【フラット35】2020年10月の金利はどうなる? 新たな内閣誕生の影響は?

住宅購入の判断に大いに関係する住宅ローン。不動産や金融についてその業界の人に匹敵する知見をもつ、公認会計士ブロガー千日太郎さんが、連載形式で住宅を買う側・住宅ローンを借りる利用者側の視点で情報発信。2020年10月の住宅ローン金利について世界情勢や国内金融市場にインパクトを与えそうな事柄を踏まえ、解説いただきます。

9月16日に発足した菅新内閣の政策については基本的に安倍政権を継承する方針とのことで、金利に与える影響は無さそうですが、日本の長期金利は0%をわずかに上回る水準で小幅な上昇と下降を繰り返している状態です。

安倍政権の承継を基調とする新内閣の状況下で10月の【フラット35】金利はどうなっていくのか、わかりやすく解説します。

政権交代に対する市場の反応は?

日本の長期金利は市場で取引される10年国債の債券価格によって決まります。投資家は今後のマーケットの先を読んで売買を行いますので、潜在リスクに対してはより過敏に反応し、それが顕在化した時点ではすでに価格(金利)に反映されます。

安倍前首相が辞意を正式表明した8月28日、そして菅新首相が自民党総裁選への立候補を正式に表明した9月2日から直近までの長期金利の動向をグラフにしました。

安倍前首相が辞意を表明は28日の終わり値は0.056%で最高値となっています。その後下がっているのは、国債の割安感に着目した投資家が再び買いに転じ、それによって債券価格が上がり、利回りが下がったためです。安倍前首相からのトップ交代は投資家にとって材料視されていないということですね。

そして後任が菅氏であることについてもまた材料視されていません。安倍政権を支えてきた菅氏が政策を承継するのですから、良い意味でも悪い意味でもあまり大きな期待が無いのだと思います。報道では解散総選挙のタイミングが話題となっていますが、これも9月中の長期金利に影響する可能性は低いでしょう。

今後の長期金利の動向と【フラット35】の10月金利動向の関係

上記の前提から、長期金利は今の水準のまま推移するという前提に立てば、10月の【フラット35】の金利もまた、9月からおおむね横ばいとなるでしょう。

【フラット35】(買取型)の資金調達の仕組み(※文末参照)からすると、住宅金融支援機構が毎月発行する機構債の表面利率が発表される20日ごろのタイミングの長期金利の水準を予想することが大事になります。

過去の長期金利の推移と【フラット35】の金利推移

実際に過去の長期金利と【フラット35】買取型の金利推移を振り返ってみましょう。青い棒グラフ(左の軸)が【フラット35】買取型で、オレンジの折れ線(右の軸)が長期金利です。

毎月20日ごろの時点の長期金利(オレンジの折れ線)の高さと、翌月に発表された【フラット35】買取型の金利(青い棒グラフ)の高さが合致しています。

これは20日ごろに発表される機構債の表面利率が、ちょうど20日ごろの長期金利によって決まっている部分が大きいことを示しています。7月から9月までの3ヶ月はおおむね横ばいに見えますが、微妙な右肩上がりとなっており【フラット35】買取型の金利は0.01ポイントずつ連続で上昇しています。

では、来月も0.01ポイント上昇してしまうのかとも思えますが、「長期金利が高くなる=債券価格が下がる」ということは、その割安感に注目して購入する投資家も増えるはずです。債券の買いが多く入れば債券価格は上昇し、再び長期金利は下がるでしょう。現に前述したように9月7日から11日にかけては国債が買われて長期金利は下がってきています。

このまま長期金利が下がり続けるなら、【フラット35】の金利も下がることになるでしょう。ただし、もともと取引材料に乏しい中での小幅な動きであるため、20日までの状況変化によっては再び上昇する可能性もあります。

まとめ

執筆時点(9月上旬)に入手可能な公開情報を基礎として予想を立てていますので、その後の状況の変化によって金利動向が変化することは十分にあり得ます。

最近は新型コロナウイルスが具体的な材料視とされる場面は少しずつ減ってきているように思います。安倍前首相の辞意表明は寝耳に水でしたが、影響が無いとみられるのは、現時点で投資家によって材料視されていないからです。

大きな変化は、それが市場のルールを変えるようなセンセーショナルなものであればあるほどに、唐突にやってきます。引き続き、日々の金利動向に目を配っておくことをお勧めします。

※本記事は、執筆者の最新情勢を踏まえた知識や経験に基づいた解説を中心に、分かりやすい情報を提供するよう努めておりますが、内容について、弊社が保証するものではございません。

※【フラット35】(買取型)の資金調達の仕組み

住宅ローンの【フラット35】(買取型)は、上図のように住宅金融支援機構が民間金融機関から債権を買い取って証券化し、機関投資家に債券市場を通じて機構債という形で販売するという仕組みになっています。この機構債は毎月20日前後に表面利率を発表し募集します。投資家たちは機構債を安全資産という考えで購入しますので、その表面利率は10年国債の利回り(長期金利)に連動する傾向があるのです。

執筆者:千日 太郎