芦田愛菜さん、主演映画イベントで「信じること」の発言が話題 子どもを「本好き」にするには?


女優の芦田愛菜さんが、9月3日に行われた、映画「星の子」(10月9日全国公開)の完成イベントで話した、「信じること」についての考えが反響を呼びました。「信じるとは?」と聞かれた芦田さんは、「その人自身を信じているのではなく、理想の人物像に期待している。裏切られたというのは、その人が裏切ったのではなく、見えなかった面が見えただけ。それでも『それもその人』と受け止められる揺るがない自分がいることが、信じるということ」のように回答(一部要約)。その思考力と表現力が称賛を集めました。

発言により、読書の影響が改めて注目されています。芦田さんは幼少期から本に親しみ、年間100冊以上を読むという無類の「本好き」としても知られています。読書はどのような力を育むのでしょうか。また、子どもを「本好き」にする方法は。国語教育に重点を置く塾講師の小田原漂情さんに聞きました。

幼少期の読み聞かせで「文章を読み取り、自分で考える力」を育む。子どもの手の届くところに多彩な本を用意し、子ども自身が興味のある本を見つける体験を

Q:幼いうちから読書が習慣づけられると、どのような力が育まれますか?
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「論語」に「子曰はく、『学びて思はざれば則ち罔し(くらし)、思ひて学ばざれば則ち殆し(あやふし)』」という有名な一節があります。すなわち、「人から学ぶだけで、考えなければ理解できない。考えるばかりで人から学ぼうとしなければ、独断に陥る危険がある」の意です。読書はまさに、「学びて思ふ(学んで、知識を自分の考えに取り込む)」ことと「思ひて学ぶ(自分で考えながら人からも学ぶ)」ことを自ら繰り返す営みだと言えます。

読書により、新たな、豊かな知識を得るとともに、思考力と判断力を育むことができます。思考力と判断力は、感じたことを深く考える力、得た知識をどう使うか判断する力のことで、表現力とあわせ、2020年度に小学校から順次実施されている改訂学習指導要領にも引き続き盛り込まれた、これからの子どもたちに必要な力です。

Q:乳幼児のうちは読み聞かせが有効と言われます。その効果はどのようなものですか?
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国語教育の根幹は、「音読」にあると考えています。音読の最大の効用は、「音韻(おんいん)」の力を、読み手が直接取り込むことができることです。「音韻」とは、一つ一つの言葉が持つ「調べ」が文としてつながる上で響き合い、生み出されている個々の文章ならではの意味や味わいのことを指します。その音韻を感じながら文章を読み取ることができると、表現されていることを深く理解することができるのです。

乳幼児のうちからの読み聞かせは、「音読」する下地を早くから身につけることになります。

そのため、幼いころに読み聞かせの体験がある子どもと、ない子どもでは、「文章を読みとり、考える力」に大きな差が出ます。特に、乳幼児期に「スマホで子守」のような体験しか知らない子どもは、小学生になったときに、文章を読みとることも難しいかもしれません。また、子どもが親の愛情を感じとる機会としても、読み聞かせは重要です。

当塾で、幼稚園の先生を目指して受験勉強中の、ある高校生が、大学の志望理由に「幼児期にお母さんが読み聞かせをしてくれたことが、今でも自分の中で大きな財産だ」というように書いていました。読み聞かせが子どもの成長にもたらす効果はとても大きいと思います。

Q:小学生以上では、読み聞かせに代わる、効果的な本の与え方はありますか?
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小学生になったら、「自分で音読」することをおすすめします。いつまでも親が読み聞かせをするのではなく、自分から文章を読む姿勢を育みます。読書は、「攻め」の行為だと言えます。真の読書とは、本に書かれている字面を表面的に追うだけでなく、「行間を読み取る」ことが必要です。文章の奥にある深い意味を自分でつかみ取る積極的な行為なのです。

ただ、最初から子どもだけで文章を読むことが難しければ、親子で音読をするのもいいかもしれません。当塾で使用している音読の教材を、親子で一緒に音読をしているという家庭があり、保護者から、「子どもの国語力が上がった」と効果を実感する声がありました。

Q:子どもが読む本は、どのように選ぶといいですか?
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一言でいえば、「子ども自身が興味を示す本」を選ぶことです。「読書といえば文学書や小説」などと決めつけず、動物や魚など好きなジャンルの図鑑、鉄道や車、スポーツ関連の本でも構いません。「まんが日本昔ばなし」シリーズ(川内彩友美編、講談社刊)のようなアニメを書籍化したものも、子どもにとっては親しみやすいでしょう。

初めは、文章の理解を助けてくれるイラストや写真など画像があるものでもいいでしょう。ただ、徐々に、文章のみで読む力を鍛えていくことが望ましいですね。また、「絵本は小さい子のもの」と親が取り上げてはいけません。絵本は、単に絵のみを追って楽しむものでなく、文章をしっかり読むものも多くあります。

例えば、「100万回生きたねこ」(佐野洋子作・絵、講談社刊)は、幼稚園などで読み聞かせをすることが多い絵本ですが、当塾では、毎年、小学校3年生を対象に、結末の理由を考える課題を出しています。文章の奥の意味まで感じ取ることができる年齢になって読み直すと、幼児期とは違った発見ができる絵本もあります。

Q:子どもを「本好き」にする方法はあるのでしょうか?
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まず、子どもの手の届くところに本がある環境を作りましょう。子どもは本来、自分で行動し、何かを見つけてくるものです。子どもが自然に手を伸ばし、関心を向けるところに「本」がある環境が理想です。例えば、リビングルームにさまざまなジャンルの本が並ぶ、家族共有の本棚などがあるといいですね。

理想の本棚を自宅に用意することが難しくても、図書館や書店など、たくさんの本の中から子ども自身が興味を持てるものを見つける機会も大事にしましょう。その上で、子どもが読んだ本について、親子で話し合う機会を持ちましょう。実際、本を読んだ感想を聞いても「何も感じなかった」と答える子どもは少なくありません。それでも、大人側が「『ごんぎつね』(新美南吉作)のラストシーンはどう思った?」のように、具体的に聞いてみると、どんな子も何か自分が感じたことを答えます。

最初から、感想を聞かれて、表現する術を知っている子どもは少ないものです。大人が丁寧に聞き出し、さらには感想文として自分で表現できるようになると、ますます子どもの読書への意欲は高まるでしょう。

(小田原 漂情:塾講師)