SEMIが米国商務省のSMIC制裁に反対を表明

米国商務省が中国のファウンドリSMICに制裁を加えることを検討していると伝えられているが、これに対処する動きが米国、台湾、中国の半導体業界で活発になってきている。

半導体製造装置・材料の業界団体である国際半導体製造装置材料協会(SEMI)は、米国商務省にその施策に反対する書簡を送ったと米国ならびに台湾メディアが報じている。

SEMIの主張は、米国の半導体製造装置や半導体材料をSMICに輸出できなくなること、ならびに半導体企業がSMICに製造委託できなくなることは、米国の半導体業界や半導体製造装置材料業界にとって「有害」であり、米国の技術的優位性を損なうというもので、そのため、SMICのエンティティリストへの追加によって起こりうる米国の産業、経済、国家の安全に対する悪影響について慎重に検討するよう要請しているという。なお、SEMIならびに米国商務省はこの件について正式なコメントを発表していない。

Qualcommが生産委託先をSMICから台湾へ変更か?

米国政府によるSMICへの制裁がどうなるかは9月24日段階では不明だが、すでにQualcommは、予想される米国政府によるSMICとの取引中止命令に備え、SMICに生産委託している半導体チップを、台湾のファウンドリに移管する準備を進めていると台湾の複数のメディアが報じている。

SMICの総売り上げに占めるQualcommの割合は約13%ほどで、Huawei/HiSiliconに次ぐ規模だという。この動きを報じた台湾メディアによると、すでにQualcommの幹部は9月中旬にTSMCやUMCなど台湾ファウンドリを訪問し、SMICに製造を委託していた製品群を移管する打ち合わせを行った模様だと伝えている。

中国ファブレス勢も台湾依存、ウェハ価格が高騰

中国政府は、米国商務省がSMICに制裁を与える可能性があることを受け、中国内に拠点を置くすべてのファウンドリ(TSMCの天津工場など外資系含む)に対し、中国系ファブレスメーカーからの生産委託を優先するよう求めたと伝えられる。一方、その中国ファブレスメーカー各社は台湾ファウンドリへの発注を増やしており、その結果、台湾ファウンドリ各社の生産能力が需要に追い付かない状況となっていることから、一部の台湾ファウンドリは2020年第4四半期ならびに2021年第1四半期のウェハ価格の値上げを予告しているという。

特に200mmウェハを用いたレガシーデバイスの供給がタイトであり、値上がりが顕著となっているほか、納期を従来の2か月半~3か月程度から、半年以上へと延ばしたファウンドリもあるという。

SMICは米国製半導体製造装置を使わない製造ライン構築へ

米国商務省のHuaweiに対する制裁は、SMICを含むすべての半導体メーカーが米国製半導体製造装置を用いて製造した半導体製品をHuaweiに対して販売することを禁止するというものであるが、SMICへの制裁として今後、米国製半導体製造装置のSMICへの販売を禁止することが予想される。

このため、SMICは年内にも米国製半導体製造装置を用いない製造ラインを立ち上げることを目指し、米国以外の半導体製造装置メーカーに協力を求めているが、それだと40nmプロセス程度が微細化の限界となる模様である。

中国にも、AMECのように、最先端の7nm/5nmロジックおよび128層NAND向けドライエッチング装置を製造できる企業(創業者は元Applied MaterialsおよびLam Researchで装置開発経験のある中国人技術者)もあるが、全般的には、先端プロセス向け装置を製造できるメーカーは育っておらず、日米の装置メーカーに依存しなければならない状態にある。このため、中国政府は、多額の補助金を支出し、半導体製造装置メーカーの育成に注力し始めている。