新型コロナウイルスの流行や記録的な猛暑など、日々の過ごし方が大きく変わった今年。連日のコロナ報道によるストレスや暑すぎた夏からの寒暖差など、例年より疲れを感じやすい方もいるのではないでしょうか。

前編に続き、「疲労外来」の医師として数多くのテレビ出演や書籍の出版を行っている内科医・工藤孝文先生に、新型コロナウイルスの感染拡大に伴う自粛傾向やストレスへの対処法について聞きました。

  • 心と体の「コロナ疲れ」に効果的な対処法とは?※画像はイメージ

――新型コロナウイルスの流行で家で過ごす時間が増えていますが、この現象は健康にどういう影響があるのでしょうか。

工藤先生:家にいる時間が増えて体内時計が乱れることで、太りやすくなったり鬱になったりしがちです。人間の体内時計は脳に「親時計」があり、心臓や肺などそれぞれの臓器に「子時計」があります。規則正しい生活……たとえば朝食を食べると、胃の「子時計」を動かす刺激になります。規則正しい生活をすることで体内時計もうまく動き、夜はしっかり眠くなるといった生活リズムを刻みやすくなりますが、生活リズムが乱れると、体内時計も乱れてきてしまうんです。そうすると、本来なら朝増えるはずのセロトニンが増えなくなり、自然な眠りを誘うメラトニンも夜増えなくなります。

また、セロトニンが減ると糖質を欲するので、太りやすくなります。自粛ムードで外で行う趣味ができなくなるなど刺激が減ることでドーパミンが少なくなるので、それを補うために油っこいものを食べたくなったりもします。結果としてむくみや便秘、やる気が起きないなどの症状が出やすくなるんです。

対策としては、家にいる日でも一日のスケジュールをきちんと決めることです。これは私が実際に行っていることですが、起きる時間や食事の時間など細かくスケジュールに起こし、すべてスマートフォンでアラームをかけて管理しています。

家にいるとどうしてもついほかのことに気を取られてしまいがちですが、細かくアラームで管理することでだらだらせず、規則正しい生活を送ることができます。私は「20分昼寝をする」「水を500ml飲む」といったことまでアラームで管理しているのですが、とくに朝起きてすぐ、「5分間朝のサンダル散歩をする」と入れて実行してみると、自律神経を整えることにもつながるのでおすすめです。

――新型コロナ関連のニュースが連日報道され、「コロナうつ」というワードが出てくるなど、精神面にも影響がありそうですがいかがでしょうか。

工藤先生:本当は報道自体をやめてほしいくらいです。毎日何度も死者数などの情報が入ってくると、やはり精神面にマイナスな影響があります。テレビ以外からも情報が入ってくるほどなので、疲れを感じている人はコロナ関連の報道は思い切って見ないことにしてもいいかもしれません。

22時以降はセロトニンがメラトニンに変わってマイナス思考になりやすいので、とくにコロナ関連のニュースは見ないことをおすすめします。できればバラエティ番組など、肩の力を抜いて楽しく見られるものを見ていただきたいですね。気になる方は「一日1回だけ」など、コロナ関連のニュースを見る回数を決めるといいと思います。

ちなみに私の患者さんには、22時以降はスマートフォンもなるべく見ないほうがいいとお伝えしています。どうしても見てしまうという方は、設定で夜間の画面表示を暖色系の色に変えたり照度を落としたりすると、メラトニンが増えやすく、寝付きがよくなります。

――しばらく続きそうなコロナ禍において、免疫力を上げるポイントを教えてください。

工藤先生:免疫力を上げるには、3つのポイントがあります。

(1)自律神経を整える
(2)腸内環境を整える
(3)低体温にならない

(1)の「自律神経を整える」については、一日の中でしっかりとメリハリをつけることが大事です。自律神経は、交感神経と副交感神経、つまり「オン」と「オフ」をうまく切り替えられないと狂ってしまいます。朝コーヒーを飲んだりアラームを使ったりして日中にしっかり「オン」モードに入ることで、夜は自然と「オフ」モードへ入ることができます。

(2)の「腸内環境を整える」については、腸の調子を整える食べ物や飲み物を積極的にとることが重要です。食べ物ならヨーグルトやおから、飲み物ならボタニカルティーなどもおすすめです。「インナーボタニカル」という概念も最近注目されており、紅茶に果物やハーブを混ぜることで、ご家庭でも手軽に作ることができます。

(3)の「低体温にならない」については、お風呂の際、自律神経に負担をかけないよう約40度のお湯に15~20分くらい入るのが効果的です。体温が1度上がると、免疫力が5~6倍上がると言われています。逆に体温が低いと免疫力が低下してしまうので、お風呂で体を温めましょう。ただし、お湯の温度を熱くして無理に体温を上げようとすることは、自律神経のバランスを崩す可能性があるので避けてください。理想としては、免疫力が一番高まる37度に体温を近づけるとよいと言われています。


手洗いやうがいなど、さまざまなコロナ対策がありますが、まずは心身の調子を整えることが大切です。工藤先生によると、いきなり毎日運動するなど大変なことをする必要はありません。できることから少しずつやっていきましょう。

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工藤孝文

福岡大学医学部卒業後、アイルランド、オーストラリアへ留学。帰国後、大学病院、地域の基幹病院を経て、現在は、福岡県みやま市の工藤内科で地域医療を行っている。糖尿病・ダイエット治療・漢方治療を専門とし、NHK「ガッテン! 」、日本テレビ「世界一受けたい授業」、フジテレビ「ホンマでっか! ?TV」へ肥満治療評論家・漢方治療評論家として出演するなど、メディア出演多数。日本内科学会・日本糖尿病学会・日本肥満学会・日本抗加齢医学会・日本東洋医学会・日本女性医学学会・日本高血圧学会・小児慢性疾病指定医。