ソニーが独占的な地位にあるToF(Time of Flight)イメージセンサ市場に、韓国のSK HynixとSamsung Electronicsが製品を投入する形で市場参入を明らかにした。

ToFは、照射した光が被写体に当たって反射光が戻ってくるまでの時間で距離を計算し、物体の立体感や空間情報、動きなどを認識する3Dセンシング技術。Appleが 2020年初頭に発表したiPad Proで採用したほか、iPhone最新モデルとなるiPhone 12 Proシリーズにも採用されるなど、スマートフォン(スマホ)での採用が拡大しているほか、ウェアラブルデバイス、生活家電、自動車など、適用分野が今後が拡大することも期待されている。

DRAMからイメージセンサにラインを転換したSK Hynix

SK Hynixは、韓国利川(イチョン)の本社工場にあったDRAMラインの一部をイメージセンサラインに転換したほか、ソニーのOBを招聘して東京にイメージセンサの開発を担当する研究所を設立するなど、韓国政府の方針である非メモリビジネス強化に向けてイメージセンサ事業の強化を図ろうとしている。

その一環として10月末、韓国ソウルで開催された半導体展示会「SEDEX2020」において、ピクセルサイズ10μm、解像度QVGAのToFイメージセンサを発表した。韓国メディアによると、拡張現実(AR)と仮想現実(VR)の時代に、3Dセンシングの需要が高まっているため、ToFイメージセンサを開発したと説明している。ただし同社は、発売日や技術の詳細をまだ公表していない。

イメージセンサ市場における同社のシェアは数%ほどにすぎないが、先行するソニーやSamsungに何とか近づこうと人材と研究費を投入しているようだ。

ToFセンサ「ISOCELLVizion 33D」を正式発表したSamsung

一方のSamsung Elecrtronicsは11月4日、同社初となるToFイメージセンサ「ISOCELL Vizion 33D」を正式に発表した。ピクセルサイズ7μm、VGAの解像度を備えており、20cm~5mのレンジで被写体や物を測定できるとしている。センシングに要する消費電力は160mWで、各ピクセルが0°、90°、180°、270°の4個の位相信号を受信することで、高速移動する被写体であっても3Dセンシングが可能だとしている。3Dスキャンからビデオボケ効果、さらにはシームレスなAR/VR体験まで、同製品の低遅延で動く物体を追跡する機能により正確な深度検知機能を実現するとしている。

  • ToFイメージセンサ

    SamsungのToFセンサイメージ (出所:Samsung Electronics Webサイト)

なお、Samsungは以前からToFを開発していたがスマホへの搭載を見送っていた。しかし今回の発表を機に、Appleへの対抗を目的に、スマホの次世代製品へ搭載する可能性が高まったと言える。Samsung、SK Hynixともに、ソニーが独占してきたToFイメージセンサを自社ラインアップに含むことで、ソニーに対抗していく姿勢を鮮明にしてきたと言えるだろう。