NECは9月24日、顔認証技術を強化し、マスク着用時でも高精度な認証を実現する新たな顔認証エンジンを開発し、関連サービスを10月上旬から順次販売開始すると発表した。

同社は、顔認証や様々な映像分析機能を組み合せて複合的なソリューションを実現する「NEC 映像分析基盤」や、複数の生体情報を活用してマルチモーダル生体認証を実現するサービス「Bio-IDiom Services(バイオイディオム サービシーズ)」などの製品として販売開始する。

通常の顔認証は目、鼻、口などの位置や形、大きさなどの特徴点を抽出し照合を行うが、今回開発した新エンジンはマスクで覆われていない目の周辺に重点を置いて特徴点を抽出する。

  • 顔認証における処理の流れ

  • マスク対応顔認証フロー概要

このエンジンを用いた社内評価では、マスク着用時の1:1認証での認証率は99.9%以上と、高い認証精度を実現したことを確認したことから、販売を開始するに至ったという。なお、1:nの集団での認証率も90%以上の高い認証精度を実現しているという。

NEC フェロー 今岡仁(いまおか ひとし)氏によれば、生体認証は指、虹彩、声、耳音響、虹彩、顔などがあるが、指、虹彩、顔の3つが市場として大きいという。

顔認証は自然な認証で心理的負担が少ない、タッチレス、認証データ登録が容易、専用装置が不要など、利便性が高いのが利点だが、顔の向きが変わる、明るさが変わる、年齢が変わる、化粧する、ひげを生やす、眼鏡をかけるなど顔のパーツの形が変わっても本人特定しなくてはいけない部分が難しいという。

  • 顔認証の難しさ

顔認証のプロセスは検出(顔を見つける)、正規化(顔の位置と大きさを合わせる)、特徴量抽出(パーツ位置等の特徴を数値化する)、照合(特徴量の近さを求める)と進むが、今回のマスク対応では、AIを活用した新技術による顔検出精度向上、限定された領域からでも本人の特徴を捉えて照合できる顔照合精度向上、マスクの有無に応じた最良の照合方法をセレクトするという照合方法の最適化という3つの改善を図り、認証精度を高めたという。

  • マスク対応の強化ポイント

今岡氏は「特徴量の抽出にノウハウがある。本人と似ている他人の違いを最大限強調するNEC独自方式により、精度を出している」と語った。

  • 顔認証のコア技術

同社は、現在実施している、NEC 本社ビル1階のウォークスルー入退場ゲートにおける顔認証と体表温度を測定するサーマルカメラを連携した入退場管理の実証実験について、本年9月末に本エンジンを適用する予定だという。

  • NEC 本社ビル1階のウォークスルー入退場ゲートでの採用