テレワークの広がりをよく聞きますが、在宅勤務による、ONとOFFの切り替えがうまくできないなど、慣れない環境でメンタル不調を訴えるワーカーが増えているそうです。横浜のクリニックの院長で、産業医としても勤務する木村至信(しのぶ。以下キムシノ)氏が対策を教えてくれました。

  • テレワークが続いて体調不良となっていませんか?

ちょい不調から季節性うつにならないように

テレワークにより、あまり外出しない、人に会わないといった状況に置かれ、気分転換ができずにモヤモヤしている人は多いのではないでしょうか。5月の連休明けぐらいから不調になる「五月病」はよく知られていますが、夏の疲れや日照時間の減少から、秋になってから深刻な「季節性うつ」へ移行するケースが少なくないらしい。

次のような症状はありませんか?

・仕事や人間関係の事で、普段より細かいことが気になりやすい
・つい夜遅くまで考え込んでしまう
・早めに目が覚める、熟睡できる夜が減っている
・なんとなく身体が重だるいと感じる日が増えている気がする

一つでも該当する人は、ここからの記事を心して読んでください。

その不調、軽い自律神経の乱れの症状かも

前述した不調は、疲労の蓄積によって起こる軽い自律神経の乱れの症状。軽いうちは精神力で何とかなってしまうので、見逃されやすい傾向があります。「気が重い……けど頑張らなくちゃ」と、メンタルからのSOSサインを無視して仕事を続けていると、本格的な心身の不調に結びつく恐れがあるそうです。

キムシノ氏 「産業医として私が勤務している会社にも、テレワークや交替制の在宅勤務による抑鬱傾向の方がたくさんいらっしゃいます。業務上の達成感はあっても仲間からの共感が得にくく、気が重くなるのも無理はありません。仕事と家庭生活の線引きが難しいこともストレスになりやすいです」。

――時間感覚が狂う、季節の変化にも気付かないなどの問題もありそうです。

キムシノ氏 「9月はまだ冷房がないと過ごせない季節です。外気温と室内温度の差が大きくなり、5度以上の気温差があると自律神経に負担がかかってきます。急激な温度変化によるダメージを避けるために、カーディガンなどで体温コントロールをしましょう。環境ストレスはメンタルバランスに直結します」。

自律神経コントロールのポイント

「睡眠は大事」と分かっていても、テレワークのせいで寝つきに時間がかかったり、途中で目が覚めたりといった症状の報告も少なくないようです。対策はあるのでしょうか。

キムシノ氏 「できるだけ睡眠時間を確保することが重要です。忙しい日でも極力6時間以上の睡眠を取ってください。自律神経の乱れを直すには、睡眠が必要不可欠です。寝つきが悪く、夜中に目が覚めるといった問題が週に何回も起こる方は、心療内科や精神科などに相談し、睡眠導入剤を処方してもらうのもお勧めです。

睡眠薬に抵抗があると思う方は、依存性のないものを週1~2日服用して深い睡眠を取るだけでも疲れはかなり違ってきます」。

――食事やライフスタイルについて、アドバイスをお願いします。

キムシノ氏 「できるだけ時間をかけてゆっくり食事することが大切です。体を活動モードにする交感神経を緩め、お休みモードにする副交感神経を優位にすることでリラックスできます。家族のいる環境でのテレワークなら、ランチタイムだけでも外出し、1日1食だけでも自分のペースで食事をすると良いです。ずっと一緒にいることだけが愛情表現ではないのです。

外出して太陽の光を浴びれば自律神経の働きが高まり、気分の落ち込みを解消することができると言われています。ウォーキングやジョギングがてらランチをテイクアウトして自宅で食べるのもお勧めです」。

5分でスッキリする「呼吸瞑想」

瞑想やマインドフルネスがいいらしいと知ってはいても、難しそうでためらう人もいるのでは。キムシノ氏が、特別な道具や練習もいらず、5分ですぐできる瞑想法を教えてくれました。

キムシノ氏 「電車などの移動時間に目をつぶって静かな音楽を聴いたり、瞑想したりすることをお勧めしています。軽く目を閉じて、呼吸の流れをじっくり感じる『呼吸瞑想』を数分するだけで、交感神経系の緊張を緩める効果が期待できます。

姿勢は座っている方がやりやすく、地面に足を着け、体の力を抜きます。空気が鼻から入っていき、鼻から出ていく感覚をひたすら感じるだけ。心配事や思考などが浮かんだら、また呼吸の感覚に意識を戻します。その繰り返しです」。

――今はみんなマスクしているから、いつでもこっそり瞑想できますね。

キムシノ氏 「電車の中でも家族と一緒でも、誰にも気付かれません。5分だけで気持ちが楽になりますよ。慣れたら少しずつ長くして15分できれば理想的です。続けるうちに、自分の中で何を一番気にしているかもはっきり分かります。それを理解することで防御方法を考えられるようになるのです。呼吸瞑想を実践している大企業のCEOは多く、欧米では瞑想の時間が社内で決まっていることもあります」。

取材協力:木村至信(きむら・しのぶ)

横浜市の馬車道木村耳鼻咽喉科クリニック院長・産業医・医学博士。テレビやラジオのレギュラー番組を持つタレントでもあり、「木村至信BAND」でメジャーデビューする女医シンガーの一面も。