東証の適時開示情報を基に経営権の異動を伴うM&A案件(グループ内再編を除く)について、ストライク(M&A Online)が集計したところ、2020年10月のIT・ソフトウエア業界のM&A発表件数は10件で、10月としては2008年以降の13年間では2014年(12件)、2018年(11件)に次ぐ3番目となった。一方、取引金額は約2420億円で、10月としては2008年以降の13年間では最高となった。2000億円を超える大型案件があったため、金額が大きく膨らんだ。人材不足などを背景に、新型コロナウイルスの感染拡大の中でもIT業界のM&Aは活況が続いている。

  • IT・ソフトウエア業界 M&Aの推移

金額トップはNECの2380億円

金額が最も多かったのは、NECがスイスの大手金融ソフトウエア企業のアバロック(Avaloq)・グループを買収すると発表した案件で、同社を傘下に置くオランダの持ち株会社の全株式を約2380億円で取得する。

2021年4月までの買収完了を予定しており、買収後はアバロックのソフトウエアと、NECが強みとする生体認証、AI(人工知能)技術、ブロックチェーン(分散型台帳)技術などを組み合わせ、新たな金融サービスの開発を目指す。

金額の2番目はメディアドゥが電子書籍関連事業を手がける米国ファイア―ブランド・グループ2社(マサチューセッツ州)の全株式を取得し子会社化することで基本合意した案件で、取得価格は約15億円。

北米出版業界のDX(デジタルトランスフォーメーション)成功事例を国内出版業界に導入するとともに、ファイアーブランド・グループの顧客基盤を活用して国際事業の拡大につなげる。

金額の3番目はジーニーが、全文検索エンジンやクローラなどに関するソフトウエアの研究開発を主力とするビジネスサーチテクノロジ(東京都渋谷区)の全株式を取得し、子会社化することを決めた案件で、取得価格は約11億2800万円。

ジーニーは同社を傘下に取り組むことで、国内外での顧客獲得など事業拡大につなげる。

10月のM&Aは、このほかに10億円未満が5件、金額非公表、株式交換がそれぞれ1件ずつあった。