勝村政信

AC長野パルセイロ・レディースの泊志穂が9月19日放送のサッカー番組『FOOT×BRAIN』(テレビ東京系、毎週土曜24:20~)にゲスト出演。女子プロサッカーリーグ「WEリーグ」開幕まであと1年、地元に愛されるクラブの一味違った広報戦略に迫った。

2015年から長野に在籍し、その後、オーストリアとドイツでプレー。今年、長野に復帰し、唯一のプロ契約選手として活躍している。また、選手である一方でクラブスタッフとしても働いており、地域コミュニティ振興部に所属。チームの広報隊長として、YouTube動画を制作。いわゆる選手紹介動画なのだが、ほかのクラブのモノとは一味違うとサポーターからも好評を博している。

この映像を作るにあたり、泊が企画・立案・撮影・インタビュー・編集を一手に引き受けている。どうしたら選手の個性を引き出せるかを考え、選手に合わせて毎回違う質問を用意。サポーターの知らない初出し情報はもちろん、リアルな恋バナまで、選手同士だから見せられる姿を映像で記録し、新たな一面を伝えている。

また、新加入選手が多いシーズンだったことに加え、新型コロナ禍が重なり、試合はおろか練習も非公開となったため、サポーターに選手情報を露出する機会が激減。泊は「YouTubeを使ってみんなのことを知ってもらいたかった」と語り、これらの映像を見たサポーターも「新しい選手が多かったので、こういう動画を出してもらえて早く応援したいという気持ちが強くなった」と歓迎。普段、インタビューをすることが多い片渕茜アナウンサーも「私たちはあそこまで素の表情を引き出すことはなかなかできないので羨ましいです」と絶賛していた。

そんな動画を生み出す泊の一日はクラブスタッフとしての仕事からスタート。まずはスマートフォンを使って動画編集に着手。「スマホの方が手馴れているし早いので。クオリティというよりは、選手を押し出してわかりやすく面白くしたい」と動画に込められた思いを明かした。もちろん広報隊長としての仕事は動画作成だけではない。

チームの公式オンラインショップには、グッズと一緒に野菜や果物が並んでいる。しかも、“原科さんのスイートコーン”など、個人の名前が付いた商品がずらり。これらは、ホームタウンを中心にした農家の育てた野菜で、地元の農産物や特産物の販売を促進するなど地域密着で展開。そんな農家に泊が収穫の手伝いをすることでPRをしたり、長野県のイメージキャラクターとして活動したり、様々な形でクラブと地域を広報している。さらに、チーム最年長ということもあり、多くの選手が不安を抱えるセカンドキャリアにアプローチする方策も考えているという。

そして夕方、練習のためにグラウンドに向かうと、最初に手にしたのはサッカーボールではなくスマートフォン。選手紹介動画は練習前に撮影するそうで、この日はチーム最年少16歳の川船暁海選手がターゲット。「今、女子高生の中ではやっているアプリは?」などと次々に質問をぶつけていき、「今叫びたいことを叫んでください」という無茶ブリも。川船が恥ずかしがっていると、若手のピンチに池田玲奈選手が立ち上がり、得意(⁉)の一発芸を披露するなど練習前からチームは和やかなムードに。泊は「選手たちに殻を破ってもらいたい」という思いが込められていることを明かした。

この選手紹介動画について、当の選手たちはどう思っているのか聞いてみると「練習前にいろんな人とコミュニケーションをとるきっかけになったので良かった」「会社の人も“見たよ”と言ってくれました。選手の入れ替わりが多かった分、たくさんの方に見てもらえる機会を作ってくれて感謝しています」と評判は上々の様子。

泊がYouTube動画を始めたのは海外移籍がきっかけ。「行くまでは夢見ていたこともあったし、行くことをネガティブに思っている人もいたので、自分の経験を伝えたい。それに、自分で発信しないと向こうの活動は日本まで伝わらないので、こういう選手も頑張っているというのを発信しようと思った」と当時の思いを明かした。この時の動画は、ヨーロッパの暮らしや海外で感じた文化の違いを時に赤裸々に、時に愚痴りながら、等身大の思いを伝える動画となっている。これこそが広報隊長としての原点となった。

海外と日本でどのようなギャップを感じたのか?「仕事とサッカーの両立の仕方が全然違う。日本ではスポンサー企業がサッカーを考慮して働かせてもらっている感じ。向こうでは自分の好きな仕事をしていてサッカー優先ではない。仕事で練習に来られない人もいる。極端な話、サッカーが無くなってもその仕事で生きていけるというバランスを取っている」と話した。

そんな泊が所属する長野も参戦を表明しているWEリーグ。来年10月の開幕に向けて、現在は参加クラブの絞り込みが行われている。目標観客数、選手年俸、チームライセンスなど、様々なポイントに注目が集まっているが、泊は「クラブ選考が10月にあるのでわからないが、行けたら良い」と新リーグに期待。「観客数は2部に落ちて、更にコロナ禍にあっても他のクラブに比べたらすごく多いですが、それでも全盛期に比べたら減っている。1部でやっていた頃のようにお客さんに観に来てもらえるよう、私たちにできることをやっていきたい」と抱負を語っていた。