相談者は、ご主人が他界され、遺族年金等の受給とパート収入で生計を立てている50代の女性。老後資金は足りるのか不安を抱いています。ファイナンシャル・プランナーの深野康彦さんがアドバイスします。

◆「お金に働いてもらう」にも知識がありません。どうすれば……?
皆さんから寄せられた家計の悩みにお答えする、その名も「マネープランクリニック」。

今回の相談者は、ご主人が他界され、遺族年金等の受給とパート収入で生計を立てている50代の女性。将来、老後資金は足りるのか、足りないとすれば投資をしたいと思うが、その知識もなく、どうしていいかわからないといった不安を抱いています。

ファイナンシャル・プランナーの深野康彦さんがアドバイスします。

◇相談者
カネクイムシさん(仮名)
女性/アルバイト/50歳
大阪府/持ち家・マンション

◇家族構成
長男(大学3年)

◇相談内容
夫が亡くなり、現在、遺族厚生年金と寡婦年金で毎月12万8000円受け取っています。そのほとんどは生活費で消え、不足分を私のバイト代でまかなっています。

それでも毎月不足するので、貯蓄から3万~4万円おろしています。死亡退職金は年金タイプで50~60歳まで入ります。合計2800万円程になる予定。全て普通預金口座に入れています。

今はアルバイトで飲食業をしています。あと2年、同じ場所で勤務できます。他になんのスキルもありません。ただもっと稼ぐとなると体力的にも自信はありません。更年期等で。稼ぎが全くなくなった場合でも生きていけるのか、不安です。

それと、貯蓄は全て普通預金口座に入っています。投資の知識はないので、お金に働いてもらうこともできません。

最近、我が家の口座のお金の動きを見て、銀行の営業さんから電話や訪問がありますが、無視しています。どうしたらいいのでしょう? 65歳からの自分の年金額は月に14万5000円とのことです。

◇家計収支データ
カネクイムシさんの家計収支データは図表のとおりです。
相談者「カネクイムシ」さんの家計収支データ

◇家計収支データ補足
(1)受給している年金の内訳
遺族厚生年金95万2448円、寡婦加算58万4500円

(2)教育費について
長男が通う「半期(授業料+施設料)で78万円」の大学は私立理系。残る大学コストはあと1年分。

(3)自宅について
住まいのマンションは現在築15年。住宅ローンは団体信用生命保険で免除。

(4)加入保険について
・本人/がん保険(終身保障終身払い、通院5000円、手術・先進医療特約)=保険料1400円
・本人/がん保険(終身保障終身払い、入院1万円、がん一時金100万円)=保険料4200円

(5)今後の働き方について
体力的、精神的に、現在の働き方(パート・アルバイト)を継続するのは頑張ってあと10年。

(6)貯蓄について
貯蓄6980万円のうち、1500万円はこれまでの貯蓄、4490万円は死亡保険金、残りは会社の弔祭金、功労付加金等。

◇FP深野康彦の3つのアドバイス
アドバイス1:現状のままで資金的には何の問題もなし
アドバイス2:働いて稼ぐことより自分の健康を優先する
アドバイス3:リスクを取ってまで資金を増やす必要がない

◆アドバイス1:現状のままで資金的には何の問題もなし
今後のキャッシュフローを試算してみましょう。

公的年金(遺族年金+中高齢寡婦加算)とパート代の合計が月19万8000円。対して支出が約26万円ですから、これだけで比較すれば毎月6万円の赤字です。

ただし、この支出にはお子さんの大学費用が月割りで加算されています。来年4年生ですから、この赤字が続くのは実質あと1年。したがって、赤字の累積もざっと80万円ほど。

卒業後は、教育費以外の支出が変わらないなら、生活費は1カ月13万円ですから、一転して6万8000円の黒字になります。パートは頑張って10年、60歳までとのことですから、9年間はこの黒字が継続されます。先の赤字と相殺すれば、この10年間で650万円超の貯蓄ができる計算になります。

さらに、年金として10年間支給される死亡退職金の合計が2856万円。これに今ある貯蓄を加算すると、60歳の時点で1億486万円となり、これがカネクイムシさんの老後資金ということになります。

ここで確実に言えることは、老後も含めて、今後資金的に不安になる必要はないということです。したがって、現在のまま生活されても何の心配も要りません。

現在支給されている中高齢寡婦加算は65歳までですが、それ以降はカネクイムシさん自身の老齢基礎年金に切り替わります。遺族厚生年金と合わせて月額で約14万5000円。現在の支給額より、1万7000円ほどアップします。

老後の生活費は不確定な部分もありますが、60歳以降、収入が年金だけであれば不足額はおそらく月額1万~3万円のはず。平均2万円不足したとして、年間24万円。100歳まで生きても960万円。老後資金から差し引いて残りは9500万円ほど。

その間、住宅リフォームや自身の入院や介護の費用が発生しても、一般的な費用なら4分の1も減らないでしょう。

◆アドバイス2:働いて稼ぐことより自分の健康を優先する
それを踏まえていくつかアドバイスを。

まず、体力的になかなか働くことが辛いように感じます。ご相談文に「もっと稼ぐには」とありますが、その必要は皆無です。

それどころか、本当に辛いのなら、今すぐ仕事を辞めても資金的には問題ありません。今後10年間のカネクイムシさんのパート収入は計840万円。先に試算した老後資金からその分を差し引いても約9600万円。これでも十分過ぎる額だからです。

今後は休んで、ゆっくりされてはどうでしょう。ご主人が亡くなられて、精神的にも疲労が蓄積されているかもしれません。

もっとも避けるべきは、カネクイムシさん自身が病気になることです。これまで苦労されたのですから、これからは健康と明るい気持ちを維持し、日々の生活を楽しむ。そのことを最優先に考えるべきです。そのために支出が月数万円増えても大丈夫です。

◆アドバイス3:リスクを取ってまで資金を増やす必要がない
また「お金に働いてもらう」ということについては、すなわち投資ですが、ご存知のようにリスクをともないます。しかし、カネクイムシさんはリスクを取ってまで増やす必要がありません。資金が潤沢にあるからです。

したがって、定期預金で十分。あるいは個人向け国債を買ってもいいでしょう。

あるいは、お子さんに資金を遺すという目的で、一時払いの終身保険に加入し、お子さんを受取人にする。支払った分以上の死亡保険金が入りますから、これも言ってみれば「お金に働いてもらう」ひとつの形ではあります。

ただし、外貨建ては避けてください。予定利率は高いですが、為替リスクがあります。

何度も言うように、リスクは取る必要がありません。それと、商品は何であれ、お子さんにある程度お金を遺したいとお考えなら、自分で使う分と遺す分を区分けしておくといいと思います。

最後にカネクイムシさんは大丈夫かと思いますが、現在まとまった大金を保有されています。くれぐれも投資話や出資の勧誘などにはだまされないでください。

被害を受けている人の大半が大金をもつ高齢者です。将来への不安につけ込む形で、儲け話を持ち出しますが、そんなものはこの世に存在しません。

自分の資産はしっかり自身で管理する。今後、お金回りで気をつけるべきはその点だけでしょう。

◆相談者「カネクイムシ」さんより寄せられた感想
アドバイスありがとうございます。最近疲れが出てきて、仕事以外のことをやろうという気にもなれず、休みの日は体力温存のため、家にこもっていました。

先生の「日々の生活を楽しむ」という言葉は、今の私にとって一番必要なアドバイスでした。老後資金も心配することはないと仰っていただけましたし、気持ちにゆとりが生まれました。本当にありがとうございました。

教えてくれたのは……深野 康彦さん
 
マネープランクリニックでもおなじみのベテランFPの1人。さまざまなメディアを通じて、家計管理の方法や投資の啓蒙などお金周り全般に関する情報を発信しています。All About貯蓄・投資信託ガイドとしても活躍中。

取材・文:清水京武

文=あるじゃん 編集部