早稲田大学(早大)は9月24日、3Dプリンタとめっきの両技術を統合して利用することで、プラスチックと金属で構成される立体を造形できる「ハイブリッド3Dプリンタ技術」の開発に成功したと発表した。

同成果は、早大理工学術院の梅津信二郎 教授、シンガポール南洋理工大学の佐藤裕崇 准教授、吉野電化工業の曽根倫成氏らの共同研究チームによるもの。詳細は、学術誌「Additive Manufacturing」(オンライン版)に掲載された。

3Dプリンタのうち、FDM(Fused Deposition Modeling:熱溶解積層)方式の発展はめざましく、現在ではプラスチック用の安価な個人用から金属用の高額な工業用途までさまざまな価格帯・機能の製品が出回っている。

ところが身の回りを見回すと、エレクトロニクスの基板などのように、実はプラスチックと金属の双方で構成された造形物は意外と多い。しかし、残念なことにこれまでの3Dプリンタでは、フィラメント(材料)としてプラスチックと金属の両方を1つの造形物に対して使用することは難しかった。

そこで研究チームは今回、3Dプリンタ技術にめっき技術を組み合わせることで、この問題を解決することを目指し、無電解めっきを施すことが可能なフィラメントを独自に開発することで、めっき部(金属部)とプラスチック部の位置を制御した立体造形物の作製に挑んだのである。

具体的には、プラスチック用3Dプリンタで一般的に使用されているフィラメントであるABS樹脂に、塩化パラジウム(PdCl2)を含有させた「ABS+PdCl2」フィラメントを新たに開発。その上で、ABS+PdCl2フィラメントと、ABSフィラメントをデュアルノズルの3Dプリンタを用いて、二色刷りの要領でABS+PdCl2部分とABS部分から構成される立体造形物を3Dプリントした。

さらに完成した立体造形物に対し、無電解めっきを施すことで、PdCl2部分に金属を析出させることに成功。これにより、金属とプラスチックから構成される立体造形物を実現したとする。

なお、研究チームが今回の研究成果で嬉しい誤算だったとしたのが、析出した金属膜のプラスチック表面への密着性が予想よりも高かったことだという。ただし、密着性を向上させているメカニズムは不明なため、今後の課題としてそれを解明していきたいとしている。

  • ハイブリッド3Dプリンタ

    ハイブリッド3Dプリンタで作製されたプラスチックと金属から構成される立体造形物のサンプル。ABS+PdCl2フィラメントにまずニッケルめっきが施され、その上にさらに金めっきが施されている (出所:早稲田大学Webサイト)