生した「ブラックギア」がターゲットとするのは、趣味を思う存分楽しみたいと考えるアクティブなファミリーユーザー。山本さんによれば、「(こうした顧客は)道具へのこだわりが強く、ご自分のスタイルを表現できることや、ガンガン使えるタフさをクルマに求める」そうだ。その点、道具にこだわる職人に受け入れられてきたキャラバンのプライベートユース仕様車であれば、同様にこだわりの強い一般ユーザーにも受け入れられるのではないだろうか。

車両コンセプトは「こだわりの遊び道具」

ここからは、普通のキャラバンおよび日産車体が「東京モーターショー2019」に展示したコンセプトモデル「NV350キャラバン ブラックギアコンセプト」(以下、コンセプトモデル)との違いにも注目しながら、ブラックギアの実車を確認していきたい。

  • 「NV350キャラバン」の特別仕様車「ブラックギア」

    「NV350キャラバン プレミアムGX ブラックギア」のフロントマスク。従来モデルとは異なり、ブラック基調のフロントグリルを採用している。プライベートユースを意識し、ヘッドライトはLEDとした

エクステリアで注目したいのが、ブラックギア専用となる「ステルスグレー」というボディカラーだ。近年、ツヤを消したブルーやグリーン系のカラーリングを目にすることも多いが、日産によれば、これらの色をツヤ消しで塗装すると、だいたい5年ほどで塗り直す必要があるという。しかし、それでは自動車メーカーの中でも技術を売りにする日産のプライドが許さない。そこで今回は、きちんとクリアを吹いて塗装の耐久性を上げながらツヤを消す独自の手法を用いたそうだ。

  • 「NV350キャラバン」の特別仕様車「ブラックギア」

    ドアミラーは「UN-R46」という法規に適合させたため、コンセプトモデルとは形状が異なる

  • 「NV350キャラバン」の特別仕様車「ブラックギア」

    こちらはコンセプトモデルのヘッドライト。「ブラックギア」と比べるとずいぶんと横長な印象を受ける

インテリアには、コンセプトモデルでも使っていたブラックカラーの内装をキャラバンとして初めて正式採用。しかし、よく見ると、コンセプトモデルではピラー上部までブラックだったのに対し、ブラックギアはピラーの根元までになっていた。

  • 「NV350キャラバン」の特別仕様車「ブラックギア」

    コンセプトモデル(左)と「NV350キャラバン プレミアムGXブラックギア」(右)のAピラー

  • 「NV350キャラバン」の特別仕様車「ブラックギア」

    コンセプトモデル(左)と「NV350キャラバン プレミアムGXブラックギア」(右)のBピラー

内装の微妙な違いについて理由を聞くと、「基準車はドアトリムなどがグレー系で、そこが商用車っぽいといえば商用車っぽいのですが、私たちとしては、キャラバンを乗用車っぽく乗っていただきたいと考え、コンセプトモデルではピラーから下をブラックに変えました。ただ、それだとどうしても圧迫されるような感じがあるので、ブラックギアではピラーの根元までをブラックに変更しています」とのことだった。

  • 「NV350キャラバン」の特別仕様車「ブラックギア」

    「ブラックギア」のコックピット。ステリングやシフト周りにピアノブラックの加飾を施した

フォグランプ周り、ドアミラー、スライドドアレール、エアコンの吹き出し口周り、シート地にはオレンジ色のアクセントが。このブラックとオレンジのコントラストも、ファミリーユースを意識してこだわったポイントなのだという。

アウトドアレジャーに役立つ装備も満載だ。例えば3,050mmの長さを有する荷室には、マウンテンバイクやサーフボードなども楽に積み込める。荷室のユーティリティーナットには、フックやインナーバーなどが装着可能だ、リアシートは5:5で分割して倒せるので、荷物の形状に合わせて荷室を拡張することもできる。アイデア次第で使い方は無限に広がりそうだ。

車中ライフを楽しむためのアイデア満載!

「車中HACK BOOT CAMP」の公開収収録では、車中で「働く(職)」「楽しむ(楽)」「食べる(飯)」「泊まる(泊)」をテーマとし、それぞれの車中ライフを知り尽くした4名のYouTuberらが講師として登場。生徒役としてバイきんぐの西村瑞樹さんと水野裕子さんが参加し、それぞれのポイントを聞いていた。

  • 西村瑞樹さんと水野裕子さん

    キャンプ芸人としても知られる西村さん(右)は愛用の“バカ鍋”を持参して公開収録に臨んだ(左は水野さん)

収録後、「ブラックギアでどこへ行きたいか」という記者からの質問に西村さんは「いろいろお伺いして、俺も道の駅を制覇したいと思いました。1,100カ所以上ある道の駅にはスタンプがあるので、それを集めながら、スタンプラリーみたいに道の駅を巡る車中泊の旅はすごく面白そうですね」と回答。水野さんは「釣りをしてそのままキャンプをする“釣りキャン”にハマってます。これだけスペースがあれば、つなぎ無しの1ピースロッドや大きな魚を捕まえるネットなどの釣り道具をたくさん積んでも、テントなどのキャンプギアもしっかり載せられそうなので、“釣りキャン”でぜひ使ってみたいですね」とのことだった。当日の模様はまもなく、「車中HACK」内で動画コンテンツとして配信される予定だ。

  • Bappa Shotaさん

    車中「泊」のスペシャリスト・Bappa Shotaさん

  • ALPHA TECさん

    車中「食」のスペシャリスト・ALPHA TECさん

  • 浅井祐一さん

    車中「職」のスペシャリスト・浅井祐一さん

  • MIHOさん

    車中「楽」のスペシャリスト・MIHOさん