アーティスト鈴木このみのライブ「鈴木このみ Live 2020 ~Single Collection~」が10月9日、LINE CUBE SHIBUYAにて開催された。鈴木にとって久々の有観客でのワンマンライブとなったこの日のライブは、同時にオンライン配信も実行。ライブタイトル通り、メドレーなども駆使して全シングル表題曲を歌唱し、デビューからの成長がコロナ禍においても止まっていないことを自身の歌声をもって証明してくれた。
●メドレーも織り交ぜて、大事な曲を次々披露
鈴木自身はもちろん、観客側にも久々のリアルライブというアニソンファンも多かったはず。開演前の空気は、そんなオーディエンスからの普段以上のワクワクさえ伝わってくるものだった。
そして待望の開演時間を迎えると、まずはOpening SEが流れるなかバンドメンバーが登場し、続いて鈴木が……ギターを提げて現れた! となればもちろん、幕開けを飾るのは「蒼の彼方」で決まり。すかさず青に染まった客席は、爽やかなナンバーを歌い上げる鈴木の歌声によって切り開かれた、閉塞された世界の先の青空のようにも見えた。Dメロの直前には「みんな会いたかったよー!」とシャウトして想いを届けると、そのまま続いたキラーチューン「Redo」に場内は一気に沸き立つ。
白と赤の光を灯してクラップを響かせる観客に、ライブを開催できなかった間も磨き続けた歌声をとにかく強く強く叩きつけていく。圧倒的なパワーをもちながらも、間奏ではこの場に立てる喜びからか、奥のほうの観客めがけて笑顔で「見えてるよ!」と言わんばかりに指差すなど、歌唱では楽曲の世界を表現しつつ、自身もステージを心から楽しんでいた。
また、「カオスシンドローム」では安定したボーカルワークに加えてサビ前では華麗にスピンも交えたりと、視覚面も含めてスタイリッシュに魅せ、3曲それぞれテイストの異なる人気の高いナンバーを見事に歌い分けてみせた。
曲明けのMCでは、「やっと会えたね!」と改めて喜びを爆発させつつ、ソーシャルディスタンスに沿ったレギュレーションを再確認するなかでは「この景色も新鮮だね」と、今だけの景色を噛みしめてみせる。
久々のライブに安心感と高揚感を感じつつ、「ここに来ることを選んでくれて、精一杯応援の気持ちで配信を観てくれて、本当に感謝しています。ありがとう!」と感謝を述べると、”Single Collection”のタイトル通り「本当に本当に特別なセットリストです!」と宣言し、シングル曲を次々畳み掛けていくスペシャルメドレーでライブ再開。
その幕開けを飾った「AVENGE WORLD」の冒頭で即アーティストスイッチをONにして力強く歌い上げると、「真理の鏡、剣乃ように」ではダンスも織り交ぜたり、「Absolute Soul」ではすごみのあるファルセットで成長を実感させたりと一気にオーディエンスを引き込めば、メドレー後にはなんと序盤にしてキラーチューン「This game」へ。
イントロ中、真っ白に染まった客席に向かって「私の歌手人生を一気に変えてくれた曲です。今日も真っ白な景色をありがとう!」と感謝の心を届ければ、この曲ではステージ上を幅いっぱいまで移動しながら歌唱を行ない、圧巻のボーカル力をもって大切な曲を会場の隅々まで届けていった。
そんな怒涛の序盤戦を、「誰だー、このセットリスト考えたの! ……って自分でやっておいて思いました!」と冗談も交えながら振り返る鈴木。デビュー当時、体力のなさからスタッフからワンマンライブ開催NGを告げられたという思い出も引き合いに出しつつ、「メドレーも歌いきれるようになったぞ!」とドヤ顔をみせる。
続けてアニソングランプリや初ステージの思い出を語ると、彼女のシンガーとしてのはじまりの曲「CHOIR JAIL」へ。メリハリのついたダンスも盛り込みつつ、サビラストの非常によく伸びるファルセットなど、2020年の現在まで培った力を存分に発揮して成長を見せつければ、続く「銀閃の風」ではイントロ中に2階ステージへと上がって、頭サビを仁王立ちで雄々しく歌唱。ハードなシンフォニックメタルのなかで歌声によりいっそう力強さを付加して、オーディエンスを圧倒せんとするほどのものになっていた。
●聴かせる曲でも、勢いある曲でも、生きる力を与えてくれる歌声
歌い終わると、今度は簡単な振り付け講座を挟んで、最新シングルのカップリング曲「Live it up!」をオーディエンスと一緒に踊りながら歌唱。ディスコチューンに乗せて場内をハッピーで満たしていく。
鈴木自身もハッピーさの強いボーカルとともに激しいダンスもみせつつ、歌い出しでいきなりギターへと絡みにダッシュするなど、誰よりも楽しんでいるような姿をみせていた。
曲明けにはその「Live it up!」も含め、夏に3ヶ月連続でリリースしたシングルで作詞作曲を手掛けたことに触れ、STAY HOME期間中に考えたことや、そのなかで感じた「自分は自分でいいんだ」との結論について語ると、そういった気持ちを形にした曲「明けない夜に」からしばししっとりとした楽曲ゾーンへ。
A・Bメロでのセリフ風の部分や大サビ前の美しいスキャットでは特に音源以上に感情を色濃く込め、鈴木が胸の内に抱えていた想いを生の歌声として届けていく。
それを経たからこそ、単体で聴く以上に胸に沁みたのが次曲「舞い降りてきた雪」だ。優しく丸みをもたせた歌声を響かせていく彼女の眼前には、まずは真っ白に染まった客席が映る。さらに2番では、実際にステージ上に雪が舞い降り始めるなか、さらに情感を増した歌声で楽曲のもつ世界観を増幅させて届けきってくれた。
ここで一旦鈴木は退場して、バンドタイムがスタート。やがて「Theater of Life」のコール部分が流れ始め、熱い演奏とともに場内のボルテージを高めていくと、衣装チェンジして再登場した鈴木とともにその「Theater of Life」へと突入。後半では2階ステージ上に堂々と立って歌いゆくと、2サビ最後の「キミで」のフレーズに合わせて客席を指差して繋がりも感じさせ、力強く鋭い歌声とともに”生きている”実感を強く感じる3分半を駆け抜けていった。
「歌えばそこに君がいるから」を続けたのも、正直ズルい! 元々彼女のターニングポイントのひとつになった曲であっただろうが、今歌われるとより響いてしまう曲だ。加えて “そこに君がいる”なかで久々に歌われたこの曲を、生で受け取れるのも生で届けられるのも、どちらもたまらなく幸せなことだっただろう。
そんな感慨にも若干浸っていたところで歌われた「A Beautiful Mistake」は、爽快なサウンドに乗せて背中を押して、広い意味で”赦して”もくれる勇気の歌。そこにパワーを乗せに乗せて、その場の観客・配信の向こうのファン全てに向けて送っていく。大サビではタオルを手にすると、それを最後は笑顔で投げ上げてキャッチし、怒涛の中盤戦を締めくくった。