JR九州は29日、新D&S列車「36ぷらす3」の完成披露報道公開を実施した。九州各地で活躍する特急形電車787系の1編成(6両編成)を改造し、同社初の電車によるD&S列車として、10月16日の運行開始を予定している。

  • JR九州の新D&S列車「36ぷらす3」が報道関係者らにお披露目された

787系は1992(平成4)年デビューの特急「つばめ」を皮切りに、現在も「かもめ」「きらめき」「にちりん」「きりしま」などの特急列車で活躍中。新D&S列車「36ぷらす3」は、787系の面影を残しつつ、「九州のすべてが、ぎゅーっとつまった“走る九州”といえる列車」のコンセプトを体現する列車に生まれ変わった。外観は黒メタリックの仕様とし、各所にゴールドのアクセントを加えた。JR九州の特急車両に使用される「AROUND THE KYUSHU」のロゴをベースに、「36+3」とデザインしたオリジナルロゴも車体に掲出している。

「36ぷらす3」は全車グリーン車とされ、1・2・3号車は個室、5・6号車は座席タイプの客室に。1号車は畳敷きの空間となっており、既存の個室1室に新設の個室3室を加え、1室あたりの定員は4席。クラシックな雰囲気の落ち着いた色調を採用し、新設の個室はパーテーションの高さを抑え、明るく開放的な空間をめざしたという。

  • 「36ぷらす3」の外観は黒メタリックを基調にゴールドのアクセントをあしらい、車体の各所にオリジナルロゴもデザイン

  • 1~2号車のグリーン個室。1号車は畳敷きで、個室4室のうち1室は既存の個室を改造した。2号車には車いす対応座席も

2号車は個室3室を設け、1室あたりの定員は6席。車いす対応座席も2席用意した。3号車は個室6室を設置し、1室あたりの定員は2席。17年ぶりの復活というビュッフェも3号車に設置され、ドーム天井を生かしたモダンで近代的なイメージのデザインに。中央部にカウンターを設け、九州の魅力的な飲み物や食べ物を提供するという。

4号車はマルチカー。共用スペースとしてくつろぎの時間を提供するほか、沿線の魅力を伝える動画の上映、客室乗務員の案内による体験メニューも予定している。グリーン席は5号車に30席、6号車に27席を用意し、6号車は1号車と同じく畳敷き。編成全体の定員は計105席となる。

  • 3号車は1~2名で利用できる個室6室とビュッフェを併設。ドーム天井も活用した空間に

  • 4号車はマルチカー。ミニカウンターや動画を放映するモニターが設置されている

  • 5~6号車のグリーン席は横3列(1列+2列)の配置。6号車は畳敷きの空間となっている

「36ぷらす3」の完成披露報道公開はJR九州の小倉総合車両センターにて行われた。同社代表取締役社長執行役員の青柳俊彦氏、デザインを手がけたドーンデザイン研究所代表の水戸岡鋭治氏をはじめ、「36ぷらす3」の停車駅でおもてなしを行う沿線の関係者らも出席。従来の787系も会場に展示される中、青柳社長の呼び込みで「36ぷらす3」が入線し、車両がお披露目された。あわせて「36ぷらす3」に乗務するクルー(車掌、客室乗務員)の制服も披露された。

青柳社長は改造前後の車両を見比べながら、「36ぷらす3」について「外観も中身も大きく変わっています。ぜひご期待ください」とコメント。畳敷きの客室にも触れ、「そんなことする人がいるんですね。設計する人もする人ですけど、それを了解する会社も会社だなと思いながら、完成した車両を見ました」と話し、出席者の笑いを誘う場面もあった。続いて挨拶した水戸岡氏は、「新しい車両のデザインも楽しいのですが、いまにも壊れそうなものをもう一度蘇らせることも大切な鉄道の文化。いままでの『使い捨て』を変えるという今回のプロジェクトは非常に意義があり、30年前に作った車両を蘇らせる仕事に出会えて、私にとっても幸せなことでした」と述べた。

  • 完成披露報道公開では、従来の787系と改造後の「36ぷらす3」が並び、「36ぷらす3」に乗務するクルーの制服も披露された

新D&S列車「36ぷらす3」は、10月11日に博多駅で行われる特別内覧会の後、10月16日の鹿児島中央~宮崎間(金曜日ルート)から運行開始。鹿児島中央駅では発車に合わせ、同日11時30分頃から出発式が開催される。翌17日は宮崎空港~別府間(土曜日ルート)、18日は大分~小倉~博多間(日曜日ルート)を走行した後、博多駅で再び特別内覧会を実施。10月19日は博多~長崎間を往復(月曜日ルート)する。なお、博多~鹿児島中央間(木曜日ルート)については、「令和2年7月豪雨」の影響で肥薩おれんじ鉄道の一部区間が運転見合わせとなっているため、同区間の復旧の見込みが立ち次第、改めて運行計画を発表するとのこと。

いずれのルートも、利用者が乗車・降車する駅とは別に10~50分程度停車する駅があり、地域の特産品販売などのおもてなしが予定されている。「36ぷらす3」に乗車できる旅行プランとして、地域の「美味」を楽しめる食事付きのランチプラン・ディナープランと、気軽に乗車できるグリーン席プラン(きっぷ)の2種類を用意しており、「36ぷらす3」専用サイトまたは「36ぷらす3」ツアーデスク(電話)にて予約を受け付けている。