2021年度の開始を国が検討、ウィズコロナの新たな住宅補助制度とは?

2020年9月末、中央省庁の来年度政府予算概算要求、税制改正要望がとりまとめられました。住宅関連では、2021年度からテレワーク対応のリフォームへの補助金、地方移住への補助金の対象拡大などが実施される見込みです。それぞれ現段階の情報を元に解説していきます。

コロナ対策や災害対策などが来年度の柱に

2021年度の政府予算に関する国土交通省の概算要求をみると、住宅に関しては目玉となる施策の実現を期待しにくいのが現実です。

ネット・ゼロ・エネルギー・ハウス(ZEH)への補助金や水害対策、地震対策など、従来から実施されてきた制度の継続が大半を占めています。業界が求めていた、最大200万ポイントを付与するという新しい住宅ポイント制度については、採用は見送られています。

また、税制改正要望に関しても、不動産協会、住宅生産団体連合会(住団連)などは、住宅ローン減税の拡充、住宅取得等資金贈与の特例の非課税枠拡充などを求めていましたが、それらのほとんどは採用されませんでした。

認められたのは、今年度で軽減措置が期限切れになる登録免許税や不動産取得税の特例措置延長などに限られ、新しい施策はほとんど採用されませんでした。

住宅ローン減税制度に関しては、控除期間を通常より3年長い13年間受けられる特例措置の延長が検討されています。原則は2020年末まで(一定の要件を満たす場合は21年末まで)の入居としている適用期限を、数年延長する案が、政府で検討されているという報道が出てきていますが10月16日時点では確定はしていません。

テレワーク増加対応へのリフォームを促進する制度

そうしたなか、数少ない新たな制度として、コロナ対策に関する補助金制度などが動き出すことになりそうです。

まず、国土交通省関連では、コロナ禍で増加したテレワークに対応するためのリフォームを促進する制度が設けられる見込みです。

マンション分譲大手7社で構成されるメジャーセブンが2020年7月から8月にかけて行った調査によると、「オフィス勤務は実施していない」「オフィス勤務と在宅勤務の両方を実施している」の合計が63.2%に達し、何らかの形で在宅勤務を行っている人が6割を超えています。その在宅勤務を行う上での不満点を聞いたところ、図表1のような結果になりました。

「メリハリを付けづらい」がトップですが、「仕事に適したスペース(部屋)がない」「仕事に適したデスクや椅子がない」「仕事関連の物を収納するスペースがない」など、住まいの不満を抱える人が多いのが現状です。

長期優良住宅化リフォーム特例措置の一環として創設

そのため、「今より広い家に引っ越したい」とする人が多いと同時に、「リフォームなどで今より仕事スペースを広くしたい」などと、在宅勤務に対応するため、自宅環境を整えたいという人が少なくありません。

国土交通省では、そうした人のために、現在もある「長期優良住宅化リフォームに関する特例措置」制度を活用して、在宅勤務対応のリフォームを行う人への補助制度を設ける予定です。

現在の制度では、耐震改修、省エネ改修、耐久性向上改修などのためのリフォームを行う人に対して、リフォームにかかった費用に応じて所得税を軽減することになっています。たとえば、耐震改修、省エネ改修のいずれかと耐久性向上改修を行った場合には、工事費の上限250万円の10%、25万円が所得税から控除されます。

▼長期優良住宅化リフォームに係る所得税額の特別控除

一定の耐震改修または省エネ改修工事および一定の耐久性向上改修工事にかかわる標準的な工事費用相当額の10%がその年の所得税額から控除される。

・標準的な工事費用相当額の上限額

A:耐震改修 or 省エネ改修工事+耐久性向上改修工事…250万円
※省エネ改修工事とあわせて太陽光発電設備設置工事を行う場合は350万円

B:耐震改修+省エネ改修工事+耐久性向上改修工事…500万円
※省エネ改修工事とあわせて太陽光発電設備設置工事を行う場合は600万円

C:上記AあるいはBにバリアフリー改修工事および同居対応改修工事をあわせて実施した場合…950万円
※省エネ改修工事とあわせて太陽光発電設備設置工事を行う場合は1,050万円

・適用を受けるための主な要件

(1)工事を行った者が主として居住の用に供する家屋であること
(2)工事完了から6ヶ月以内に居住の用に供すること
(3)床面積が50平方メートル以上であること
(4)店舗等併用住宅の場合は、床面積の1/2以上が居住用であること
(5)合計所得金額が3,000万円以下であること

参考資料:国土交通省ホームページ

最大100万円までを補助する方針

この制度の予算を使って、コロナ対策のためのリフォームについて、そのリフォーム費用の3分の1まで、最大100万円の補助を行う方針といわれています。

具体的な内容はまだ明らかにされていませんが、コロナ対策のための増築や防音対策、間仕切りの設置などが対象になるとみられています。

詳細は12月にまとめられる、税制改正大綱などに盛り込まれることになりますが、適用を受けるための条件としては、先述にあるような内容になるとみられます。

床面積が50平方メートル以上の住まいであれば、賃貸や店舗などとの併用住宅でも、自己居住用部分が50%以上であれば,OKです。そのほか、年間所得が3,000万円以下などの条件なので、まずほとんどの人が対象になるのではないでしょうか。

東京の会社勤務でも地方移住への補助金

もうひとつ注目されるのが、内閣府が推進している「地方創生起業支援事業・地方創生移住支援事業」の対象拡充です。

現在の制度では東京圏以外の地方に移住して、その場所で起業したり、転職することが条件なのですが、来年度からは地元の会社などに転職しなくても、東京の会社に勤務したままの移住も、移住支援金の対象に加えたいとしています。

周知のように、在宅勤務が定着して、基本的には自宅で仕事をしながら、たまに出社すればOKという働き方が増えています。であれば、東京の会社に籍を置いたまま、自宅を東京圏以外の地方に移しても問題ありません。そうした流れを促進して、地方創生につなげていこうという考え方です。補助金は最大で100万円になる見込みです。

それとは別に、現在は最大200万円の起業支援金について、地方でIT関連の起業を行う場合には、支援金を最大300万円に引き上げる予定です。

▼地方創生起業支援事業・地方創生移住支援事業の概要

・支援金の概要

・起業支援金の対象(以下の(1)~(3)のすべてを満たすこと)

(1)東京圏以外の道府県または東京圏内の条件不利地域において社会的事業の起業を行うこと
(2)公募開始日以降、補助事業期間完了日までに個人開業届または法人の設立を行うこと
(3)起業地の都道府県内に居住していること、または居住する予定であること

・移住支援金の対象(以下の(1)~(3)のすべてを満たすこと)

(1)【移住元】東京23区の在住者または通勤者(5年以上)
(2)【移住先】東京圏以外の道府県または東京圏内の条件不利地域への移住者
(3)【就業・起業】移住支援事業を実施する都道府県が、マッチングサイトに移住支援金の対象として掲載する求人に新規就業した人または起業支援金の交付決定を受けた人

参考資料:内閣官房・内閣府 総合サイト

東京圏への移住でも対象になるケースもある

移住支援金の対象になるのは、上記の図表3にあるように、移住先は「東京圏以外の道府県または東京圏内の条件不利地域」となっています。

「東京圏」というのは、東京都、埼玉県、千葉県、神奈川県の一都三県ですが、「東京圏内の条件不利地域」というのは、「過疎地域自立促進特別措置法」「山村振興法」「離島振興法」「半島振興法」「小笠原諸島振興開発特別措置法」の対象地域を有する市町村のことで、意外(?)と思われるような市町村もあります。

たとえば、神奈川県では小田原市と湯河原町の間に位置する真鶴町が入り、埼玉県では飯能市、千葉県では富津市なども入っています。現在でも、これらの市町村に住んで、東京の都心などに通勤している人も少なくないでしょう。これで地方移住として補助金の対象になるのなら、これは穴場といってもいいかもしれません。

・東京圏内の条件不利地域

東京都…檜原村、奥多摩町、大島町、利島村、新島村、神津島村、三宅村、御蔵島村、八丈町、青ヶ島村、小笠原村

神奈川県…山北町、真鶴町、清川村

埼玉県…秩父市、飯能市、本庄市,ときがわ町、横瀬町、皆野町、小鹿野町、東秩父村、神川町

千葉県…館山市、勝浦市、鴨川市、富津市、いすみ市、南房総市、東庄町、長南町、大多喜町、御宿町、鋸南町

参考資料:内閣官房・内閣府 総合サイト

今後も動向にチェックが必要

以上の情報は、あくまでも2020年10月21日時点の情報です。今後、12月の政府予算案、税制改正大綱に向けて、さらなる変更があるかもしれません。最終的には、21年3月末に21年度予算や税制改正大綱が国会で成立して、正式決定になります。

住宅の取得を考えている人は、その動向を定期的にチェックしておくようにしたいところです。

執筆者:山下 和之