金沢工業大学(金工大)は9月23日、マイクロ波(5.8GHz)による無線電力伝送に用いる受電レクテナにおいて、世界最高クラスの電力変換効率92.8%(1W入力時)を達成したと発表した。

同成果は、同大工学部・電気電子工学科の伊東健治 教授、坂井尚貴 研究員らの研究グループによるもの。詳細は9月24日に開催された電子情報通信学会マイクロ波研究会で報告された。

マイクロ波を用いた無線電力伝送技術は、遠方へケーブルなしで電力を届けることができる技術として、長年にわたって研究開発が続けられてきた。近年ではドローンや飛行船などへの送電や、FA機器への送電なども考えられるようになってきたが、古くは宇宙空間に展開した太陽電池で発電した電力をマイクロ波で地上に送ろう、というアイデアが打ち出されたこともあった。

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    受電レクテナの役割 (出所:金沢工業大学)

今回の研究では、従来の「受電アンテナ+回路+ダイオード」構成から「受電アンテナ+ダイオード」構成とすることにより回路による損失を削減し、マイクロ波から直流への電力変換の効率を向上させることに成功した。

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    今回の研究による受電レクテナの構成と写真(外径寸法 32mm×11mm) (出所:金沢工業大学)

これを実現するために研究チームでは受電アンテナの形状を工夫。従来の回路の機能をすべて受電アンテナで実現したとするほか、整流用半導体として三菱電機が開発したマイクロ波特性が良好なGaAsダイオードを適用することで、高効率を実現したとする。

なお、研究チームによると、今回の研究では1W受電での高効率化を達成したが、今後はさらに大電力である10Wの高効率受電技術の確立に取り組む予定だとしており、その実現のために、同じ研究プログラム内において名古屋大学、名古屋工業大学、三菱電機によって開発が進められている高耐圧GaN HEMT型のダイオードを用いる計画を立てているという。

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    今後の研究の流れ (出所:名古屋大学/金沢工業大学)