時代の流れとともに、これまでにない職業が増えている昨今。今年、またユニークな仕事がひとつ誕生しそうだ。その名も、クリエイティブコミュニティコーディネーター(略:CCC)。新しいまちづくりをデザインしていく仕掛け人だ。この募集プロジェクトが行われるのは、徳島県三好市。自然と歴史が穏やかに息づく、世界からも訪れるべき秘境と賞賛されている町だ。しかも全国から募集し、移住コーディネーターとして活躍してもらうという。意欲があれば特に年齢制限もない。一体、どんな仕事なのだろうか?プロジェクトを仕掛けたNPO法人 Ubdobeと現在先輩CCCとして働いている社会福祉法人 池田博愛会の木村公明さんに話を伺った。

こんなに素敵な場所なら、もっと色んな人が来ればいい

――徳島県三好市では、近年、新しいまちづくりの一環でユニークな取り組みが活発に行われ、県外から移住し起業する若者も増えているなど、興味深いお話を前編でご紹介させていただきました。このクリエイティブコミュニティコーディネーター(略:CCC)も、そんな三好市を盛り上げていくひとつとして立ち上がったそうですが、具体的な内容や募集プロジェクトが立ち上がったきっかけなども教えてください。

CCC 木村公明さん(以下、木村):まず、三好市は古くから地域福祉のマインドが根付いている町なのですが、約4年前からより具体的に、子どもも大人も高齢者も障がい者も、あらゆる世代を超えてみんなが交流できるようにしよう、という地域再生が始まったんです。県外から移住してきた若手を中心に、新しい視点やアイデアを盛り込んだ交流拠点や施設を作ったり、イベントを企画したり、様々な取り組みを行なっています。みんなすごく楽しんでいて、こういった人材をもっと三好市に呼び込もう!ということで、Ubdobeさんが今回のCCC募集プロジェクトを立ち上げてくれました。

――医療福祉と音楽やアート、デザインなどのエンターテインメントのコラボレーションを軸に、あらゆる人々が積極的に社会参加できることを目指して様々な活動をされていますが、三好市の魅力はどんなところでしょうか?

Ubdobe 代表理事 岡勇樹さん(以下、岡):元々、三好市から講演の依頼があってお付き合いが始まったんですが、市内を見て回ったり、地元の方々と交流を持ってみて、すごく良い町だなぁ、人もみんな面白いなぁ、と。こんなに素敵な場所なら、もっと色んな人が来ればいいのにと思ったんですよ。そこから三好市の魅力を発信する企画だったり、デザインだったり、広報的な役割を3年位前から僕らがサポートし始めたんですが、個人的には、いつもはしない行動をとってしまうほどこの地域が好きだなぁと、特別な感じがしてますね。

Ubdobe 萩原頌子さん(以下、萩原):ありきたりな言葉になっちゃうんですけど、みんな本当にめちゃめちゃ人が良いんですよ。人と人との距離の近さが残っている地域なんですよね。ちょっとした家族みたいな関係性が地域中に広がっていて、〇〇さんちのあの子が最近、学校楽しそうだよね、とかあの子は将来こういう道に進みたいらしいんだけど大丈夫かしらとか、地域全体で当たり前にお互いを気遣い合っている関係性ができているんです。懐かしいというか、若い世代には逆に新しさにも捉えられるような人と人との関係性が一番の魅力かな、と思います。

岡:すごく深く地域のことを考えているんだけれども、真面目になりすぎていなくて、いい意味で大雑把なところがあるのもいいんですよね(笑)。多少ボロが出てきても、そっちの方が楽しいよねというスタンスで。そういうラフさがあるから移住者もスームズに受け入れられるし、若手がやりたいことをやって活躍できるんだと思います。

“生きる”豊かさを感じて楽しみながら働く

先輩CCCとして働く、障がい者支援員の木村公明さん。三好市出身。現在は香川からUターンして三好市に在住。「障がいがあってもなくても、みんなが快適に過ごせるまちづくり」をモットーに活躍中

――木村さんは、先輩CCCとしてすでに働いているとのことなのですが、CCCの仕事の楽しさはどんなところでしょうか?

木村:実はCCCという名前は後付けで、元々僕は、障がいがあってもなくても、高齢者でも子どもでも、みんなが生きやすい、笑っていられる町を作りたいと思って色んな活動をさせてもらっていたんですが、その活動をUbdobeさんが、いいね、面白いね、こういうことをできる人がもっと増えるといいよね、ということで、クリエイティブコミュニティコーディネーター(CCC)というかっこいい名前をつけてくださいました。福祉施設で働きながら、農業と福祉を連携するプロジェクトや楽しみながらできるボランティアを企画したり、子どもたちを山に連れて行って一緒に体を動かしたり、休みの日に地域の人たちとお祭りをしたり、仕事というより「生きる」ということを楽しんでいる感じですね。わざわざお金を払って趣味を楽しまなくても、三好だと毎日生きているだけで十分色んなことができるし、自分たちでなんでも作り出して楽しめるんです。それを地域の人も受け入れてくれる土壌がある。そういった三好ならではの豊かさを一緒に楽しんでくれる人が、CCCに来てくれるといいなと思っています。

――CCCならではの、まちづくりのポイントはなんだと思いますか?

萩原:まちを作る上で一番大事なのは、やはりそこにいる人間といいますか、いかに沢山の人が関わって作るか、ということなんじゃないかと思います。例えば、障がいのある方や高齢者の方がどこか行きたい場所があったとして、そういう時に近くにいる人がそれを知って、一緒に行こうと誘ったり、実行したり、行くための情報を教えたり、つまりそこにいる人たちがいかにその人たちを巻き込めるかがポイントで、人と人との関係性でどんどん作られていくもの。多種多様な人がお互いどんどん関わり合って、一緒に中に入り込んで作り上げていく、それが当たり前になるような場づくりをCCCが担っていけるといいと思いますね。

――CCCの仕事は、三好市以外にもありますか?

萩原:私たちが運営している団体自体は、三好市のほかにも、実は島根県や沖縄県の離島などとも連携をとっているのですが、ご一緒させていただく地域は、やはり三好市と同じように魅力的な地域で、そこにいる人たちが意思を持ってプロジェクトを作ろうとしていたり、福祉としても先進的だったり、勢いがあったりするんですね。現状はまだないのですが、三好市のようなCCCはモデルとして、今後同じように魅力的な地域に広がっていって欲しいなと思っています。

もっと楽しく、自由に。福祉の新しい働き方を提案

――CCCのベースになった「福祉留学」というユニークなプロジェクトがあるそうですが、どんな内容なのでしょうか?

萩原:福祉に興味のある学生が、1〜4日間といった期間で自分が住んでいる地域以外の場所へ行って、その地域の福祉事業所の中で一緒に仕事を体験しながら、地域福祉・地域包括ケアというものに触れるプロジェクトです。希望者が行きたい地域と受け入れる地域をマッチングさせるシステムになっています。

――「福祉留学」のメリットは?

萩原:最近、教科書で地域包括ケアをしましょうということがすごく言われる時代になったんですが、じゃあ実際にそれって何なのか? 現場ではどう行われているのか? やはり学校だけでは学びきれないんです。内容も地域によって多様だと思うので、自分が住んでいる地域以外へ行く、というのもポイントです。自分の知っている、住んでいる地域だけを見て、そこへ就職してずっと働く、というのがこれまではありがちだったんですが、これからは若いうちからもっと色んな地域を見て視野を広げていくことが大事だと思っています。そうすることで福祉職が、より自由に、日本中をフィールドにして活躍できる仕事になると思います。

岡:福祉の学生って、学校周辺の実習先しか行けなくて、基本的にはそこから就職先を決めるという風潮があるんですよね。で、就職したらしたでその職場を辞めることがすごく難しい雰囲気が昔からあって。僕は福祉職も、自分が好きな場所で自由に働く、自分が納得している状態で働く、というのが一番良いし、どんな人にも自由に選択できる環境があるべきだと思っています。

萩原:福祉の資格を持っているというのは強みであって、すごく必要とされている、そこを生かして福祉職ってこんなに楽しい仕事なんだよ、ということを実践する人がもっといて良いと思うんです。自由で楽しい働き方を発信することで、今まで福祉に関心がなかった人とか、例えば旅に興味があって全国を飛び回りたいといった動機の人も、福祉の仕事って面白そうだなと思えるきっかけになってくれるんじゃないかと思います。

岡:将来的には、国外の面白い福祉施設にも留学できるような仕組みにしていきたいですね。

学生が抱く福祉のイメージは、実は「ワクワク」!?

――福祉留学の募集を行って、募集に来た学生たちが抱く福祉への思いがとても興味深かったそうですね。

Ubdobe 三木柚香さん(以下、三木):募集してからわりと早い段階で、100名くらいの方が応募してくれたのですが、学生さんと話す機会が増えて感じていることは、一般的に言われている福祉に対するイメージと彼らが抱いているイメージが結構違うことが多かったんです。彼らは、福祉に対して、地味だとか大変だとかという思いを持っていなくて、むしろもっとワクワクしたもの、社会を変えていくものと捉えていますし、その前提として人が生きていく、死んでいくということ、人生の営みの根底にあるものにちゃんと関わっていきたいということを、熱い想いを持って志している学生さんが本当に多かったのが印象的でした。

――「ワクワク」というところでいうと、「最高に楽しい福祉」を推進されていると思いますが、実現するためのポイントとは?

岡:考え方の順番としては、福祉のイメージを変えるためにこれをやろう!とかではなくて、具体的に、今こういう人がこういうことで泣いている、じゃあその人が笑うためにこういうことをしたらいいんじゃないか?ということから作り始めて、その後に周辺からこれいいね、という声が集まって、段階的に大きくなっていく感じですね。

例えば、私たちの事業の1つに「デジリハ(デジタル・インタラクティブ・リハビリテーション・システム)」というのがあるんですが、これも僕の友人の子どもが泣きながらリハビリをやっている動画を見たことがきっかけでした。この動画を見たときに、もっと楽しいリハビリにしたらいいんじゃないか?と思いついたんです。デジタル技術を使って、インタラクティブ・アートやゲームの手法をリハビリに取り入れることによって、子どもたちが「楽しい」「もっとやりたい」と思ってくれるようなリハビリになればと思い、現在開発中のプロジェクトになっています。「ワクワク」「楽しい」と感じる種類は人それぞれだと思いますが、僕は音楽やアート、カルチャー、ダンスといったところと掛け合わせて楽しい福祉を発信していることが多いですね。

――なるほど。今後、福祉の未来はどう変わっていくと思いますか? 未来予想図などはありますか?

萩原:未来予想図は、逆に無いくらいがいい。いい意味で予想できないことが起こる福祉であって欲しいと思ってます。福祉って当事者次第といいますか、その人が何をしたいか、どう生きたいかに依存する業界なので、その人らしさをその人自身がどんどんクリエイトしていくことができるようにサポートする仕事だと思うんですよ。なので、それぞれがそれぞれのやりたいことを好きに作っていくことで、カオス感といいますか、予想できなかったことが起こることを目指したいですね。

三木:便宜上、これからの未来は〜といった言葉は、使われはするんですけど、みんなに発信したい、気づいて欲しいというよりは、福祉で一番大事なのは、今、目の前で起こっていること、話している人に真摯に向かい合うことだと思うんです。原点といいますか、具体的な人間の躍動みたいなものを目の前で見て感じることが大切だと、これまで行ってきた福祉留学や関わってきた事業所さんたちとのやり取りの中で教わりました。

岡:先ほども言いましたが、僕自身は当事者も福祉に関わる仕事をする人も、とにかくみんな自由に選択肢があっていい。否定するのでもなく、無理に設定するのでもなく、それぞれが自由に生きていければいいと思うんです。前に、デイサービスで働いていたんですけど、おばあちゃんに配膳したときに「あんた飯食ったんか? まだなら、隣で食べなさい」って言われて、上司に一緒に弁当食べますって伝えたら、絶対ダメだと言われて。ルールがあるからと。目の前にいる可愛いおばあちゃんが「一緒に食べよう」と言ってくれて、それに普通に応えられない福祉って何だろうって。福祉の現場で起きるそういった違和感がだんだんと溜まっていって……。
自分たちの団体を立ち上げたのもそういう理由からなんです。福祉業界の中で異端だとか今までに無いことをやっているってよく言われるんですが、僕ら自身は真逆の感覚で、おばあちゃんと普通に人と人として会話して、一緒にご飯が食べられたらいいよね、っていうすごく普通なことを普通にやろうとしているだけなんですよ。そういう意味で、これからも全ての人が普通に自由に選択できるようになっていったらいいなとは思っていて、CCCという職業もそういった社会づくりのひとつになっていければ嬉しいですね。

国内の高齢化問題とともに、世界的にも人種、性別、障がいのあるなし、セクシャリティといった面で多様性のある社会が求められている昨今。これからは、各地の福祉のあり方が今後の社会の重要なキーとなっていくだろう。今回紹介したクリエイティブコミュニティコーディネーターのような、これまでのルールにとらわれない新しい発想をいかした先進的な福祉の取り組みに、今後も注目したい。


三好市の池田博愛会とUbdobeのコラボレーションプロジェクト「MEUTRAL」はこちら
https://meutral.com/

福祉留学
https://fukushi-ryugaku.com/

この記事の<前編>はこちら↓
世界から注目される秘境の地に、なぜ若者が移住し起業するのか 【前編】
https://www.parasapo.tokyo/topics/27845

text by Parasapo Lab
photo by NPO法人Ubdobe