【コロナ禍のEC求人動向】買い手市場も、EC人材取り合いに

コロナの影響を受け、企業の求人状況にも変化が生じている。企業の求人件数は減り、求職者数は増えているという。企業側からすると、買い手市場が続いている状態だ。コロナ禍で観光や外食産業が落ち込んだことで、求職者にとっての人気企業も変わりつつある。安泰と言われる大企業よりも、将来性を重視する傾向も出てきているようだ。EC業界を見ると、新規参入する企業や、EC中心の業態へとシフトする企業も多く、EC事業の実務経験を持つ人材への人気が高まっているようだ。コロナ禍のEC業界における人材採用についてついて、求人支援企業各社に話を聞いた。


【マイナビ】求職者は増加傾向 ECの人材は取り合いも
マイナビによると、中途採用市場では、IT業界を中心に求人数が戻りつつあるという。求人数は、今年5月に前年同月比50%減を記録したが、9月には同25%減まで回復したという。EC業界では、コロナ禍の中、成長を加速させたいという企業からの求人が増えているという。求められているのは、単なるECサイト運営やサイト構築の人員だけではない。ビジネスとしてのEC運営を任せられる人材に人気が集中しているようだ。

上半期(4〜9月)の求職者数は、前年同期比15%増となっており、買い手市場が続いている。「求職者が増えており、内定率は昨年のほうが高かった。企業の欲しい人材と応募者の乖離(かいり)が大きい」(マイナビ転職 荻田泰夫編集長)と話す。

「コロナ対策」に高い関心を示す求職者が多いという。リモートワークをどの程度実施しているかや、クラウドサービスを活用してオンラインで働ける環境が整っているかに関する情報を求める人が多いとしている。面接をオンラインで行っていることも、求職者からは、コロナ対策の一環として好意的に受け止められているようだ。「コロナ前はオンライン面接をしている企業はほぼなかった。今は3割ほどが実施している。最近は、一次面接はオンラインで行い、最終面接のみ対面で行うという企業も多くなっている」(同)と言う。

「買い手市場ではあるが、各社の欲しい人材は似通っている。競争率の高い『完全なる即戦力』を狙うのではなく、将来も見据えた採用を行うことが必要になってくると思う」(同)と話す。「企業側からすると、採用しやすい時期であることは確か。自社のコロナ対策や労務環境など、当たり前に思っていることが、企業のアピールポイントになることも多い」(同)とも話していた。

同社では、今後もオンラインで行う、説明会などのイベントを増やしていきたいとしている。現在は、転職者の業界選びを支援するため、同社と各企業との対談動画をウェブサイトにアップしている。対談では、コロナ禍で求められる人材像などについて語り合っているという。


サイバーエージェント曽山哲人取締役(写真右)と荻田泰夫編集長の対談の様子


【エン・ジャパン】コロナ禍でEC求人10%増 社会貢献・働き方が採用のテーマに
大手転職キャリアのエン・ジャパンが運営する転職サイト「エン転職」では、2020年4-6月における、ECに関連した求人件数が、前年同期間比で10%増加した。一方、応募件数は横ばいだとしており、優秀な人材の取り合いになっているという。「『自社のEC事業の社会貢献度』や『柔軟な働き方』を打ち出すことで、優秀な人材を獲得できるチャンスが生まれる」(エン転職・岡田康豊編集長)と話している。

エン・ジャパンによると、コロナ以降、「エン転職」に掲載された求人全体の数は、前年同期間比で2割減少したとしている。「その中で、EC関連が増加したことは特筆すべきことだ」(同)とも話している。

ECに関する求人で、最も求められている職種は、システムエンジニアや、在庫管理・物流関連の職種だという。物流などの現場の人材が増加するのに比例して、管理職人材の需要も高まっているとしている。

コロナ禍で、社内の教育環境が整わない企業が多いことも、求人が増加する要因になっているという。「コロナ禍では各EC企業で、経験のない人材を採用して教育するためのリソースに不足が生じている。すでにECの技術やノウハウを持った人材の取り合いが起きている」(岡田編集長)と話している。

岡田編集長は、「最近のトレンドとして、求職者は、『自分の仕事が多くの人に影響を与える』という点に共感を示す傾向がある。自社の社会貢献度を打ち出すと、応募者の目に留まる可能性が高くなる」と話している。


【ネオキャリア】コロナ禍で新卒の意識に変化 IT系が爆発的な人気に
ネオキャリアによると、コロナ禍で新卒の採用市場にも変化が出てきているという。ここ数年、新卒求職者からの人気の高まっていたIT系がここにきて爆発的な人気となっている。医療やヘルスケアの業界も、新卒者からは人気が高いという。コロナの影響で大企業が打撃を受けたこともあり、既存の大企業よりも、成長が見込める企業に人気が集まる傾向があるとしている。

「人材を募集する際には、どれだけアピールできるかが重要。EC業界には、時期的にも伸びている企業が多いので、アピールしやすい」(新卒採用部 柳直輝部長)と言う。EC市場全体が年々拡大していることや、コロナ禍で伸びた自社の業績を示すなどして、マーケットのポテンシャルや将来性を感じてもらうことが重要だという。

「今の学生には自由な働き方を好む人も多い。リモートワークは前向きに捉えられている」(同)と言う。

「コロナの影響で終身雇用を考えない学生がより増えた印象もある」(同)とも話す。転職を前提に就職を考えるため、自身のスキルを高められる仕事を選ぶ傾向があるという。「どういった仕事か」「仕事を通じて何を得られるか」「どの業務を担当するのか」など、内容を説明することが、採用を成功に導くポイントだとしている。

「面接や説明会のオンライン化が進んだことで、地方からの応募や、地方への応募も増えている。全体の求人は減っているので、採用しやすい環境にあると思う」(同)と話している。


オンライン面接のイメージ


【パーソルグループ クリーデンス】アパレル求人件数2.1倍に 6月には過去最高の求人件数記録
パーソルキャリアが運営する、アパレル・ファッション業界専門の人材紹介サービス「クリーデンス」は、2020年4〜9月の「EC関連求人件数」が、前年同期間比で約2.1倍に増加したという。

同社によると、アパレル・ファッション業界の2020年4〜9月の「EC関連求人件数」は、昨年同期間比で112.6%増加したという。

緊急事態宣言発令後の5月に求人を休止した企業も多かったが、アパレル・ファッション業界の各社には、EC化率を高める傾向がみられるという。

ウェブディレクター、デザイナー、エンジニア、物流、マーケティング関連の求人が多いという。プログラミングスキル、アクセス分析、分析ツール、デザインなどの技術を持つ人材も、企業からの人気が高いという。自社ECサイトを自社内で作成するなど、EC関連業務の内製化を進める傾向が各社にはあるという。

一方、EC関連以外の求人件数はコロナ後に減少していたが、現在は回復傾向にあるという。

応募者数は増えており、求職者からの問い合わせ数、登録者数、カウンセリング数も増加しているということだ。

「現在は、良い人材を選びやすいチャンスの時期でもある」(事業責任者・河崎達哉氏)と話している。