スマートフォンにおけるPDF文書の閲覧はあまり優れた体験とは言えない。それはPDF文書はスマートフォンで読むには横に長すぎ、かつ、文字が小さすぎることが多いためだ。PDF文書はPCやタブレットデバイスのような大きなスクリーンで読むのには向いているが、スマートフォンでは読みにくい。通常、スマートフォンでPDF文書を閲覧する場合、ズーム機能とスライド機能を使って読むことになるが、これは読みやすいとは言い難い。

しかし、この状況が変わる可能性が出てきた。Adobeが「Adobe unveils ambitious multi-year vision for PDF: Introduces Liquid Mode」において、PDFをAIでモバイル用に変換する機能「Liquid Mode (リキッドモード)」を無償で提供すると発表したのだ。

「Liquid Mode」は初めにiOSとAndroidのAcrobat Readerアプリで提供され、順次デスクトップとブラウザでも提供されるという。

  • スマホで動作するAcrobat ReaderのLiquid Mode - 資料: Adobe提供

    スマートフォンで動作するAcrobat ReaderのLiquid Mode 資料: Adobe

AdobeのAI基盤であるAdobeSenseiを搭載した「Liquid Mode」は、AIと機械学習を用いてPDF文書の内部構造を解析し、読みやすいテキストに変換して表示する機能となる。

WebブラウザがWebページを読みやすく変換する「リーダービュー」(リーダーモード、リーダー表示とも)に似ており、解析されたテキストがスマートフォンのスクリーン上で読みやすいように再構成された上で表示される。ブックリーダーで書籍を読んでいる時のようにフォントサイズの変更などが行え、スマートフォンでのPDFファイルの閲覧体験がよくなる。

これまで、スマートフォンにおけるPDFファイルの閲覧は快適とは言い難いものだった。Acrobat Readerの「Liquid Mode」はすべてのドキュメントに適用できるわけではないが、こうした状況に一石投じる可能性がある。今後、この機能がどのような使われ方をしていくのかが注目される。