コロナ禍で観客が現地観戦できる大会はまだまだ少ないのが現状です。それでも、来夏、パラアスリートたちの躍動する姿を思い描いて、競技に触れておきたいもの。読書の秋。こんな時こそ、パラスポーツを題材にした漫画を読んでみてはいかがでしょう。ここでは、編集部おすすめのパラスポーツ漫画を厳選してご紹介します。

■『リアル』1~14巻

『リアル』

井上雄彦・作
集英社

有力なスプリンターだったが、骨肉腫で義足生活になってから車いすバスケットボールをプレーしている戸川清春。純粋にバスケットボールを愛しているが、バイクで交通事故を起こし高校中退となった野宮朋美。高校バスケ部主将で成績優秀、女子にモテて……とすべてにおいてAランクを自認していたが、トラック事故で半身不随となった、野宮の元同級生・高橋久信。この3人を軸に、登場人物たちがそれぞれの「リアル」、つまり「現実」の人生を葛藤しながら歩む姿を、バスケットボール漫画の金字塔『SLAM DUNK』の作者が描く。
だれにとっても、自分の現実や現在地を正しく認識するのは決して簡単ではなく、ときに目をそむけたくなるほど苦しい。本作では夢を追うことの難しさ、交通事故後の心身の変化、リハビリの過酷さ、不治の病に侵される理不尽、患者を支える家族の苦悩も克明に描き出す。また、これまで無意識のうちにとらわれてきた思い込みを大きく揺さぶる問いが随所で投げかけられる。障がいとは、強さとは、人の価値とは――。自分自身の“リアル”に気づかされるきっかけとなるかもしれない。
2020年11月、約6年ぶりの新刊となる<15巻>が発売される。

車いすバスケットボール男子日本代表の及川晋平監督(左)、リオパラリンピックで日本代表選手団主将を務めた藤本怜央選手も愛読

■『新しい足で駆け抜けろ。』1~4巻

『新しい足で駆け抜けろ。』

みどりわたる・作
小学館

中学校でサッカー部のエースストライカーだった菊里翔太は、サッカー強豪校に進学したものの、事故で義足になったことからサッカーをやめ、空虚な日々を送っていた。ところが、義肢装具士の千鳥に出会ったことをきっかけに、陸上競技用の義足・板バネと、板バネで走る喜びを知り、パラ陸上にチャレンジすることを決意する。友人や家族とぶつかりながらも少しずつ前へ進む中、東京2020パラリンピック100m男子T63日本代表・堂島進と出会い、堂島と同じ世界に行ってみたいと夢を描くようになるのだが――。現在も漫画雑誌『週刊ビッグコミックスピリッツ』にて連載中。第3巻では新型コロナウイルスの影響で部活動が停止、大会も中止になってしまうなど、物語は現在進行形だ。コロナ禍にあっても、今できることに取り組もうと前を向く登場人物たちの姿から感じ取れるものも多い。パラ陸上のクラス分けや板バネの仕組みが分かるのはもちろん、義肢装具士の仕事が垣間見られるのも興味深い。

■『ましろ日(ひ)』全7巻

『ましろ日(ひ)』

香川まさひと・原作、若狭星・作画
小学館

舞台は現代の広島。交通事故で失明し、ブラインドマラソンと出会った山崎は、信用金庫の営業職ひかり、高校生の順平、病院清掃員の正太郎とともにチームを結成。伴走者としてチームに加入した交通事故の加害者・但馬の苦悩や、ライバルで口の悪い上杉との確執、上杉の妹のサキとひかりとの三角関係も交えつつ、東京パラリンピック出場を目指す姿を描く。
被爆地の歴史を背景に、複雑な過去を抱える登場人物たちが「幸せとは、誰かのために生きること」という恩師の教えを実践しようともがいたり、障がい者と健常者の間にある意識や考え方の違いに戸惑ったりする人間味豊かな姿が物語に厚みを加えている。
なお、タイトルの「ましろひ」とは、本作の舞台「ひろしま(広島)」の逆さ読み。そこに「真っ白な気持ちになってスタートする日」という意味をかけている。では、山崎たちにとっての「ましろ日」とは――。
小学館ビッグコミックBROS.net「視覚障害の方向け特設ページ(https://bigcomicbros.net/webstory/6515/)」にて原作シナリオを公開中。

■『マーダーボール』全4巻

『マーダーボール』

肥谷圭介・作
講談社

車いす同士でぶつかり合うその激しさから、「マーダーボール」(殺人球技)の異名を持つ車いすラグビー。この競技に出会うのが、JK(女子高生)の海野アサリだ。アサリは将来有望な体操選手だったが、家族とともに乗っていた車で交通事故に遭い、車いす生活となる。明るく振る舞ってはいたものの、「障がい者だから」と周りから気をつかわれることに疲れていたアサリが、車いすでぶつかり合う快感と競技の面白さに目覚め、弱小車いすラグビーチーム「ラックス」に加入。交通事故で寝たきりになった弟や、アサリと弟を治そうと宗教にすがる母親から反対されながらも、競技にのめり込み、スピードを武器に頭角を現していく。国内最高峰の大会・日本選手権出場を目指し、ときに衝突しながらも成長するアサリとラックスのメンバーたち。ラックスは格上チーム相手にどう挑むのか。そして、試合の結果は――。最終場面は東京2020パラリンピック。実際にこんなシーンが見られるのではと想像すると、ますます本番が待ち遠しくなる。日本車いすラグビー連盟監修。


作者の肥谷圭介氏(左)と岸光太郎選手(右)講談社のコミックDAYSで<対談記事>公開中

魅力的な物語に込められたパラアスリートや周囲でサポートする人々の熱い想い、そして競技の魅力に触れれば、パラスポーツがもっと好きになること間違いなし! 秋の夜長のおともに、ぜひ手に取ってみてください。

text by TEAM A
key visual by X-1